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本気のざまぁを見せてやる!
魔術師は結婚を断りたい 13
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電磁石の作り方をブレックさんに伝授したり、ギルさんに今までの作品を説明したり…。
道中も仕事の話をしながら、馬車は進む。
村から村、村から町、町から村…。
グヴェン様も合流して、魔法治療が必要な人たちを治癒しつつ旅は進む。
「魔力欠乏症の人たちにあげたお守りが、ちゃんと機能してれば良いんだけどな…」
「その『オマモリ』なんですが、各国から欲しいという話が来ています」
「えっもう!?」
ブレックさんと一緒にいて分かった事は、この人もすぐに話が大きくなるって事だ。
レドモンド君よりはましだけどね。
「ブレックさんがあの5人から色々託されてるのは知ってますけど、ブレックさんはオーセンの人なんですよね?」
「ええ、オーセンの学園を卒業しまして、その後外交官として色々な国へ勤めました」
「えっ、じゃあ警護は畑違いなんじゃ…」
「そうでもありません、大使を警護するのも外交官の仕事ですから」
ブレックさんによると、外交員になるには筆記試験の他に剣術と体術の試験もあるらしい。
「今は『パン爺』なんて呼ばれているポム卿ですが、それはもう恐ろしいお方でしたよ」
「ええ…想像つかないなぁ」
パン爺の昔って、一体どんなんだったんだろ…。
年齢から考えると、前王様の時からだよな。
「昔と言えば、大増殖ってたった二十年ちょっと前の事なんですよね」
「ええ、その頃は本当に大変でした。
うちの父親は国の直轄地で小さな村を担当していたんですがね、魔物が出たら村人共々地下に逃げる事しか出来なくて…。
入口を守る領軍は消耗するばかりで、いっそ王都へ逃げようと全員で腹をくくったところへ、第27騎士団がやってきて魔物を一掃して下さって…。
後片付けは頼む、って言って、お礼をする間もなく次へ旅立って行かれました」
「やるなぁ親父」
すると、ゼルさんが話に入ってきた。
「そうなんですよ、ギゼル様はとにかく凄くて!
魔物を次々に火や氷や雷の矢で打ち倒して、大けがで戦えなくなった兵士を治して…
もちろん騎士の方々もめちゃくちゃ強くて!
全部魔物に飲み込まれちまうんだって気持ちが一気に明るくなって、俺もギゼル様みたいになりたいって思って…」
「そっか…やっぱ親父はすごいなぁ」
「すごいなんてもんじゃありません、神様です!」
どうやらゼルさんは親父の大ファンらしい。
「俺もギゼル様に会って話してみたいって、それで魔術塔に…」
「あっ、ギルドじゃなくて魔術塔の方だったんですね、俺、知らなくて…すみません」
「あっ…いえ、その、いいんです!俺は開発じゃなくて戦闘のほうだから!」
するとブレックさんがゼルさんに尋ねた。
「ああ、それで『初めまして』だったのか」
「えっ…ええまあ、そういうことです、はは!」
「…ふーん」
うん?
どうしたんだろう、ブレックさん…。
何か、一瞬怖かったような?
***
目的地の町に着いたのは夕方だった。
ダメ元で病院に行ってみると、意外にも歓迎ムード…相当病状の重い人がいるのかもしれない。
「ようこそいらっしゃいました、ロンバード様!」
「いえ、こんな遅くにすいません。
重病の患者さんですか?それとも重症の?」
「病人です、こちらへ」
俺は足ばやに歩く院長先生についていく。
同行してくれた護衛隊長のスミスさんと魔術師のゼルさんは俺の後ろを付いてくる。
いつもゼルさんは到着したらすぐに魔術塔へ報告に行くんけど、王都で用があるからってグヴェン様が代わってくれたんだ。
きっと俺の事気遣ってくれたんだと思う。
グヴェン様とダリル様はよく似ているから、つい思い出して辛くなるの、分かってて…。
「…俺、ダメダメだな」
恋愛と国、どっちが大事かなんて分かってるのに。
両立できないなら、恋愛の方を捨てるべきだって分かってるのに。
どうして今、ダリル様の事思い出すんだろう。
忘れてって言ったからには、忘れなきゃいけないのに。
今は目の前にいる人を救う事に集中しなきゃいけないのも、分かってるのに…
気持ち、切り替えていかなきゃ。
深呼吸…
と、その時、院長の足が止まった。
俺は無意識に俯いていた顔を上げた。
院長が言った。
「こちらの部屋で御座います」
「はい…失礼します」
院長が扉を開ける。
そこには一人のお医者さんと…
「っ!!」
「逃がさんぞ、ゼル!」
「くそっ、どけ!」
「残念でした、『強制睡眠』」
