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本気のざまぁを見せてやる!
王子様は、心置きなく結婚したい 9
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王都に蔓延る転売屋を一掃した3日後。
父からの呼び出しに、俺はセジュールとミリエッタを伴って王の間へ入った。
「来たかダリル」
「お待たせいたしました父上、母上」
今日はメルバの姿が無い。
どうしたのかと尋ねれば、ギゼル殿が今朝早々に産気づいたのだそうで…
「セジュールも今日は早めに帰宅するように」
「分かりました。
本日の午後までに全員に罪を認めさせます」
「…そこは急がずとも良い」
「そうですか、それではじわじわ苦しめます」
「それもどうなんだ」
セジュールはロンバードを追い詰めた連中が許せないらしい…
まあ、俺も同じ気持ちだから何とも言えんが。
「ところで、黒幕の話だが」
「ええ、どっちかの隠し子じゃないか…というのは、聞きましたが」
「それがどうやら、前王の方らしい。
2度殺せないのが口惜しいぐらいだ」
「父上……」
父上の目は座っていた。
どうやらほぼ寝ていないらしい…目の下にはクマがくっきりと表れている。
「下らん愚痴は今度だ、要件だけ言おう。
王家の異能を持った人間が市井にいる。
母親はロフィーシュ元子爵の奥方で、身重の身体で奴隷市に晒され、救出された後に修道院へ入った」
「修道院…という事は」
「夫は違法課税・贈賄・虐待等の罪で、南東の『農場』に送った」
「前王の世を体現したような人間ですね」
前王の時代といえば、腐敗と失政が魔物の大増殖を招き、オーセンという国が無くなりかけた時代だ。
大国間ではオーセンの分割統治が真剣に話し合われていたと聞く。大国からの留学生が学園にいるのは、本来その名残なのだ。
セジュールが言った。
「当時彼女を受け入れる事が出来た修道院…となると、かなり限られますね?」
「そうだ、西の公爵領にある神殿だ」
修道院は神殿の施設で、身寄りのない寡婦が身を寄せ合って生活する場だ。
前王の治世では国内の殆どの神殿が機能しなくなっており、修道院は高級売春宿と化していた。
だが、お母上のご実家である西の公爵領は、中央の腐敗と無縁の安定した地域だった。
公的機関がきちんと機能しており、魔術師と領軍が連携して魔物の増殖を押さえ込んだ。
そこを治めるナヴェント公爵家は、オーセンが次また腐敗する事があれば中央に取って代わると定められた家でもある。
その家の養子に、グヴェンが選ばれたのだ。
次の王は俺に決まっていても、俺がこの国を正しく治められなければグヴェンが取って変わる。
グヴェンは今でも立派な俺の「替わり」なのだ…
と、それはさておき。
父上は言う。
「西の公爵領にある内の最も古い修道院で、一人の男児を産んだ事が記録に残っている。
父親の事は周囲に語らぬまま、亡くなったそうだ」
「…悲しい話ですわね」
「つまり、その男児が一連の事件に関わっているかもしれない、と?」
「そうだ、今では立派な青年だがな」
彼はやはり学園の卒業生だそうだ。
修道院に男子がいられるのは16才まで、それ以降は神官の修行をしにセルナ神聖国へ行くか、独立するか…。
きっと彼も働きながら学んだのだろう。
多くの平民の生徒が、そうしているように。
「彼は今何処に…」
「商業区の問屋街にある服飾の卸で働いていた…
5年前までは」
今はどこでどうしているか、分からないそうだ。
ただ、死亡届が出ていない以上生きていると推測される…との事。
「自分の父親がした事で、多くの者が苦しんだ。
まだ救わねばならぬ者がいる…失政のツケを、まだ私は返しきれていない。
ただ人を罰するだけでは足りぬと分かっているつもりが、このザマだ」
父上は悲し気に笑った。
俺もセジュールも、返す言葉を持たなかったが…ミリエッタは言った。
「陛下の所為では御座いません。
文句を垂れるだけの貴族が働けば良いのです。
魔法持ち貴族として、私もやらねばならぬ事が御座います。
人を人とも思わぬ振る舞いを二度と許さぬ様、私も微力ながら努めて参ります」
ミリエッタは真っ直ぐに父上を見つめていた。
女傑、という言葉が似合う横顔だった。
セジュールもまた彼女の言葉に背筋を伸ばし、言った。
「私は魔法を持ちませんが、ミリエッタ殿と同じ意志を持つものとして、貴族足る事、宮廷貴族の手本となる事、努めて参ります」
二人は真っ直ぐに前を見て、揃って頭を垂れた。
その姿を見て、母上は満足そうに頷き、言った。
「頼んだぞ、ミリエッタ、セジュール。
共に治世を支えてくれ」
「お任せください、カリーナ陛下」
「全力でお応え致します」
「私はミリエッタに、オーセン初の女性高官になってもらいたいのだ。
早いとこそっちの用を片付けて、私の仕事を助け…時には茶飲み友だちになってくれ」
「はい!」
母上とミリエッタは、先日の茶会の後随分と仲が良くなったらしい。
それ以降母上が時々「協会長殿」とミリエッタの事を呼ぶようになり、ミリエッタは母上を「最高顧問」と呼んでいる…
謎だ。
そのやり取りが終わるのを見て、父が言った。
「…彼には異父兄がいる。
その異父兄は奴隷市で売られかけていた所を救出された後、専用保護施設へ送られ、治癒魔術の腕を磨いた後、とある町の病院で働いている」
「兄、ですか…」
「では、彼が兄の存在を知っていれば、接触した可能性がある…?」
「そうだ」
つまり、まずはその兄に会ってみろ…という事か。
「その、とある町…とは」
「王都から5日程東に行った、マイアンという町だ」
東…ということは。
「数日後、ロンバードが訪れる予定の場所…」
「そうだ」
「…父上、お願いがございます」
「分かっている。
行ってこい、ダリル」
「はっ!!」
俺は2人と共に王の間を辞した。
ロンバードを守る、その事と、ロンバードに会える、その事が自分の中に渦巻いて…。
「…ロンバードに相応しいのは、この俺だ」
人知れずそう、呟いていた。
父からの呼び出しに、俺はセジュールとミリエッタを伴って王の間へ入った。
「来たかダリル」
「お待たせいたしました父上、母上」
今日はメルバの姿が無い。
どうしたのかと尋ねれば、ギゼル殿が今朝早々に産気づいたのだそうで…
「セジュールも今日は早めに帰宅するように」
「分かりました。
本日の午後までに全員に罪を認めさせます」
「…そこは急がずとも良い」
「そうですか、それではじわじわ苦しめます」
「それもどうなんだ」
セジュールはロンバードを追い詰めた連中が許せないらしい…
まあ、俺も同じ気持ちだから何とも言えんが。
「ところで、黒幕の話だが」
「ええ、どっちかの隠し子じゃないか…というのは、聞きましたが」
「それがどうやら、前王の方らしい。
2度殺せないのが口惜しいぐらいだ」
「父上……」
父上の目は座っていた。
どうやらほぼ寝ていないらしい…目の下にはクマがくっきりと表れている。
「下らん愚痴は今度だ、要件だけ言おう。
王家の異能を持った人間が市井にいる。
母親はロフィーシュ元子爵の奥方で、身重の身体で奴隷市に晒され、救出された後に修道院へ入った」
「修道院…という事は」
「夫は違法課税・贈賄・虐待等の罪で、南東の『農場』に送った」
「前王の世を体現したような人間ですね」
前王の時代といえば、腐敗と失政が魔物の大増殖を招き、オーセンという国が無くなりかけた時代だ。
大国間ではオーセンの分割統治が真剣に話し合われていたと聞く。大国からの留学生が学園にいるのは、本来その名残なのだ。
セジュールが言った。
「当時彼女を受け入れる事が出来た修道院…となると、かなり限られますね?」
「そうだ、西の公爵領にある神殿だ」
修道院は神殿の施設で、身寄りのない寡婦が身を寄せ合って生活する場だ。
前王の治世では国内の殆どの神殿が機能しなくなっており、修道院は高級売春宿と化していた。
だが、お母上のご実家である西の公爵領は、中央の腐敗と無縁の安定した地域だった。
公的機関がきちんと機能しており、魔術師と領軍が連携して魔物の増殖を押さえ込んだ。
そこを治めるナヴェント公爵家は、オーセンが次また腐敗する事があれば中央に取って代わると定められた家でもある。
その家の養子に、グヴェンが選ばれたのだ。
次の王は俺に決まっていても、俺がこの国を正しく治められなければグヴェンが取って変わる。
グヴェンは今でも立派な俺の「替わり」なのだ…
と、それはさておき。
父上は言う。
「西の公爵領にある内の最も古い修道院で、一人の男児を産んだ事が記録に残っている。
父親の事は周囲に語らぬまま、亡くなったそうだ」
「…悲しい話ですわね」
「つまり、その男児が一連の事件に関わっているかもしれない、と?」
「そうだ、今では立派な青年だがな」
彼はやはり学園の卒業生だそうだ。
修道院に男子がいられるのは16才まで、それ以降は神官の修行をしにセルナ神聖国へ行くか、独立するか…。
きっと彼も働きながら学んだのだろう。
多くの平民の生徒が、そうしているように。
「彼は今何処に…」
「商業区の問屋街にある服飾の卸で働いていた…
5年前までは」
今はどこでどうしているか、分からないそうだ。
ただ、死亡届が出ていない以上生きていると推測される…との事。
「自分の父親がした事で、多くの者が苦しんだ。
まだ救わねばならぬ者がいる…失政のツケを、まだ私は返しきれていない。
ただ人を罰するだけでは足りぬと分かっているつもりが、このザマだ」
父上は悲し気に笑った。
俺もセジュールも、返す言葉を持たなかったが…ミリエッタは言った。
「陛下の所為では御座いません。
文句を垂れるだけの貴族が働けば良いのです。
魔法持ち貴族として、私もやらねばならぬ事が御座います。
人を人とも思わぬ振る舞いを二度と許さぬ様、私も微力ながら努めて参ります」
ミリエッタは真っ直ぐに父上を見つめていた。
女傑、という言葉が似合う横顔だった。
セジュールもまた彼女の言葉に背筋を伸ばし、言った。
「私は魔法を持ちませんが、ミリエッタ殿と同じ意志を持つものとして、貴族足る事、宮廷貴族の手本となる事、努めて参ります」
二人は真っ直ぐに前を見て、揃って頭を垂れた。
その姿を見て、母上は満足そうに頷き、言った。
「頼んだぞ、ミリエッタ、セジュール。
共に治世を支えてくれ」
「お任せください、カリーナ陛下」
「全力でお応え致します」
「私はミリエッタに、オーセン初の女性高官になってもらいたいのだ。
早いとこそっちの用を片付けて、私の仕事を助け…時には茶飲み友だちになってくれ」
「はい!」
母上とミリエッタは、先日の茶会の後随分と仲が良くなったらしい。
それ以降母上が時々「協会長殿」とミリエッタの事を呼ぶようになり、ミリエッタは母上を「最高顧問」と呼んでいる…
謎だ。
そのやり取りが終わるのを見て、父が言った。
「…彼には異父兄がいる。
その異父兄は奴隷市で売られかけていた所を救出された後、専用保護施設へ送られ、治癒魔術の腕を磨いた後、とある町の病院で働いている」
「兄、ですか…」
「では、彼が兄の存在を知っていれば、接触した可能性がある…?」
「そうだ」
つまり、まずはその兄に会ってみろ…という事か。
「その、とある町…とは」
「王都から5日程東に行った、マイアンという町だ」
東…ということは。
「数日後、ロンバードが訪れる予定の場所…」
「そうだ」
「…父上、お願いがございます」
「分かっている。
行ってこい、ダリル」
「はっ!!」
俺は2人と共に王の間を辞した。
ロンバードを守る、その事と、ロンバードに会える、その事が自分の中に渦巻いて…。
「…ロンバードに相応しいのは、この俺だ」
人知れずそう、呟いていた。
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