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本気のざまぁを見せてやる!
魔術師は結婚を断りたい 1
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毎日、病院や診療所を回って重病人を見舞っては治癒魔法をかけまくる…
「俺さあ、魔術師が長生きな理由分かってきた」
「へえ」
「大きな病気をしても治癒魔法で治せるからだ」
「…言われてみれば、そうだな」
今日もまた親父が訪ねてきた。
割と頻繁に会いに来るもんだから、旅に出たって感じがしない…
良いのか?
「親父さぁ、そろそろ出産じゃないの?
大丈夫なん?」
「ああ、なんせ三人目だからな。
何となく産まれるタイミングは分かる」
「ほんとに?」
「…まあ、もうそろそろ空を飛ぶのはキツイかな?って感じたりもする…だからこれを持ってきた」
親父はポケットから、ニールに頼まれて作った通信用ブレスレットを2本取り出し、1本を俺にくれた。
「ああ、これか……まさか親父が作ったの?」
「職人に頼んだ」
「やっぱそうか…ここのプレートに回路書くの、結構大変だからね」
親父には細かすぎて多分無理だろうと思ったんだよね。
職人さんがやってくれたんなら大丈夫だな。
「これ、大きくしても大丈夫なもん?」
「うん、原価下げるのに小さくしてるだけだから」
「あー…なるほどな」
マギシルバーは杖なんかに良く使われる金属なんだけど、意外と高いんだよね。
資源がとめどなく湧いて出て来るわけでもないし、使い過ぎると価格高騰を招く事になりかねない。
「モン○ンみたいに、魔物から素材とか採れたらいいのにな」
「まあ、採れないってわけでも無いが…竜でもない限りは動物と似たようなもんだからな」
だから、獣系魔物なんかだと普通にお肉として食べられるらしい。
「ただ、食べる目的で最初から火魔法で攻撃しても、美味しくないんだよ」
「そうなん?」
「一番良いのは、雷魔法で気絶させてから風魔法で首を落とす方法だな」
親父曰く、血がある程度抜けてから捌いて食うと旨いらしい。
上手に焼けました♪だけは可能だな、だって。
「今生の親父って妙にワイルドだよな」
「行軍中の飯は現地調達になりがちだからな」
「前世じゃアウトドアとは縁がなかったのにね」
「そうだなぁ、河原でバーベキューがせいぜいだったな」
火をおこすのに四苦八苦した経験が思い出される。
今なら魔法ですぐだけど。
親父も前世のドタバタを思い出したのか、照れ笑いする。
それから二人で、前世で楽しかった事をぽつぽつと話す…
色々あったけど、楽しいこともそれなりにあった人生だった。
話の途中で、親父が言った。
「…ところで、母さんは見つかりそうか?」
「ううん、全然。ここの魔術師ギルドにもそれっぽい人はいなかったよ」
「そうか…まあ、手がかりも無いからな」
「そもそも前世を思い出してなかったらどうしようもないしね」
母さんとの思い出も、楽しいことが沢山ある。
豪遊と称して、サイ○リヤでパスタ全品頼んで食べ比べしてみた事とか。
どの銘柄のウィンナーが一番好きか、何種類も買ってきて食べ比べしてみた事とか。
どこのスーパーの唐揚げが一番好きか、自転車で走り回って買い集めたりとか…
ん?
「…母さんって、食べるの好きだったよね?」
「ああ、料理も上手だったしな」
「もしかして、そっちの能力使って食堂とか経営してたりしないのかな…」
「あー…あり得る、かも?」
転生者は魔法が使えるって前提でいたけど、料理の腕にも注目すべきだな。
胃袋掴む系は、転生チートの代表格だし。
「じゃあ、今後はそっちも気にしながら進むよ。
明日から王都を出て、北の街に向かうつもり」
「そうか、気をつけて行けよ…
って、そうそう、転移魔法なんだけど、結構順調に進んでてな。
実用実験にこぎ着けそうなんだ…だから、町やら村に付いたら逐一連絡くれ。座標測定装置の設定を頼みたいんだ…ヨークに持って行かせるから」
「分かった。
今のとこ、先に北上して東を回って、最後は最西の村になる予定」
「海の公爵様んとこか」
「うん」
すると、また借りを作ることになりそうだな…と親父が呟き、そう言えば海の公爵領はカリーナ様の実家だった事を思い出す。
「そう言えばあっちにいる王子様は、もう結婚してたっけな」
「第2王子様が公爵様の後継になったんだっけ?」
「そうそう、あの爺さん、お題目を振りかざして孫馬鹿全開だからな…
ロンバードは会ったことあったっけ?」
「うん、正式には一回だけね」
ダリル様との婚約披露宴で、ギゼルの息子なら間違いない!って言ってくれたのを、しっかりと覚えてる。
…それに、非公式には何度も会ってるしね。
「時々空飛んで来てカリーナ様に怒られてるよ」
「あの歳でか?あー…でも、そろそろ止めとけ…とは言えんしな…箒開発チームに言っとくわ、速度より風避け重視のやつ作ってくれって」
結婚しても、家族は家族。
会いたい時に会えるように…強い立場の人じゃなくても、そう言える日が来るように。
遠く離れてても転移魔法を使えば会いにいける、そんな世の中に……
なるといいな。
「俺さあ、魔術師が長生きな理由分かってきた」
「へえ」
「大きな病気をしても治癒魔法で治せるからだ」
「…言われてみれば、そうだな」
今日もまた親父が訪ねてきた。
割と頻繁に会いに来るもんだから、旅に出たって感じがしない…
良いのか?
