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向かえ!大団円
キュッってしてポイ!
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・キュッってしてポイ【動詞】
主に騎士団内で使われる隠語。
キュッ……首を絞めた時の擬音語
ポイ……放り出す様を表現する擬態語
1.生きた物を縊り殺して放置してきてしまう事。
用例:「破落戸をーした」
2.締め上げて気を失わせ牢屋に放り込む事。
用例:「破落戸をーした」
3.絞首刑の後、死体を処分する事。
用例:「破落戸をーした」
====================
…この場合はどうやら2.の意味だったらしい。
そりゃ泥棒に入って死刑になってちゃ、罪と罰が釣り合わないもんな。
前世のガチ中世とはその辺が違うとこだ。
「シド殿、そのお話ですと、転売に関与している者が牢にいるという事になりますが」
「ああ、もう懲罰服役所へ移したけどな」
「その者たちに会いたいのですが、出来ますかな?」
「構わんが、面会の申請はしてもらうぞ」
ふふん、といった顔でスミスさんに言い放つシドさん…
なぜに?
「…そのように昔の事を今返されるとは思いませんでしたぞ」
「はは、スミス殿には色々迷惑をかけた」
「あれ?お二人、お知り合いなんですか?」
「そう、スミスは元々第3騎士団でな」
「今も第3騎士団ですぞ」
「ああ、あれから戻ったんだ?」
「ええ」
聞けば、スミスさんは王都を守る騎士団の1つである第3騎士団で王都の警護をしていたらしい。
「魔物の大増殖が起きる直前の事なのですがね。
市民に横暴を働く貴族を取り締まる仕事をしておりましたら、ある日急に第9騎士団に配置換えされまして」
「ええっ…」
それはスミスさんに限った事ではなく、当時、市民を守るための第3騎士団はそうして散り散りになり、ほぼ解散状態になったのだそう。
「第9も当時は雑用係などと呼ばれておりまして、面倒な事は何でもやらされる部隊でしてな。
中でも申請書類の代筆がもう…限界でありまして」
それでも、魔物の大増殖が終わるまではどこも忙しいだろうし仕方がないと我慢したのだそうだ。
スミスさんは怒涛の如く語った。
「王都に戻れば書類書いとけ、ってそればっかりですよ。どこそこで飲んだから金くれとか、得体のしれない請求書とか、領収書の無い物品とか、第9は経理課の下請けでは無いと何度言っても覚えない脳足りん共ばかり、16や27ならまだ忙しいし仕方ないなと思いますが、彼らではなく事務方がいるはずの1や2がその態度、というか事務方が率先して偉そうに言いに来やがって『領収書もらってきといてやったから』じゃないんですよ、子どもの遣い以下の仕事で私らより高給を貰いやがって、遠征して露払いして後片付けして疲れ切って帰って来てんのに寝ないで書類づくりさせられて、宮廷の連中も少しは手伝ってくれりゃいいのに騎士団の事は騎士団がするべきとかいって働かずに茶ばっか飲んでるボケ、恫喝すりゃ金が貰えると思ってるお目出度い肉の塊に、俺は魔法が使えるんだぞと言えば人がひれ伏すと思ってるクソデブ共、大増殖を奇跡的に抑え込むのに貢献したとリブリー殿下から褒章を頂いて第9に対する国民からの評価が上がった後でもその態度で、全員吊るされればいいのに高々前線へ放り出して頂く程度の温情刑で許されて、おまけにそれ如きで死ぬとか甘えとりますな!」
「お、おおう…」
どうやら相当ブラックな職場だったらしい。
第9騎士団も大変だったんだな…。
「とまあ、そんな荒んだ現場に、誤字脱字だらけの申請書を持ってきたのがシド殿でしてな」
「で、ここは書類係じゃねえってキレられてさ」
「当たり前でしょう!
『経理にハネられたんだけど何でだと思う?』じゃないんですよ。
第9は経理課じゃないんですぞ!」
「だって、慣れてる人に聞いてみたらどうかってビゼーが言うから」
「人のせいにしない!!」
それでも、スミスさんたちはあの第27騎士団がちゃんと書類仕事をしてくれた事に感動したらしく…。
「我々は第27騎士団の事を見直しました。
第9以外の騎士団の連中は、剣を振り回すしか能がない…と思っていたもので」
「はは…27は貴族出身者も多いから、読み書き計算は出来るのよ」
「そうなんですか?」
「そう、魔法が使えなくてゴミカス扱いになる前は、それなりに教育を受けさせられるからな」
「ならば貴族の子息ばかりの第1・第2も出来て当然では?」
「そりゃそうだ」
多かれ少なかれ、あの「魔物の大増殖」を戦った人たちには大変な経験がある。
あの彼の過去が霞むような経験をしてる人もたくさんいて、だけど明るく今を生きてる。
ヨークさんが言う。
「生まれが、育ちが、って、だからどうなのって話ですよ」
「魔法が使えるから不幸とか、舐め…っシ!」
いきなりシドさんが立ち上がり、駆け出した。
それに続いてスミスさん、ヨークさんが走り出し、ブレックさんは走り出そうとする俺を制した。
「刺客か何かです、あれより近いのをシド殿やスミス殿が見落とすとは思えませんが、慎重に」
というわけで、俺はブレックさんに守られつつ走った。
走っていった先では…
不審者たちが「キュッてしてポイ」されていた。
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