97 / 212
本気のざまぁを見せてやる!
王子様は、心置きなく結婚したい 2
しおりを挟む
間者に仕立てた者共を放って、一週間。
「ダリル殿下、お義姉様から連絡が届きました。
『髪の毛紐』の一本が、競売に掛けられたと…
購入されたのは元第27騎士団のビゼー様で、かつてギゼル殿不在の遠征の折に「髪の毛紐」を持っていった話を、懐かしげになさっていたとのことですわ」
「……それで?」
「売った男に転売屋がたかっていた、と」
「作戦成功、だな」
間者共の言葉だけで奴らを動かすことは難しい。
だから、国民からの信頼があり、「髪の毛紐」を使った経験のある者に一芝居頼んだ。
「これで少しは動きが出そうだな」
「結構な額をお出しになったそうですから、後が恐ろしいですけれどね」
新しい商材は、競売で出た金額が基準になる。
いくらで買ったかは後で領収書が届くだろう。
精算するのが楽しみだ。
「構わん、罪のない魔術師は魔術塔か魔術師ギルドに所属している。
ギゼルがすでに『まにゅある』を作って対応しているから問題は無い…襲って来るなら返り討ちだ」
「さすが大魔術師様、対応が早いですわ!」
そう、本来魔術師というのは恐ろしい戦闘力を持っている。だから多くの者が増長したのだ。
大きな力には強い自制と善き心が必要…
だから学園があり、魔術塔があり、魔術師ギルドがある。
「それからメルバを通じて、市井に『喉を焼かれた』連中に金が無くなってきたようだ、という噂を流している」
つまり、奴らが犯罪に走るかもしれないという注意喚起だ。
衛兵だけでなく、奴らの近所に住んでいる人間にそれとなく注意を促す…
「奴らを孤立させ、優しく話しかけて来るであろう転売屋への依存度を高めさせ、離れられなくする」
「えげつないですわね」
だからロンバードには教えられない。
側に居れば必ずどこかで、助け舟を出そうとする…
だが俺は、人の優しさにつけ込んで舌を出すような連中を、絶対に許さない。
「奴らが生きている事すら許し難い民も大勢いる。
奴らも生き地獄を味わえば良い」
ロンバードは何も言わない。
だが、俺は全部知っている。
復讐のために毒を飲まされた事。
空を飛ぶ箒に細工をされ、墜落しかけた事。
剣術の授業中事故と見せかけて、刺された事。
屑共に、暴行、されかけた事。
その度に、華麗に自分の魔法で切り抜けてきた。
自分が黙っていれば分からない、とばかりに奴らを放置して、何食わぬ顔をしていた。
何で分かるか、知っているか?
何も無かったように振舞うのが、下手だからだ。
その姿を見る度に、俺は…
だから俺は、奴らを全員吊るしてやると決めた。
「腐敗の末に国が魔物に飲まれかけたのは、たった20数年前の事ですもの。
嘗ての栄光が忘れられない者も多いのでしょう」
「何が栄光だ、虚飾に塗れた獣どもめ…」
だが、全員追い詰めて罪を償わせる。
それが妥当というものだ。
「金の亡者とはよく言ったものですわね」
「ああ…
ところで、セジュールはどうした」
「寮の部屋に不法侵入者がいたとかで…」
「またか」
「ええ、その侵入者が帝国の法によって裁かれようとしているのを止めに行かれました」
「…ニール殿も荒れているな」
寮にいた留学生は、大半が本国へ帰った。
国際会議の報告と、新しい種を持って。
そして寮に残った数名は…。
「先日は砂漠の法で裁かれていなかったか」
「ええ、雪原の法で裁かれたのもいましたわ」
砂漠の法も雪原の法も、裸で原野にまる一日放置して生きていれば無罪という原初的な裁き方だ。
砂漠や雪原だと大体死ぬので死刑と変わらないが、オーセンではただ晒し物になるだけだ。
それほど問題ではなかろうと放置したが…
「それで、帝国の法とは何だ」
「決闘ですわ」
「それは…止めに行くべきだな」
残った数名は、大国からの留学生だ。
そして、長い期間をこの学園で過ごしている…
ロンバードから、知恵を得る為に。
祖国を、付いて来る小国を救う為に、ロンバードの優しさにある意味漬け込んできた者たち…
だからこそ、罪滅ぼしをしたいと思っているのだろう。為政者としてはまだしも、人としては最低の行為だと気がついているから。
「…やはり彼らは侮れんな」
全員がやり手の政治家だ。
非情になる事も度々あるだろうが、それでも人の心を失わずにそこにいる。
今彼らは、ロンバードの心配をしながらもロンバードを利用しようとしている。
この転売屋問題は、国境を越えて広がっている。
我が国で一網打尽に出来れば…
解決する問題は、大きい。
「ダリル殿下、お義姉様から連絡が届きました。
『髪の毛紐』の一本が、競売に掛けられたと…