「グヴェン様っ!?」
俺は何が起きたのか分からなかった。
ただバタバタと何かが起きて、ゼルさんが捕まった…という、事しか。
道中も仕事の話をしながら、馬車は進む。
村から村、村から町、町から村…。
グヴェン様も合流して、魔法治療が必要な人たちを治癒しつつ旅は進む。
「魔力欠乏症の人たちにあげたお守りが、ちゃんと機能してれば良いんだけどな…」
「その『オマモリ』なんですが、各国から欲しいという話が来ています」
「えっもう!?」
ブレックさんと一緒にいて分かった事は、この人もすぐに話が大きくなるって事だ。
レドモンド君よりはましだけどね。
「ブレックさんがあの5人から色々託されてるのは知ってますけど、ブレックさんはオーセンの人なんですよね?」
「ええ、オーセンの学園を卒業しまして、その後外交官として色々な国へ勤めました」
「えっ、じゃあ警護は畑違いなんじゃ…」
「そうでもありません、大使を警護するのも外交官の仕事ですから」
ブレックさんによると、外交員になるには筆記試験の他に剣術と体術の試験もあるらしい。
「今は『パン爺』なんて呼ばれているポム卿ですが、それはもう恐ろしいお方でしたよ」
「ええ…想像つかないなぁ」
パン爺の昔って、一体どんなんだったんだろ…。
年齢から考えると、前王様の時からだよな。
「昔と言えば、大増殖ってたった二十年ちょっと前の事なんですよね」
「ええ、その頃は本当に大変でした。
うちの父親は国の直轄地で小さな村を担当していたんですがね、魔物が出たら村人共々地下に逃げる事しか出来なくて…。
入口を守る領軍は消耗するばかりで、いっそ王都へ逃げようと全員で腹をくくったところへ、第27騎士団がやってきて魔物を一掃して下さって…。
後片付けは頼む、って言って、お礼をする間もなく次へ旅立って行かれました」
「やるなぁ親父」
すると、ゼルさんが話に入ってきた。
「そうなんですよ、ギゼル様はとにかく凄くて!
魔物を次々に火や氷や雷の矢で打ち倒して、大けがで戦えなくなった兵士を治して…
もちろん騎士の方々もめちゃくちゃ強くて!
全部魔物に飲み込まれちまうんだって気持ちが一気に明るくなって、俺もギゼル様みたいになりたいって思って…」
「そっか…やっぱ親父はすごいなぁ」
「すごいなんてもんじゃありません、神様です!」
どうやらゼルさんは親父の大ファンらしい。
「俺もギゼル様に会って話してみたいって、それで魔術塔に…」
「あっ、ギルドじゃなくて魔術塔の方だったんですね、俺、知らなくて…すみません」
「あっ…いえ、その、いいんです!俺は開発じゃなくて戦闘のほうだから!」
するとブレックさんがゼルさんに尋ねた。
「ああ、それで『初めまして』だったのか」
「えっ…ええまあ、そういうことです、はは!」
「…ふーん」
うん?
どうしたんだろう、ブレックさん…。
何か、一瞬怖かったような?
***
目的地の町に着いたのは夕方だった。
ダメ元で病院に行ってみると、意外にも歓迎ムード…相当病状の重い人がいるのかもしれない。
「ようこそいらっしゃいました、ロンバード様!」
「いえ、こんな遅くにすいません。
重病の患者さんですか?それとも重症の?」
「病人です、こちらへ」
俺は足ばやに歩く院長先生についていく。
同行してくれた護衛隊長のスミスさんと魔術師のゼルさんは俺の後ろを付いてくる。
いつもゼルさんは到着したらすぐに魔術塔へ報告に行くんけど、王都で用があるからってグヴェン様が代わってくれたんだ。
きっと俺の事気遣ってくれたんだと思う。
グヴェン様とダリル様はよく似ているから、つい思い出して辛くなるの、分かってて…。
「…俺、ダメダメだな」
恋愛と国、どっちが大事かなんて分かってるのに。
両立できないなら、恋愛の方を捨てるべきだって分かってるのに。
どうして今、ダリル様の事思い出すんだろう。
忘れてって言ったからには、忘れなきゃいけないのに。
今は目の前にいる人を救う事に集中しなきゃいけないのも、分かってるのに…
気持ち、切り替えていかなきゃ。
深呼吸…
と、その時、院長の足が止まった。
俺は無意識に俯いていた顔を上げた。
院長が言った。
「こちらの部屋で御座います」
「はい…失礼します」
院長が扉を開ける。
そこには一人のお医者さんと…
「っ!!」
「逃がさんぞ、ゼル!」
「くそっ、どけ!」
「残念でした、『強制睡眠』」
「グヴェン様っ!?」
俺は何が起きたのか分からなかった。
ただバタバタと何かが起きて、ゼルさんが捕まった…という、事しか。
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