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ざまぁなど知らぬ!
かけめぐる噂
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セジュールが撃沈した日からしばらく。
それでもミリエッタさんの首からはセジュールの瞳色の宝石がぶら下がる事となり、彼女がダリル様を狙っているという噂もまた新たな展開を見せた。
というか、新しい噂がポコポコと湧いて出て、騒ぎを大きくしているのだ。
「どこをどうすればそういう噂になるんでしょうね?」
「だが、出所を調べれば誰がどういう立場で権力に関わろうとしているのか見えて来る。悪くは無い」
「良くも無いですけどね!」
細かい部分は省くとして、簡単に分類するとこんな感じだ。
①ダリル様は俺を正妃に、ミリエッタさんとセジュールを側妃にするっていう噂。
※ミリエッタさんを正妃にパターンも有
②ダリル様は俺と結婚するが、本当はミリエッタさんが俺とダリル様の子どもを産むっていう噂。
③ミリエッタさんがセジュールとお付き合いしているという噂。
④俺がセジュールと添い遂げる為にミリエッタさんは尊い犠牲になったのだという噂。
⑤ダリル様と俺とセジュールとミリエッタさんでこの国を乗っ取ろうとしているという噂。
…最後の1つはやたら物騒で困ったもんだ。
明日はオーセン初の国際会議だっていうのに…
「③と④はまだしも、①②⑤は納得いきませんね」
「④も納得しかねるがな。
最後の一つは、父上がその父親にした事を俺がまた繰り返すだろう…という嫌味のようなもんだ」
「あ、ああ…」
今の国王陛下は、父親を断罪して玉座を奪った。
でもそれは、オーセンが立ち直るのに必要で…。
「それでも、領地を取り上げられて貧しい暮らしをさせられた恨みがあるんだろうよ」
「ああ…まあ、生活水準が下がるのを受け入れるって難しいですもんね」
地方領主による悪政が蔓延った末に起きた「魔物の大増殖」。
国民の1割強が魔物に食い殺され、
半数以上が貴族に食い潰され、
農地の3割が放棄され、
いくつもの村が全滅し…。
魔物に各地を蹂躙されて瀕死の状態のオーセンを再建する為、陛下は辣腕を振るった。
父王と弟の首を自ら断頭台で切り落とすと、
悪徳領主を次々に処刑し、
悪徳とは言えないまでも杜撰な領地経営をしていた者からは土地を取り上げ、
威張るだけの騎士は身一つで前線送りにし、
魔法で人を脅していた魔術師は一生詠唱が出来ない様、喉を潰した。
そうして半分以上の貴族を処分し、彼らが不正に蓄財した富を没収して搾取された民に再分配し、学園の授業に「行政経営学」を追加し、必修科目にした。
卒業までにこれの単位を取れないと、放校処分だ。
当時の学園生は寝耳に水だったろうなぁ…。
そんなこんなで、ついたあだ名は「紅の王」。
悪い奴らを皆殺し…めっちゃ怖い。
ちなみにその「魔物の大増殖」で獅子奮迅の活躍を見せたのが、親父を拾った第27騎士団だ。
絶望が蔓延する中にあって怒涛の快進撃を続け、いつしか最強騎士団と呼ばれるようになった彼らは、全員がオーセンの英雄として知られている。
もちろん親父も。
だから確かに、俺が親父やメルバ父さんを、ダリル様が陛下を超えたいと思うならそうなる…
でも、同じ方向性で超えようとしても駄目だよね。
だってもう一度国家の存亡に関わる大事件が起きないといけなくなるし。
それに俺…ダリル様が父親を殺すのなんか、見たくない。
「国際会議までは泳がせておく。
それより以降は、実害があれば都度処分だ」
「今と変わりませんね?」
「そうでもない。
今より実害の範囲が広がり、国益に反する可能性がある場合も処分対象となる。
例えば、他国の大使又は留学生相手に噂を吹聴した場合、王都追放」
この婚約が揺らげば、行政のトップである王と国防の要である大魔術師の間に不和を生む。
それは他国に付け入る隙を与えることだ。
もし噂を本気にして、どこかの国が戦争を仕掛けてきたら…
「オーセンはまだ立ち直ったばかりだ。
決して本調子ではない、だから国内で不穏な動きがあれば、潰す」
そこまで言って、ダリル様は為政者の顔から普段の顔に切り替わった。
そして愚痴った。
「しかし俺とお前が結婚するのは決定事項だと、あれほど言ってもまだ諦めない奴がいるとは」
「俺とダリル様って、意外と家同士の関係が強いですもんね。
だから不公平感があるのかも…側妃は考えていないんですか?」
「お前以外の人間に勃たないのに、もらってどうする」
「…すみません…」
いや、俺が謝る事でもないけど。
「すまないと思うなら、一日でも早く子が為せるよう力を貸して貰いたい」
「えっ?」
「一日一回以上、必ず俺に抱かれること。
必ずしも夜、ベッドの上ででなくとも良い。
昼休みの俺の執務室は俺だけしかいないし、他にも人目につかない場所は押さえてある」
「えええええ」
待って待って。
それって……
ええーーーー!?
それでもミリエッタさんの首からはセジュールの瞳色の宝石がぶら下がる事となり、彼女がダリル様を狙っているという噂もまた新たな展開を見せた。
というか、新しい噂がポコポコと湧いて出て、騒ぎを大きくしているのだ。
「どこをどうすればそういう噂になるんでしょうね?」
「だが、出所を調べれば誰がどういう立場で権力に関わろうとしているのか見えて来る。悪くは無い」
「良くも無いですけどね!」
細かい部分は省くとして、簡単に分類するとこんな感じだ。
①ダリル様は俺を正妃に、ミリエッタさんとセジュールを側妃にするっていう噂。
※ミリエッタさんを正妃にパターンも有
②ダリル様は俺と結婚するが、本当はミリエッタさんが俺とダリル様の子どもを産むっていう噂。
③ミリエッタさんがセジュールとお付き合いしているという噂。
④俺がセジュールと添い遂げる為にミリエッタさんは尊い犠牲になったのだという噂。
⑤ダリル様と俺とセジュールとミリエッタさんでこの国を乗っ取ろうとしているという噂。
…最後の1つはやたら物騒で困ったもんだ。
明日はオーセン初の国際会議だっていうのに…
「③と④はまだしも、①②⑤は納得いきませんね」
「④も納得しかねるがな。
最後の一つは、父上がその父親にした事を俺がまた繰り返すだろう…という嫌味のようなもんだ」
「あ、ああ…」
今の国王陛下は、父親を断罪して玉座を奪った。
でもそれは、オーセンが立ち直るのに必要で…。
「それでも、領地を取り上げられて貧しい暮らしをさせられた恨みがあるんだろうよ」
「ああ…まあ、生活水準が下がるのを受け入れるって難しいですもんね」
地方領主による悪政が蔓延った末に起きた「魔物の大増殖」。
国民の1割強が魔物に食い殺され、
半数以上が貴族に食い潰され、
農地の3割が放棄され、
いくつもの村が全滅し…。
魔物に各地を蹂躙されて瀕死の状態のオーセンを再建する為、陛下は辣腕を振るった。
父王と弟の首を自ら断頭台で切り落とすと、
悪徳領主を次々に処刑し、
悪徳とは言えないまでも杜撰な領地経営をしていた者からは土地を取り上げ、
威張るだけの騎士は身一つで前線送りにし、
魔法で人を脅していた魔術師は一生詠唱が出来ない様、喉を潰した。
そうして半分以上の貴族を処分し、彼らが不正に蓄財した富を没収して搾取された民に再分配し、学園の授業に「行政経営学」を追加し、必修科目にした。
卒業までにこれの単位を取れないと、放校処分だ。
当時の学園生は寝耳に水だったろうなぁ…。
そんなこんなで、ついたあだ名は「紅の王」。
悪い奴らを皆殺し…めっちゃ怖い。
ちなみにその「魔物の大増殖」で獅子奮迅の活躍を見せたのが、親父を拾った第27騎士団だ。
絶望が蔓延する中にあって怒涛の快進撃を続け、いつしか最強騎士団と呼ばれるようになった彼らは、全員がオーセンの英雄として知られている。
もちろん親父も。
だから確かに、俺が親父やメルバ父さんを、ダリル様が陛下を超えたいと思うならそうなる…
でも、同じ方向性で超えようとしても駄目だよね。
だってもう一度国家の存亡に関わる大事件が起きないといけなくなるし。
それに俺…ダリル様が父親を殺すのなんか、見たくない。
「国際会議までは泳がせておく。
それより以降は、実害があれば都度処分だ」
「今と変わりませんね?」
「そうでもない。
今より実害の範囲が広がり、国益に反する可能性がある場合も処分対象となる。
例えば、他国の大使又は留学生相手に噂を吹聴した場合、王都追放」
この婚約が揺らげば、行政のトップである王と国防の要である大魔術師の間に不和を生む。
それは他国に付け入る隙を与えることだ。
もし噂を本気にして、どこかの国が戦争を仕掛けてきたら…
「オーセンはまだ立ち直ったばかりだ。
決して本調子ではない、だから国内で不穏な動きがあれば、潰す」
そこまで言って、ダリル様は為政者の顔から普段の顔に切り替わった。
そして愚痴った。
「しかし俺とお前が結婚するのは決定事項だと、あれほど言ってもまだ諦めない奴がいるとは」
「俺とダリル様って、意外と家同士の関係が強いですもんね。
だから不公平感があるのかも…側妃は考えていないんですか?」
「お前以外の人間に勃たないのに、もらってどうする」
「…すみません…」
いや、俺が謝る事でもないけど。
「すまないと思うなら、一日でも早く子が為せるよう力を貸して貰いたい」
「えっ?」
「一日一回以上、必ず俺に抱かれること。
必ずしも夜、ベッドの上ででなくとも良い。
昼休みの俺の執務室は俺だけしかいないし、他にも人目につかない場所は押さえてある」
「えええええ」
待って待って。
それって……
ええーーーー!?
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