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本気のざまぁを見せてやる!

王子様は、心置きなく結婚したい 2

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間者に仕立てた者共を放って、一週間。

「ダリル殿下、お義姉様から連絡が届きました。
 『髪の毛紐』の一本が、競売に掛けられたと…
 購入されたのは元第27騎士団のビゼー様で、かつてギゼル殿不在の遠征の折に「髪の毛紐」を持っていった話を、懐かしげになさっていたとのことですわ」
「……それで?」
売った男クソ転売屋ハエがたかっていた、と」
「作戦成功、だな」


間者共の言葉だけで奴らを動かすことは難しい。

だから、国民からの信頼があり、「髪の毛紐」を使った経験のある者に一芝居頼んだ。

「これで少しは動きが出そうだな」
「結構な額をお出しになったそうですから、後が恐ろしいですけれどね」

新しい商材は、競売で出た金額が基準になる。
いくらで買ったかは後で領収書が届くだろう。
精算するのが楽しみだ。

「構わん、罪のない魔術師は魔術塔か魔術師ギルドに所属している。
 ギゼルがすでに『まにゅある』を作って対応しているから問題は無い…襲って来るなら返り討ちだ」
「さすが大魔術師様、対応が早いですわ!」

そう、本来魔術師というのは恐ろしい戦闘力を持っている。だから多くの者が増長したのだ。

大きな力には強い自制と善き心が必要…
だから学園があり、魔術塔があり、魔術師ギルドがある。

「それからメルバを通じて、市井に『喉を焼かれた』連中に金が無くなってきたようだ、という噂を流している」

つまり、奴らが犯罪に走るという注意喚起だ。
衛兵だけでなく、奴らの近所に住んでいる人間にそれとなく注意を促す…

「奴らを孤立させ、優しく話しかけて来るであろう転売屋への依存度を高めさせ、離れられなくする」
「えげつないですわね」

だからロンバードには教えられない。
側に居れば必ずどこかで、助け舟を出そうとする…
だが俺は、人の優しさにつけ込んで舌を出すような連中を、絶対に許さない。

「奴らが生きている事すら許し難い民も大勢いる。
 奴らも生き地獄を味わえば良い」

ロンバードは何も言わない。
だが、俺は全部知っている。

復讐のために毒を飲まされた事。
空を飛ぶ箒に細工をされ、墜落しかけた事。
剣術の授業中事故と見せかけて、刺された事。
屑共に、暴行、されかけた事。

その度に、華麗に自分の魔法で切り抜けてきた。
自分が黙っていれば分からない、とばかりに奴らを放置して、何食わぬ顔をしていた。

何で分かるか、知っているか?

何も無かったように振舞うのが、下手だからだ。
その姿を見る度に、俺は…

だから俺は、奴らを全員吊るしてやると決めた。

「腐敗の末に国が魔物に飲まれかけたのは、たった20数年前の事ですもの。
 嘗ての栄光が忘れられない者も多いのでしょう」
「何が栄光だ、虚飾に塗れた獣どもめ…」

だが、全員追い詰めて罪を償わせる。
それが妥当というものだ。

「金の亡者とはよく言ったものですわね」
「ああ…
 ところで、セジュールはどうした」
「寮の部屋に不法侵入者がいたとかで…」
「またか」
「ええ、その侵入者が帝国の法によって裁かれようとしているのを止めに行かれました」
「…ニール殿も荒れているな」

寮にいた留学生は、大半が本国へ帰った。
国際会議の報告と、新しい種を持って。

そして寮に残った数名は…。

「先日は砂漠の法で裁かれていなかったか」
「ええ、雪原の法で裁かれたのもいましたわ」

砂漠の法も雪原の法も、裸で原野にまる一日放置して生きていれば無罪という原初的な裁き方だ。
砂漠や雪原だと大体死ぬので死刑と変わらないが、オーセンではただ晒し物になるだけだ。
それほど問題ではなかろうと放置したが…

「それで、帝国の法とは何だ」
「決闘ですわ」
「それは…止めに行くべきだな」

残った数名は、大国からの留学生だ。
そして、長い期間をこの学園で過ごしている…
ロンバードから、知恵を得る為に。
祖国を、付いて来る小国を救う為に、ロンバードの優しさにある意味漬け込んできた者たち…

だからこそ、罪滅ぼしをしたいと思っているのだろう。為政者としてはまだしも、人としては最低の行為だと気がついているから。

「…やはり彼らは侮れんな」

全員がやり手の政治家だ。
非情になる事も度々あるだろうが、それでも人の心を失わずにそこにいる。

今彼らは、ロンバードの心配をしながらもロンバードを利用しようとしている。

この転売屋問題は、国境を越えて広がっている。
我が国で一網打尽に出来れば…

解決する問題は、大きい。
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