「親父さぁ、そろそろ出産じゃないの?
大丈夫なん?」
「ああ、なんせ三人目だからな。
何となく産まれるタイミングは分かる」
「ほんとに?」
「…まあ、もうそろそろ空を飛ぶのはキツイかな?って感じたりもする…だからこれを持ってきた」
親父はポケットから、ニールに頼まれて作った通信用ブレスレットを2本取り出し、1本を俺にくれた。
「ああ、これか……まさか親父が作ったの?」
「職人に頼んだ」
「やっぱそうか…ここのプレートに回路書くの、結構大変だからね」
親父には細かすぎて多分無理だろうと思ったんだよね。
職人さんがやってくれたんなら大丈夫だな。
「これ、大きくしても大丈夫なもん?」
「うん、原価下げるのに小さくしてるだけだから」
「あー…なるほどな」
マギシルバーは杖なんかに良く使われる金属なんだけど、意外と高いんだよね。
資源がとめどなく湧いて出て来るわけでもないし、使い過ぎると価格高騰を招く事になりかねない。
「モン○ンみたいに、魔物から素材とか採れたらいいのにな」
「まあ、採れないってわけでも無いが…竜でもない限りは動物と似たようなもんだからな」
だから、獣系魔物なんかだと普通にお肉として食べられるらしい。
「ただ、食べる目的で最初から火魔法で攻撃しても、美味しくないんだよ」
「そうなん?」
「一番良いのは、雷魔法で気絶させてから風魔法で首を落とす方法だな」
親父曰く、血がある程度抜けてから捌いて食うと旨いらしい。
上手に焼けました♪だけは可能だな、だって。
「今生の親父って妙にワイルドだよな」
「行軍中の飯は現地調達になりがちだからな」
「前世じゃアウトドアとは縁がなかったのにね」
「そうだなぁ、河原でバーベキューがせいぜいだったな」
火をおこすのに四苦八苦した経験が思い出される。
今なら魔法ですぐだけど。
親父も前世のドタバタを思い出したのか、照れ笑いする。
それから二人で、前世で楽しかった事をぽつぽつと話す…
色々あったけど、楽しいこともそれなりにあった人生だった。
話の途中で、親父が言った。
「…ところで、母さんは見つかりそうか?」
「ううん、全然。ここの魔術師ギルドにもそれっぽい人はいなかったよ」
「そうか…まあ、手がかりも無いからな」
「そもそも前世を思い出してなかったらどうしようもないしね」
母さんとの思い出も、楽しいことが沢山ある。
豪遊と称して、サイ○リヤでパスタ全品頼んで食べ比べしてみた事とか。
どの銘柄のウィンナーが一番好きか、何種類も買ってきて食べ比べしてみた事とか。
どこのスーパーの唐揚げが一番好きか、自転車で走り回って買い集めたりとか…
ん?
「…母さんって、食べるの好きだったよね?」
「ああ、料理も上手だったしな」
「もしかして、そっちの能力使って食堂とか経営してたりしないのかな…」
「あー…あり得る、かも?」
転生者は魔法が使えるって前提でいたけど、料理の腕にも注目すべきだな。
胃袋掴む系は、転生チートの代表格だし。
「じゃあ、今後はそっちも気にしながら進むよ。
明日から王都を出て、北の街に向かうつもり」
「そうか、気をつけて行けよ…
って、そうそう、転移魔法なんだけど、結構順調に進んでてな。
実用実験にこぎ着けそうなんだ…だから、町やら村に付いたら逐一連絡くれ。座標測定装置の設定を頼みたいんだ…ヨークに持って行かせるから」
「分かった。
今のとこ、先に北上して東を回って、最後は最西の村になる予定」
「海の公爵様んとこか」
「うん」
すると、また借りを作ることになりそうだな…と親父が呟き、そう言えば海の公爵領はカリーナ様の実家だった事を思い出す。
「そう言えばあっちにいる王子様は、もう結婚してたっけな」
「第2王子様が公爵様の後継になったんだっけ?」
「そうそう、あの爺さん、お題目を振りかざして孫馬鹿全開だからな…
ロンバードは会ったことあったっけ?」
「うん、正式には一回だけね」
ダリル様との婚約披露宴で、ギゼルの息子なら間違いない!って言ってくれたのを、しっかりと覚えてる。
…それに、非公式には何度も会ってるしね。
「時々空飛んで来てカリーナ様に怒られてるよ」
「あの歳でか?あー…でも、そろそろ止めとけ…とは言えんしな…箒開発チームに言っとくわ、速度より風避け重視のやつ作ってくれって」
結婚しても、家族は家族。
会いたい時に会えるように…強い立場の人じゃなくても、そう言える日が来るように。
遠く離れてても転移魔法を使えば会いにいける、そんな世の中に……
なるといいな。
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