購入されたのは元第27騎士団のビゼー様で、かつてギゼル殿不在の遠征の折に「髪の毛紐」を持っていった話を、懐かしげになさっていたとのことですわ」
「……それで?」
「売った男に転売屋がたかっていた、と」
「作戦成功、だな」
間者共の言葉だけで奴らを動かすことは難しい。
だから、国民からの信頼があり、「髪の毛紐」を使った経験のある者に一芝居頼んだ。
「これで少しは動きが出そうだな」
「結構な額をお出しになったそうですから、後が恐ろしいですけれどね」
新しい商材は、競売で出た金額が基準になる。
いくらで買ったかは後で領収書が届くだろう。
精算するのが楽しみだ。
「構わん、罪のない魔術師は魔術塔か魔術師ギルドに所属している。
ギゼルがすでに『まにゅある』を作って対応しているから問題は無い…襲って来るなら返り討ちだ」
「さすが大魔術師様、対応が早いですわ!」
そう、本来魔術師というのは恐ろしい戦闘力を持っている。だから多くの者が増長したのだ。
大きな力には強い自制と善き心が必要…
だから学園があり、魔術塔があり、魔術師ギルドがある。
「それからメルバを通じて、市井に『喉を焼かれた』連中に金が無くなってきたようだ、という噂を流している」
つまり、奴らが犯罪に走るかもしれないという注意喚起だ。
衛兵だけでなく、奴らの近所に住んでいる人間にそれとなく注意を促す…
「奴らを孤立させ、優しく話しかけて来るであろう転売屋への依存度を高めさせ、離れられなくする」
「えげつないですわね」
だからロンバードには教えられない。
側に居れば必ずどこかで、助け舟を出そうとする…
だが俺は、人の優しさにつけ込んで舌を出すような連中を、絶対に許さない。
「奴らが生きている事すら許し難い民も大勢いる。
奴らも生き地獄を味わえば良い」
ロンバードは何も言わない。
だが、俺は全部知っている。
復讐のために毒を飲まされた事。
空を飛ぶ箒に細工をされ、墜落しかけた事。
剣術の授業中事故と見せかけて、刺された事。
屑共に、暴行、されかけた事。
その度に、華麗に自分の魔法で切り抜けてきた。
自分が黙っていれば分からない、とばかりに奴らを放置して、何食わぬ顔をしていた。
何で分かるか、知っているか?
何も無かったように振舞うのが、下手だからだ。
その姿を見る度に、俺は…
だから俺は、奴らを全員吊るしてやると決めた。
「腐敗の末に国が魔物に飲まれかけたのは、たった20数年前の事ですもの。
嘗ての栄光が忘れられない者も多いのでしょう」
「何が栄光だ、虚飾に塗れた獣どもめ…」
だが、全員追い詰めて罪を償わせる。
それが妥当というものだ。
「金の亡者とはよく言ったものですわね」
「ああ…
ところで、セジュールはどうした」
「寮の部屋に不法侵入者がいたとかで…」
「またか」
「ええ、その侵入者が帝国の法によって裁かれようとしているのを止めに行かれました」
「…ニール殿も荒れているな」
寮にいた留学生は、大半が本国へ帰った。
国際会議の報告と、新しい種を持って。
そして寮に残った数名は…。
「先日は砂漠の法で裁かれていなかったか」
「ええ、雪原の法で裁かれたのもいましたわ」
砂漠の法も雪原の法も、裸で原野にまる一日放置して生きていれば無罪という原初的な裁き方だ。
砂漠や雪原だと大体死ぬので死刑と変わらないが、オーセンではただ晒し物になるだけだ。
それほど問題ではなかろうと放置したが…
「それで、帝国の法とは何だ」
「決闘ですわ」
「それは…止めに行くべきだな」
残った数名は、大国からの留学生だ。
そして、長い期間をこの学園で過ごしている…
ロンバードから、知恵を得る為に。
祖国を、付いて来る小国を救う為に、ロンバードの優しさにある意味漬け込んできた者たち…
だからこそ、罪滅ぼしをしたいと思っているのだろう。為政者としてはまだしも、人としては最低の行為だと気がついているから。
「…やはり彼らは侮れんな」
全員がやり手の政治家だ。
非情になる事も度々あるだろうが、それでも人の心を失わずにそこにいる。
今彼らは、ロンバードの心配をしながらもロンバードを利用しようとしている。
この転売屋問題は、国境を越えて広がっている。
我が国で一網打尽に出来れば…
解決する問題は、大きい。
105
お気に入りに追加
398
あなたにおすすめの小説
【本編完結】断罪される度に強くなる男は、いい加減転生を仕舞いたい
雷尾
BL
目の前には金髪碧眼の美形王太子と、隣には桃色の髪に水色の目を持つ美少年が生まれたてのバンビのように震えている。
延々と繰り返される婚約破棄。主人公は何回ループさせられたら気が済むのだろうか。一応完結ですが気が向いたら番外編追加予定です。
身代わりになって推しの思い出の中で永遠になりたいんです!
冨士原のもち
BL
桜舞う王立学院の入学式、ヤマトはカイユー王子を見てここが前世でやったゲームの世界だと気付く。ヤマトが一番好きなキャラであるカイユー王子は、ゲーム内では非業の死を遂げる。
「そうだ!カイユーを助けて死んだら、忘れられない恩人として永遠になれるんじゃないか?」
前世の死に際のせいで人間不信と恋愛不信を拗らせていたヤマトは、推しの心の中で永遠になるために身代わりになろうと決意した。しかし、カイユー王子はゲームの時の印象と違っていて……
演技チャラ男攻め×美人人間不信受け
※最終的にはハッピーエンドです
※何かしら地雷のある方にはお勧めしません
※ムーンライトノベルズにも投稿しています
雫
ゆい
BL
涙が落ちる。
涙は彼に届くことはない。
彼を想うことは、これでやめよう。
何をどうしても、彼の気持ちは僕に向くことはない。
僕は、その場から音を立てずに立ち去った。
僕はアシェル=オルスト。
侯爵家の嫡男として生まれ、10歳の時にエドガー=ハルミトンと婚約した。
彼には、他に愛する人がいた。
世界観は、【夜空と暁と】と同じです。
アルサス達がでます。
【夜空と暁と】を知らなくても、これだけで読めます。
随時更新です。
嫌われ者の僕はひっそりと暮らしたい
りまり
BL
僕のいる世界は男性でも妊娠することのできる世界で、僕の婚約者は公爵家の嫡男です。
この世界は魔法の使えるファンタジーのようなところでもちろん魔物もいれば妖精や精霊もいるんだ。
僕の婚約者はそれはそれは見目麗しい青年、それだけじゃなくすごく頭も良いし剣術に魔法になんでもそつなくこなせる凄い人でだからと言って平民を見下すことなくわからないところは教えてあげられる優しさを持っている。
本当に僕にはもったいない人なんだ。
どんなに努力しても成果が伴わない僕に呆れてしまったのか、最近は平民の中でも特に優秀な人と一緒にいる所を見るようになって、周りからもお似合いの夫婦だと言われるようになっていった。その一方で僕の評価はかなり厳しく彼が可哀そうだと言う声が聞こえてくるようにもなった。
彼から言われたわけでもないが、あの二人を見ていれば恋愛関係にあるのぐらいわかる。彼に迷惑をかけたくないので、卒業したら結婚する予定だったけど両親に今の状況を話て婚約を白紙にしてもらえるように頼んだ。
答えは聞かなくてもわかる婚約が解消され、僕は学校を卒業したら辺境伯にいる叔父の元に旅立つことになっている。
後少しだけあなたを……あなたの姿を目に焼き付けて辺境伯領に行きたい。
悪役令息物語~呪われた悪役令息は、追放先でスパダリたちに愛欲を注がれる~
トモモト ヨシユキ
BL
魔法を使い魔力が少なくなると発情しちゃう呪いをかけられた僕は、聖者を誘惑した罪で婚約破棄されたうえ辺境へ追放される。
しかし、もと婚約者である王女の企みによって山賊に襲われる。
貞操の危機を救ってくれたのは、若き辺境伯だった。
虚弱体質の呪われた深窓の令息をめぐり対立する聖者と辺境伯。
そこに呪いをかけた邪神も加わり恋の鞘当てが繰り広げられる?
エブリスタにも掲載しています。
婚約破棄署名したらどうでも良くなった僕の話
黄金
BL
婚約破棄を言い渡され、署名をしたら前世を思い出した。
恋も恋愛もどうでもいい。
そう考えたノジュエール・セディエルトは、騎士団で魔法使いとして生きていくことにする。
二万字程度の短い話です。
6話完結。+おまけフィーリオルのを1話追加します。
愛などもう求めない
白兪
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。
「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」
「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」
目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。
本当に自分を愛してくれる人と生きたい。
ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。
ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。
最後まで読んでいただけると嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる