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向かえ!大団円

【閑話】思い立ったが吉日 ~ダリル視点~

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ロンバードと再会後、王宮へ帰ってみると俺の元へ一通の手紙が届いていた。

ロンバードからだ。

少し浮ついた気分で封を開ける…すると、そこには一枚の手紙と2枚の設計図が入っていた。
手紙を読むと、同封された設計図が何なのかが記されていた。

「…人の魔力を吸収して蓄積する装置?」

そういえば、ひとところに罪を犯した魔術師を集めているのもいかがなものか…という話をしていたな。
もう何か考えついたとは…さすがだ。

「つまり、これを付けさせれば、魔術師を南東の農場以外の場所で収監できた上に、多少の利益も上がるということだな」

南東の農場、あそこは特異な場所で、魔力が全く存在せず、魔法が使えない土地だ。
もちろん魔法の道具も一切使えない。
細かい理論は省くが、要は魔術師にとって最悪の土地だということだ。

だから魔法が使える罪人はそこへ収監される事になっている。法で定まっているわけではないが、最適な場所が他になく、慣例になっているのだ。

ちなみに農場とはいうものの、大して収穫は無い。
魔力の無い土地はどう頑張っても不毛の地なのだ。

大して収穫も無いから食料その他生活用品は国から支給してやらねばならんし、にも関わらず出所すれば反省どころか今回の様に反乱をくわだてたりお門違いの復讐をたくらんだり…

公共事業は税金の無駄使いだと吠える馬鹿共に言いたいが、こっちの方がよっぽど無駄使いだ。

「ともかく、奴らを分散させられないか…先に法務と警邏に相談せねばならんな」

モノが出来てから手続きしていたのでは遅い。
出来たらすぐに動けるようにしておかなくては…。

南東の農場で魔法は使えないが、能力は使える。
勿論異能も使える、ということは…
看守や所長を抱き込むことも簡単だということだ。
少しでも同情心が湧けば食われてしまう…

ロンバードが操られなかった事は奇跡のようなものだ。
まさか「優しさ故に同情心を持たない」などという難しい事をやってのけるとは…。

「…子どもに飴を配っていたのも、人を助けてやるのも、同情心からではないと言っていたものな」

ロンバードは言うのだ。
躊躇なく目の前の人を助けられる自分が好きだ、と。
「ひぃろぉ」みたいでカッコイイでしょ、と…
俺には「ひぃろぉ」が何かは分からないが、そのおかげで敵につけ込まれなくて済んだのだから有難い物には間違い無かろう…

多分。

***

法務と警邏に話を通し、その足で魔術塔へ行く。

「おっ兄貴、何しに来たんだ」
「ああ、急ぎ作ってもらいたい物があってな」

現在魔術局では産後休養中のギゼル殿に代わって、グヴェンが局長代理を務めている。
確かにグヴェンは相当の魔術師でもあるし王子でもあるから、代理として申し分ないのだろうが…
我が父ながら人使いが荒い。

まあ、伴侶を呼び寄せられた分、少しはまし…だろうか?

「魔法道具なら3階だな、ちょっと待って」

グヴェンは右手の通信用腕輪に触れ、来客だと呼びかける。すると向こうから反応があり、上がって来てくれと声がする。

「来ても良いってよ。案内するわ」
「ああ、すまんな」

グヴェンに連れられて魔術塔の階段を上る。
俺はグヴェンに最近の様子を訪ねる。

「ところで、久々の王都暮らしはどうだ?」
「まあ、悪くは無い。
 げすとはうすの『かふぇ』とやらで街の人間と話すのも新鮮で楽しいしな」
「ルミール殿はどうしてる?」
「今日もキャンディッシュ邸だ」

グヴェンの伴侶ルミール殿は見た目も中身も穏やかで、いつも笑顔を絶やさない方だ。

「まあ、あそこなら一人でいても安心だからな…。
 あ、そうそう、奴ら魔術師ギルドに自分たちの味方になれと言いに来たらしいぞ」
「やはりか」
「ギゼル殿の『まにゅある』通りに、金次第では従わなくも無い…という様な態度を示しておいたと報告があった。
 今のところ、北端と東端の方面だな」
「…やはり石碑を倒すつもりなのだろうな」

南にもそのうち魔手が伸びるだろう。
南東には罪を犯した魔術師を集めた『農場』がある。正に今、集め過ぎている事を解消しなければならないと考えているその場所が…。
そこを通って南へ向かうか、別働隊が先行するのかは分からないが。

「…西は、どうだ」
「ああ、西のギルドには手出ししていないようだが…ルミールの事を嗅ぎ回っていた連中はいたらしい」

…ルミール殿は、元々文官として港で人や物品の出入りを管理する仕事をしていた方だ。荒事に慣れているとはいえ、表立って戦うような性格でもない。
つまり…。

「…王都に呼び寄せて正解だったという事か」
「ああ、異能でルミールを洗脳されたらたまったもんじゃない…ある程度耐性がついているとはいえ」
「…耐性?」
「ああ、その…多分、だけど」

異能への耐性が付く……だと?

「一体、どうやって…?」
「へっ…」

いや、昔から結婚相手には効きづらくなるとは言われているが、それも必ずというわけでは無さそうだし…
何しろ耐性が付いたかどうかの実験など出来んし、記録も殆ど無いのだ。
それをグヴェンが為したというなら、聞くしかあるまい。

「頼む、グヴェン。
 方法があるなら教えてくれ。
 今後ロンバードを守る為に必要な事だ」

俺は真剣に教えを請うた。
だが、グヴェンはどうにも歯切れが悪い。

「はっ、えっ、えっとぉ…
 どしても?言わなきゃ駄目?」
「…グヴェン、出し惜しみは無しだ。頼む」
「~~分かった、分かった」

俺の熱意が伝わったのだろうか、グヴェンは真っ赤になって言った。

「その…さあ。
 結婚が条件っていうより、毎日何度も、繰り返し異能を掛けたり解いたりしてると、耐性が付くみたいなんだよね?」
「ほう…何故それに気づいたんだ?」
「そっ…それは、だな…。
 年上を満足させられるセックスができるか不安で…その…閨で気分を盛り上げるのにさ、つい…こう、言葉責め的に使っちゃってさ、最近…ルミールに『異能を使わなくても、ちゃんと感じますよ』って…言われて」
「…………あ」

ということは、だ。
つまり、ロンバードにも耐性がついている…

「……なるほど」

やはり寮で毎日致していたのは間違いでは無かったということだな。
これを口実に、これからは堂々と励むとしよう。
まずは帰って来たその日から毎日…

「おい、顔が崩れてんぞムッツリスケベ」
「ムッツリではない」
「じゃあただのスケベ野郎か」
「ふん、ただのスケベで何が悪い」
「うわっ開き直った!?」
「何とでも言え。
 俺は現実でもロンバードを抱き尽くしたい」

再会した街でたっぷり抱いたとはいえ、たった一日では足りない。
劣情を持て余した挙げ句、夢の中で致してしまう事も…

「やっぱりムッツリじゃねーか」
「だからムッツリではない。公言している」
「はぁ!?公言してるだと!?」
「ああ、特に頭の硬いギゼル殿には、ロンバードをどれだけ抱きたいかを克明に詳細に何度も説明差し上げてだな…」
「大魔術師相手に何してんだあんた」


…兄弟二人、そんなくだらない話をしながら歩く。

我が王家の兄弟仲は良好だ。
何処かの国では大変らしいが……な。



================

警邏……お巡りさんの事。
この世界では、治安維持の為に取り締まりをしたり、ご近所トラブルを解決する為に奔走したりもする公的な組織…ということになっております。

「警察」という言葉がファンタジーぽくない気がしてこの言葉を選びました。
凶悪犯を捕まえたり捜査をしたりするのは騎士団のお仕事、という設定もありますが、知り合いに関係者がいるせいか、自分が「警察」という言葉に感じる「現実的かつリアルなもの」というイメージがどうしてもですね…警察関係者の方には申し訳無い。

ところで、夏の日中に外で交通違反の取締りしてるの、そろそろ死人がでそうだから止めたらどうですかね?
もうスポドリで乗り切れる環境じゃなくね?
えーあいで何とかならんのか?

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