98 / 218
本気のざまぁを見せてやる!
王子様は、心置きなく結婚したい 3
しおりを挟む
最初の「髪の毛紐」が売れてから、10日。
「…王都を出て、近隣の街を回遊…か」
「お兄様からの報告書ですか?」
「いや、護衛からの報告だ。
ロンバードは俺に便りは出さない、と言った。
忘れてしまうのならそれでいい…と」
自分は王妃に相応しい人間じゃないから、と…。
確かにお母様を見ていると、外交、社交、王宮の管理や使用人の選定、物品等購入先の選定、福祉関連、宗教関連、茶会・夜会の主催…。
だがそれは、お母様に「魔法の道具で人々の生活を豊かにする」仕事が無いからだ。
ロンバードには魔法の道具開発を続けてもらわねばならん。
彼のお陰で、オーセンは一躍魔法先進国になったのだから……。
「別に、王妃は役職名ではない。
王の伴侶が王妃であって、仕事はまた別の話…
だと思わんか?セジュール」
「はい、確かにそうです」
周りに随分と吹き込まれているのは知っていた。
だから何度も、奴らの言う事は聞かなくて良いと言ってきたつもりだった。だが…。
「無視しろ、ではなく、奴らに二度とそういう事を言わせないようにするのが、俺のすべき事だったのに…逆に追い詰めてしまった」
そうだ、俺は確かに王妃教育の話をした。
外交は避けて通れない道だ。
だから学んで欲しい、と…
こればかりは、地位が物を言う事だから。
「王妃の仕事は分担して誰かにやらせれば良い。
お前とミリエッタで何か1つの部署にして…いい名前が無いか検討しておいてくれ」
「かしこまりました」
俺は報告書を読み続ける。
ロンバードは次々に功績を残している。
・王都のあらゆる医療施設を訪問し尽くし、多くの病人を治癒した事。
・家に病気の者がいるのだと聞けば、そこへも出かけて治癒を施している事。
・現場では医者に病気の事を学び、宿ではミリエッタにやった首飾りと同じ物を作り続けている事。
・魔力欠乏症の子どもに、大地から魔力を取り込める「オマモリ」を作ってやった事。
「随分活躍しているな…」
「あの、大地から魔力…って、もしかしたらとんでもないものでは無いでしょうか」
「……多分な」
魔力欠乏症は先天性の病気で、患者は子どもばかりだ。
大人になれずに死んでいく病として有名で…
病院から出られないまま死んでいく子どももいる。
本人の苦しみも、親の苦しみもいかばかりか。
そんな悲劇の病がその「オマモリ」で良くなるとすれば画期的だ。
まだ試験段階とはいえ、病院からの報告では「一定の効果がみとめられる」となっていたし、一時帰宅出来るようになった子もいると言っていた。
流石ロンバード、としか言いようがあるまい。
だが、報告は不穏な物も多数ある。
何度か不審者がやってきて、ロンバードを連れ去ろうとした事。
「…刺客は全員、捕縛し衛兵に引き渡した…か」
「その場で処分出来ないんですか?」
「死んだら情報が引き出せんだろう」
「ああそうでした、ついうっかり」
ロンバードに直接飴をくれと交渉しに来る者が相当数あるが、怪我や病気なら自分が治しに行くから待っていてくれと突っぱねていること…
「お兄様、断れるようになったんですね」
「そのようだ…無理をしていなければ良いが」
それから、ギゼルと何度か会っている事。
「…どうやって居場所を探しているんだ?」
「空から探してるんじゃないですか?」
「そうだった、ギゼル殿も空を飛ぶんだった」
さて、報告はざっとこんなもので、見過ごせない部分については目の前の男と協議せねばなるまい。
「まずはギゼルお父様がお兄様と密会している件について」
「ふむ…直接ギゼル殿に聞いてみるしかないな」
魔法の種の事かもしれんし、
首飾りの件かもしれんし、
ブレスレットの件かもしれんし、
転移魔法の件かもしれん。
「だが、少なくとも魔法に関係する事だろう」
「本当にそうでしょうか…」
「どういう事だ?」
するとセジュールは俺の目をしっかりと見てから言った。
「やましくないのであれば、ギゼルお父様と会っている事をどうして僕への手紙に書かないんでしょう」
「……」
どうやら表情を見るに、手紙が届くことを俺に自慢したかっただけらしい。
…むかつく。
「…お前には手紙が届くのか?」
「ええ、離れていても家族なので」
「……その手紙を見せろと言ったら?」
「全力で拒否します」
「いいから黙って見せろ」
「いやですー」
畜生…このクソガキ…!
羨 ま し す ぎ る!!
