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本気のざまぁを見せてやる!

【バレン過去回想】異能が目覚めた日

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ある日病床のお母様から、大事な話があるの、と言われた。

そうして修道院の診療室で聞いた話は…

お母様は結婚していながら「夫」のにより前の王様と不倫をしていた、という事。

ぼくがお腹の中に宿ったと知らせたひと月後、前の王様は今の王様に捕まって王様を辞めさせられた後、息子である第二王子様と一緒に処刑されてしまった事。

そして、ぼくが生まれた時の事。

「あなたの事を隠したまま、流されるようにここへ辿り着いたの。
 修道院の人たちはね、何も聞かずにただ産む手伝いをしてくれたわ…だから、この話は、あなたとお母さんだけの秘密よ」
「……うん」

細かいことはよく分からなかったけど、ぼくはどうやら前の王様のこどもだ、ということは分かった。

「本来なら、王家に報告すべきなのでしょう…
 でも、前の王様の血をひいたあなたを、今の王様が大事にしてくれる保証はどこにもない」

前の王様は、今の王様に処刑された。
それは魔物の大増殖で国を傾かせた罪だと習った。

修道院の授業で聞かされる話だ。
今の王様が自分の父親と弟を自分の手で処刑した話は有名で、魔物の大増殖を招いた責任を取らせたのだとか母親を殺された恨みを晴らしたのだとか…

良い事のように言う人もいれば、悪い事のように言う人もいる。

責任を取るのなら自分も死んで王家自体を無くすべきだった、という人もいるし、魔法を不当に利用してみんなを苦しめていた人たちをまとめてやっつけた事を立派だ、という人もいる。

お母様は「魔物の大増殖」よりも前の話を教えてくれた。

「…今の王様はね、前の王様や魔法持ち貴族の方々と仲が悪かったの」
「そうなんだ」

今の王様は、王宮のみんなから王様になることを反対されていたらしい。
だから弟の第二王子様を王様にするべきだ、って、皆で沢山準備をしていたんだって。

「お母さんの周りの人はね、それは仕方のない事だって言っていたわ」

お母様のお話では、今の王様は貴族の人たちから随分悪く言われていたらしい。

魔法の発展に使う為のお金を勝手に持ち出して、自分の人気取りのために「役立たずの貧民」たちにばら撒いているとか。

平民たちの同情を買うために、わざと安物の服を着て街に出ているとか。

魔法も使えないくせに領主をしている無能な貴族を贔屓してるとか。

その魔法が使えない貴族筆頭の息子に入れあげて貢いでいるとか…。

「そんな人に国を任せるなんてあり得ないって。
 お母さんの周りの人はみんな、そうやって今の王様を嫌っていたわ。
 だけど…分かるでしょう?
 お母さんの周りの人たちも…良い人とはとても言えない人たちばかりだったの。
 魔物の大増殖の最中にも贅沢な宴をしたり、夜な夜なに興じたり、領地の魔物災害を騎士団に任せきりにして宮廷での権力争いに夢中になったり…」

お母様は言った。

今の王様に会ったことは無い。
本当はまともな人なのかもしれない。
噂も半分以上は嘘だと思う…。

だけど王宮を頼る事なんてとても出来ない。

「王宮はね、恐ろしい所なの。
 他人を蹴落としたくてたまらない人たちが集まって、お互いを見張り合って罠を掛け合っている…そういう所なのよ」

だから、近づくのは辞めなさい。
学園で学ぶとしても、貴族に近づいてはいけないわ。
身も心も踏みつけられてしまうから…

「お母さんは、貴方にまで傷ついて欲しくない。
 あなたにも、あなたのお兄さんにも…」
「おにいさん?」
「そうよ、あなたにはお兄さんがいるの。
 父親は違うけど、私の大切な子…だったのよ」

お母様は言った。

「…だけど、一緒にいると危険な目に合うかもしれないと思って、修道院に連れて来られなかったの。
 お母さんの魔法ではあなたを守るので精一杯だし、何より『子どもには手を出さない』とギゼル様が仰ったって…だから、ギゼル様のいる王都の方があの子にとって安全だと…全部、言い訳なのだけど」
「……あのギゼル様が?」

ぼくは、お母様に聞いた。
お母様は小さく頷いた。
だからぼくは言った!

「ギゼル様がお約束くださったのなら、お母様のした事は正しいよ!
 だって、お母様は大人で、捕まって殺されるかもしれなかったんでしょう?
 だったら子どものお兄様はお母様と離れているほうが、安全に決まってるもの!」

だって大魔術師ギゼルは、英雄の中の英雄!
沢山の魔物を退治しただけじゃなく、大怪我を負った人たち皆を治癒してくれた優しい人。
誰もが素晴らしいって口を揃えて言う人なんだ。
その人を信じてそうしたのなら、お母さんは何も悪くない!

「お母様は『間違ってなんかない』!
 お母様は『正しい』事をしたんだよ!
 だって、お兄様は生きてるんでしょう?」
「ええ、そうよ…だけど」
「お兄様はお母様のおかげで生き延びたんだよ!
 お母様は『正しい』方を選んだんだよ!」

ぼくはお母様を元気づけようと繰り返した。
お母様はぼくの顔を見て、茫然として、それから、涙を溢して、笑い…

「ありがとう、バレン」

と、何度も言った。

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