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本気のざまぁを見せてやる!
魔術師は結婚を断りたい 12
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東の石碑を蔓でギチギチに固定して村に戻ると、学生さんとグヴェン様がいなくなっていた。
護衛のスミスさん・ブレックさんに聞くと、
「グヴェン様が王都へお連れになりました」
「じゃあ、無事に目が覚めたんですね」
「いや…それが、目が覚めた途端『助けてくれ』と言って暴れまして」
「院長殿に拠りますと『恐怖で幻影が見える様になったのでは』と…、ですので王都の病院へ急ぎ転院させた方が良かろうとの事で」
とのこと。
どうやらトラウマからパニックになったらしい学生さんは、この村には置いておけないとグヴェン様が王都の病院へ連れて行ったらしい。
「そっか…この村で魔物に襲われて、大怪我したんですもんね」
ここにいると思い出しちゃうだろうし、それが良いのかもしれないな。
「じゃあ、明日は病院に挨拶だけ行って…」
「ええ、もう準備は出来ております。
午前中には出発しましょう、グヴェン様と次の村でおち合う予定ですし」
「そうですね」
グヴェン様の箒は速いから、王都からそこまででも一日で行って帰って来られる。
箒の性能も高いし、ご本人の魔力も高いからな。
「…そういえば、ダリル様が魔法を使ってる所って見た事無かったなぁ」
その…えー、ケツの穴の中を綺麗にする魔法は、見た事あるから、使えなくはないと思う。
ただその他の魔法を見た事が無い…
っていうか、この国には「領地に海と港が無い場合、魔法が使える者は領主になってはならない」っていう謎の法律があるから、みんなのお手本になる為に魔法が使えても使わないのかもな。
「セジュールは魔法使えないから、キャンディッシュの領主様になれるんだよな」
2人のいとこのうち、1人は魔法が使えるから領主様は無理。
もう1人は騎士になるんだって騎士学校へ通ってる。
叔父様の伴侶さんが元騎士だから、騎士に憧れる子が出るのも仕方ないんだけどさ。
もう完全に、親戚一同全員「セジュールが次期当主で領主」って前提で生きてたからな…
本当にセジュールには申し訳ない。
「まあ、もう一人産まれるっていうし…そういえば、そろそろ…だっけ」
次の子は親父似かな、メルバ父さん似かな…
どっちにしても、今は連絡を待つしかない。
「さて、そろそろ寝るか」
明日も頑張っていかなきゃだ。
***
朝飯を食って、病院に挨拶行って、出発。
馬車の中にはブレックさんとゼルさん。
「いつも馬車の中で書き物をしてらっしゃいますけど、何を書いておられるのですか?」
「ああ、これは…今まで作りっぱなしのやつの設計図と作り方をまとめたり、義手や義足の構想を練ったり…
あと、山程ある火山灰の利用方法…今回のは鉄が多く含まれてるから使い捨てカイロの原料にも回せそうだなって、今更だけど」
「ツカイステカイロっ!?」
「そう、でも問題はあの砂の中からどうやって鉄…
ん?」
電気は雷の魔法があるし、金属線もある…
「……出来るな」
「出来るんですか!?」
「ですね、結構お手軽に出来ちゃいますね」
この世界、磁石は超貴重品。
俺がおねだりした宝石よりずっとお高い。
だから砂の中から砂鉄を集めるのは大変だし、だからって鉄から砂鉄を作るのはもっと大変。
だけど電磁石なら…お安くできそう。
「それ、今すぐ教えて下さい」
「良いですよ!
まず鉄の棒を用意しまして、そこへ紙をしっかり巻いて…」
俺は電磁石の作り方をブレックさんに説明する。
それをブレックさんは必死で書き取る。
「問題は安定した電気だな…
そこだけちょっと時間貰えますか?」
「分かりました!」
うーん、電池ってどうやって作るんだっけな…
何かあった気がするんだけどな…
まあ、極小の雷魔法をずっと保ち続ける装置でもいけるか…
「うーん…出来れば土地の魔力か宝石の魔力が良いですよね…人が魔力流さなくてもいいやつで…ふーむ」
魔法の道具を考えるとき、まず必要なのが魔力集積回路。
どこから魔力を調達するか、その魔力にどういう性質を持たせるか、どのくらいの出力で出すか、線の長さを変えたり形状を変えたりしながら計算してテストして計算してテストして…。
これを作るのが一番大変。
でも、何か考える事がある方が、気が紛れる。
失恋の痛手を仕事で癒すって人もいるし…
今はそれでいいのかも知れない。
「うーん、砂漠の砂から砂鉄って集められないのかなぁ…」
「えっ、鉄が砂から!?」
「いやいや、もしかしたらですよ?」
ブレックさんが目を輝かせて俺の話に食いついてくる。
俺はちょっとたじたじになりながらも…
雷魔法の雷って直流?交流?と新しい疑問に思考を傾けた。
============
雷は、敢えて言うなら「直流」
正確には「パルス(短時間の振動現象)」だそうです。
ずっと雷を保ち続けるとどうなるんでしょうか?
完全文系の私には何も分かりません。
詳しい方おられましたら、教えてください!(土下座)
護衛のスミスさん・ブレックさんに聞くと、
「グヴェン様が王都へお連れになりました」
「じゃあ、無事に目が覚めたんですね」
「いや…それが、目が覚めた途端『助けてくれ』と言って暴れまして」
「院長殿に拠りますと『恐怖で幻影が見える様になったのでは』と…、ですので王都の病院へ急ぎ転院させた方が良かろうとの事で」
とのこと。
どうやらトラウマからパニックになったらしい学生さんは、この村には置いておけないとグヴェン様が王都の病院へ連れて行ったらしい。
「そっか…この村で魔物に襲われて、大怪我したんですもんね」
ここにいると思い出しちゃうだろうし、それが良いのかもしれないな。
「じゃあ、明日は病院に挨拶だけ行って…」
「ええ、もう準備は出来ております。
午前中には出発しましょう、グヴェン様と次の村でおち合う予定ですし」
「そうですね」
グヴェン様の箒は速いから、王都からそこまででも一日で行って帰って来られる。
箒の性能も高いし、ご本人の魔力も高いからな。
「…そういえば、ダリル様が魔法を使ってる所って見た事無かったなぁ」
その…えー、ケツの穴の中を綺麗にする魔法は、見た事あるから、使えなくはないと思う。
ただその他の魔法を見た事が無い…
っていうか、この国には「領地に海と港が無い場合、魔法が使える者は領主になってはならない」っていう謎の法律があるから、みんなのお手本になる為に魔法が使えても使わないのかもな。
「セジュールは魔法使えないから、キャンディッシュの領主様になれるんだよな」
2人のいとこのうち、1人は魔法が使えるから領主様は無理。
もう1人は騎士になるんだって騎士学校へ通ってる。
叔父様の伴侶さんが元騎士だから、騎士に憧れる子が出るのも仕方ないんだけどさ。
もう完全に、親戚一同全員「セジュールが次期当主で領主」って前提で生きてたからな…
本当にセジュールには申し訳ない。
「まあ、もう一人産まれるっていうし…そういえば、そろそろ…だっけ」
次の子は親父似かな、メルバ父さん似かな…
どっちにしても、今は連絡を待つしかない。
「さて、そろそろ寝るか」
明日も頑張っていかなきゃだ。
***
朝飯を食って、病院に挨拶行って、出発。
馬車の中にはブレックさんとゼルさん。
「いつも馬車の中で書き物をしてらっしゃいますけど、何を書いておられるのですか?」
「ああ、これは…今まで作りっぱなしのやつの設計図と作り方をまとめたり、義手や義足の構想を練ったり…
あと、山程ある火山灰の利用方法…今回のは鉄が多く含まれてるから使い捨てカイロの原料にも回せそうだなって、今更だけど」
「ツカイステカイロっ!?」
「そう、でも問題はあの砂の中からどうやって鉄…
ん?」
電気は雷の魔法があるし、金属線もある…
「……出来るな」
「出来るんですか!?」
「ですね、結構お手軽に出来ちゃいますね」
この世界、磁石は超貴重品。
俺がおねだりした宝石よりずっとお高い。
だから砂の中から砂鉄を集めるのは大変だし、だからって鉄から砂鉄を作るのはもっと大変。
だけど電磁石なら…お安くできそう。
「それ、今すぐ教えて下さい」
「良いですよ!
まず鉄の棒を用意しまして、そこへ紙をしっかり巻いて…」
俺は電磁石の作り方をブレックさんに説明する。
それをブレックさんは必死で書き取る。
「問題は安定した電気だな…
そこだけちょっと時間貰えますか?」
「分かりました!」
うーん、電池ってどうやって作るんだっけな…
何かあった気がするんだけどな…
まあ、極小の雷魔法をずっと保ち続ける装置でもいけるか…
「うーん…出来れば土地の魔力か宝石の魔力が良いですよね…人が魔力流さなくてもいいやつで…ふーむ」
魔法の道具を考えるとき、まず必要なのが魔力集積回路。
どこから魔力を調達するか、その魔力にどういう性質を持たせるか、どのくらいの出力で出すか、線の長さを変えたり形状を変えたりしながら計算してテストして計算してテストして…。
これを作るのが一番大変。
でも、何か考える事がある方が、気が紛れる。
失恋の痛手を仕事で癒すって人もいるし…
今はそれでいいのかも知れない。
「うーん、砂漠の砂から砂鉄って集められないのかなぁ…」
「えっ、鉄が砂から!?」
「いやいや、もしかしたらですよ?」
ブレックさんが目を輝かせて俺の話に食いついてくる。
俺はちょっとたじたじになりながらも…
雷魔法の雷って直流?交流?と新しい疑問に思考を傾けた。
============
雷は、敢えて言うなら「直流」
正確には「パルス(短時間の振動現象)」だそうです。
ずっと雷を保ち続けるとどうなるんでしょうか?
完全文系の私には何も分かりません。
詳しい方おられましたら、教えてください!(土下座)
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