「…王都を出て、近隣の街を回遊…か」
「お兄様からの報告書ですか?」
「いや、護衛からの報告だ。
ロンバードは俺に便りは出さない、と言った。
忘れてしまうのならそれでいい…と」
自分は王妃に相応しい人間じゃないから、と…。
確かにお母様を見ていると、外交、社交、王宮の管理や使用人の選定、物品等購入先の選定、福祉関連、宗教関連、茶会・夜会の主催…。
だがそれは、お母様に「魔法の道具で人々の生活を豊かにする」仕事が無いからだ。
ロンバードには魔法の道具開発を続けてもらわねばならん。
彼のお陰で、オーセンは一躍魔法先進国になったのだから……。
「別に、王妃は役職名ではない。
王の伴侶が王妃であって、仕事はまた別の話…
だと思わんか?セジュール」
「はい、確かにそうです」
周りに随分と吹き込まれているのは知っていた。
だから何度も、奴らの言う事は聞かなくて良いと言ってきたつもりだった。だが…。
「無視しろ、ではなく、奴らに二度とそういう事を言わせないようにするのが、俺のすべき事だったのに…逆に追い詰めてしまった」
そうだ、俺は確かに王妃教育の話をした。
外交は避けて通れない道だ。
だから学んで欲しい、と…
こればかりは、地位が物を言う事だから。
「王妃の仕事は分担して誰かにやらせれば良い。
お前とミリエッタで何か1つの部署にして…いい名前が無いか検討しておいてくれ」
「かしこまりました」
俺は報告書を読み続ける。
ロンバードは次々に功績を残している。
・王都のあらゆる医療施設を訪問し尽くし、多くの病人を治癒した事。
・家に病気の者がいるのだと聞けば、そこへも出かけて治癒を施している事。
・現場では医者に病気の事を学び、宿ではミリエッタにやった首飾りと同じ物を作り続けている事。
・魔力欠乏症の子どもに、大地から魔力を取り込める「オマモリ」を作ってやった事。
「随分活躍しているな…」
「あの、大地から魔力…って、もしかしたらとんでもないものでは無いでしょうか」
「……多分な」
魔力欠乏症は先天性の病気で、患者は子どもばかりだ。
大人になれずに死んでいく病として有名で…
病院から出られないまま死んでいく子どももいる。
本人の苦しみも、親の苦しみもいかばかりか。
そんな悲劇の病がその「オマモリ」で良くなるとすれば画期的だ。
まだ試験段階とはいえ、病院からの報告では「一定の効果がみとめられる」となっていたし、一時帰宅出来るようになった子もいると言っていた。
流石ロンバード、としか言いようがあるまい。
だが、報告は不穏な物も多数ある。
何度か不審者がやってきて、ロンバードを連れ去ろうとした事。
「…刺客は全員、捕縛し衛兵に引き渡した…か」
「その場で処分出来ないんですか?」
「死んだら情報が引き出せんだろう」
「ああそうでした、ついうっかり」
ロンバードに直接飴をくれと交渉しに来る者が相当数あるが、怪我や病気なら自分が治しに行くから待っていてくれと突っぱねていること…
「お兄様、断れるようになったんですね」
「そのようだ…無理をしていなければ良いが」
それから、ギゼルと何度か会っている事。
「…どうやって居場所を探しているんだ?」
「空から探してるんじゃないですか?」
「そうだった、ギゼル殿も空を飛ぶんだった」
さて、報告はざっとこんなもので、見過ごせない部分については目の前の男と協議せねばなるまい。
「まずはギゼルお父様がお兄様と密会している件について」
「ふむ…直接ギゼル殿に聞いてみるしかないな」
魔法の種の事かもしれんし、
首飾りの件かもしれんし、
ブレスレットの件かもしれんし、
転移魔法の件かもしれん。
「だが、少なくとも魔法に関係する事だろう」
「本当にそうでしょうか…」
「どういう事だ?」
するとセジュールは俺の目をしっかりと見てから言った。
「やましくないのであれば、ギゼルお父様と会っている事をどうして僕への手紙に書かないんでしょう」
「……」
どうやら表情を見るに、手紙が届くことを俺に自慢したかっただけらしい。
…むかつく。
「…お前には手紙が届くのか?」
「ええ、離れていても家族なので」
「……その手紙を見せろと言ったら?」
「全力で拒否します」
「いいから黙って見せろ」
「いやですー」
畜生…このクソガキ…!
羨 ま し す ぎ る!!
94
お気に入りに追加
412
あなたにおすすめの小説
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
完結·助けた犬は騎士団長でした
禅
BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。
ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。
しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。
強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ……
※完結まで毎日投稿します
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
【第1章完結】悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼第2章2025年1月18日より投稿予定
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
【完結】もふもふ獣人転生
*
BL
白い耳としっぽのもふもふ獣人に生まれ、強制労働で死にそうなところを助けてくれたのは、最愛の推しでした。
ちっちゃなもふもふ獣人と、攻略対象の凛々しい少年の、両片思い? な、いちゃらぶもふもふなお話です。
本編完結しました!
おまけをちょこちょこ更新しています。
第12回BL大賞、奨励賞をいただきました、読んでくださった方、応援してくださった方、投票してくださった方のおかげです、ほんとうにありがとうございました!
婚約破棄される悪役令嬢ですが実はワタクシ…男なんだわ
秋空花林
BL
「ヴィラトリア嬢、僕はこの場で君との婚約破棄を宣言する!」
ワタクシ、フラれてしまいました。
でも、これで良かったのです。
どのみち、結婚は無理でしたもの。
だってー。
実はワタクシ…男なんだわ。
だからオレは逃げ出した。
貴族令嬢の名を捨てて、1人の平民の男として生きると決めた。
なのにー。
「ずっと、君の事が好きだったんだ」
数年後。何故かオレは元婚約者に執着され、溺愛されていた…!?
この物語は、乙女ゲームの不憫な悪役令嬢(男)が元婚約者(もちろん男)に一途に追いかけられ、最後に幸せになる物語です。
幼少期からスタートするので、R 18まで長めです。
【書籍化確定、完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる