74 / 112
第二章
目には目を、身分には身分を
しおりを挟む
侯爵家の令嬢として生まれ、聖女と呼ばれる私は基本、大切にされている。
でも子供の頃や、逆に成長してきた頃、新年のパーティーに出た時に会場から連れ出されそうになり――その度に、こうしてラウルさんが盾になり庇ってくれた。
神兵は修道士、つまりは平民だ。しかし神に仕える剣士という立場な上、見た目の迫力でこれまでは彼に逆らう者はいなかった。
……けれど、今回の令息達は違った。怯みこそしたが、負けじと反論してきた。
「平民風情が、余計な口を挟むな!」
「万死に値するだと? 生意気な、貴族に逆らうつもりか!?」
「イザベル嬢は、我々がお守りする! お前は一人で、修道院に戻れっ」
「「…………」」
暴言の数々に、ラウルさんもだが私も絶句した。
学園では身分を笠に着るのは、校則違反だと聞いていた。
けれど目の前の少年達を見ていると、とてもそうとは思えない。いや、それぞれの親に言われて引くに引けないのかもしれないが、それにしても酷すぎる。
(だけど、身分で物を言われるとラウルさんもだけど、私もマズいか)
(カナさん……)
(ああ、ごめんねイザベル。不安になっちゃうよね……でも、そもそも私、講師だから。それこそ立場上は、目の前の彼らより上の筈なんだけど)
そう思うが先程、ナタリーの言葉を無視したところを見ると、彼らの中では教師より生徒の方が立場が上なのかもしれない。
思えば前世でも教師に対してそう決めつけ、クレームを言う子供や親がいた。変なところで前世が反映されているのに内心、ウンザリしていると新たな参戦者が現れた。
「……あなた達こそ、黙りなさい。校内で、騒ぐものではありません」
「てか、ラウルさんは俺でも勝てないんだぞ? 何、勝てない喧嘩売ってんだ?」
「そもそも、身分を笠に着るのは校則違反だ」
「「「あ……」」」
宰相の息子である、ケイン。
騎士団長の息子である、エドガー。
そして、この中の誰よりも身分の高い王太子・ユリウス。
乙女ゲームの攻略対象であり、そもそもが高位貴族である彼らの登場に少年達は絶句した。
その隙を突いて、エマが駆け寄ってくる。私と仲が良いのは知っているので、ラウルさんも彼女を咎めることはない。
「お姉さま、大丈夫ですか?」
「……エマ。ええ、大丈夫。ありがとう」
「いえ。むしろ、遅くなって失礼しました……『イザベル様』に目をつけるのは解りますが、こんな風に迷惑をかけるなんて」
ボソリと呟いたエマの目と声は冷ややかで、けれどだからこそ激しい怒りを感じさせた。同担拒否ではなかった筈だが、彼らの迷惑行為は腹に据えかねたようだ。
すると、殿下達との話が終わったのか、少年達は逃げるようにこの場を後にした――そりゃあ、身分で物を言う彼らが敵う相手ではないだろう。
でも子供の頃や、逆に成長してきた頃、新年のパーティーに出た時に会場から連れ出されそうになり――その度に、こうしてラウルさんが盾になり庇ってくれた。
神兵は修道士、つまりは平民だ。しかし神に仕える剣士という立場な上、見た目の迫力でこれまでは彼に逆らう者はいなかった。
……けれど、今回の令息達は違った。怯みこそしたが、負けじと反論してきた。
「平民風情が、余計な口を挟むな!」
「万死に値するだと? 生意気な、貴族に逆らうつもりか!?」
「イザベル嬢は、我々がお守りする! お前は一人で、修道院に戻れっ」
「「…………」」
暴言の数々に、ラウルさんもだが私も絶句した。
学園では身分を笠に着るのは、校則違反だと聞いていた。
けれど目の前の少年達を見ていると、とてもそうとは思えない。いや、それぞれの親に言われて引くに引けないのかもしれないが、それにしても酷すぎる。
(だけど、身分で物を言われるとラウルさんもだけど、私もマズいか)
(カナさん……)
(ああ、ごめんねイザベル。不安になっちゃうよね……でも、そもそも私、講師だから。それこそ立場上は、目の前の彼らより上の筈なんだけど)
そう思うが先程、ナタリーの言葉を無視したところを見ると、彼らの中では教師より生徒の方が立場が上なのかもしれない。
思えば前世でも教師に対してそう決めつけ、クレームを言う子供や親がいた。変なところで前世が反映されているのに内心、ウンザリしていると新たな参戦者が現れた。
「……あなた達こそ、黙りなさい。校内で、騒ぐものではありません」
「てか、ラウルさんは俺でも勝てないんだぞ? 何、勝てない喧嘩売ってんだ?」
「そもそも、身分を笠に着るのは校則違反だ」
「「「あ……」」」
宰相の息子である、ケイン。
騎士団長の息子である、エドガー。
そして、この中の誰よりも身分の高い王太子・ユリウス。
乙女ゲームの攻略対象であり、そもそもが高位貴族である彼らの登場に少年達は絶句した。
その隙を突いて、エマが駆け寄ってくる。私と仲が良いのは知っているので、ラウルさんも彼女を咎めることはない。
「お姉さま、大丈夫ですか?」
「……エマ。ええ、大丈夫。ありがとう」
「いえ。むしろ、遅くなって失礼しました……『イザベル様』に目をつけるのは解りますが、こんな風に迷惑をかけるなんて」
ボソリと呟いたエマの目と声は冷ややかで、けれどだからこそ激しい怒りを感じさせた。同担拒否ではなかった筈だが、彼らの迷惑行為は腹に据えかねたようだ。
すると、殿下達との話が終わったのか、少年達は逃げるようにこの場を後にした――そりゃあ、身分で物を言う彼らが敵う相手ではないだろう。
13
お気に入りに追加
960
あなたにおすすめの小説

今日も学園食堂はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。
柚ノ木 碧/柚木 彗
恋愛
駄目だこれ。
詰んでる。
そう悟った主人公10歳。
主人公は悟った。実家では無駄な事はしない。搾取父親の元を三男の兄と共に逃れて王都へ行き、乙女ゲームの舞台の学園の厨房に就職!これで予てより念願の世界をこっそりモブ以下らしく観賞しちゃえ!と思って居たのだけど…
何だか知ってる乙女ゲームの内容とは微妙に違う様で。あれ?何だか萎えるんだけど…
なろうにも掲載しております。

【完結】私ですか?ただの令嬢です。
凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!?
バッドエンドだらけの悪役令嬢。
しかし、
「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」
そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。
運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語!
※完結済です。
※作者がシステムに不慣れかつ創作初心者な時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///)
※ご感想・ご指摘につきましては、近況ボードをお読みくださいませ。
《皆様のご愛読に、心からの感謝を申し上げますm(*_ _)m》

すべてを思い出したのが、王太子と結婚した後でした
珠宮さくら
恋愛
ペチュニアが、乙女ゲームの世界に転生したと気づいた時には、すべてが終わっていた。
色々と始まらなさ過ぎて、同じ名前の令嬢が騒ぐのを見聞きして、ようやく思い出した時には王太子と結婚した後。
バグったせいか、ヒロインがヒロインらしくなかったせいか。ゲーム通りに何一ついかなかったが、ペチュニアは前世では出来なかったことをこの世界で満喫することになる。
※全4話。

誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。
木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。
彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。
こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。
だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。
そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。
そんな私に、解放される日がやって来た。
それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。
全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。
私は、自由を得たのである。
その自由を謳歌しながら、私は思っていた。
悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。
伯爵令嬢の秘密の知識
シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のグランディア王国ルナリス伯爵家のミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。

私はモブのはず
シュミー
恋愛
私はよくある乙女ゲーのモブに転生をした。
けど
モブなのに公爵家。そしてチート。さらには家族は美丈夫で、自慢じゃないけど、私もその内に入る。
モブじゃなかったっけ?しかも私のいる公爵家はちょっと特殊ときている。もう一度言おう。
私はモブじゃなかったっけ?
R-15は保険です。
ちょっと逆ハー気味かもしれない?の、かな?見る人によっては変わると思う。
注意:作者も注意しておりますが、誤字脱字が限りなく多い作品となっております。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる