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ざまぁなど知らぬ!

撃沈する弟

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ミリエッタさんに見つかってしまった俺とダリル様。
仕方ないのでそっと姿を見せると、セジュールが言った。

「お兄様、どうしてそんなところに!?」
「あ、いや~、あはは…」
「ロンバードはお前の事が心配だったらしいぞ、セジュール」
「まあまあ!そうでらしたのね、ロンバード様!さすが弟思いのロンバード様ですわ!」

ミリエッタさんは俺にセジュールをぐいぐいくっつける。
そしてペンダントとイヤーカフを箱に納めてから、俺に聞く。

「ところでこの3点セット、おいくらですの?」
「え、えっと…それは」
「……19万8000?」
「そんな高くないよ!?」
「あらやだ、これでも相当お安く申し上げましたのに」

ミリエッタさんはちょっと不服顔…
なんでだろう。

「ちゃんと対価はお支払いしませんと。
 ロンバード様の技術料をタダで頂く訳にはいきませんもの…ね、ダリル殿下?」
「うむ」

相変わらずしっかりしているミリエッタさん。
撃沈したセジュールは意気消沈…
可哀想すぎて思わずそっと肩を抱き寄せてから頭をナデナデする。
するとミリエッタさんが一瞬変な声を上げる。

「ブフォ!」
「…ミリエッタさん?」
「なんたる眼福…我が人生に一片の悔いなし!
 ではごきげんよう!むほほほ!」
「ご、ごきげんよ…あっ、そっちは!」
「ほぶぉ!?」

ミリエッタさんは俺たちが隠れていた植え込みに華麗につっこみ…
恥ずかしかったのか、動かなくなった。

***

「…お恥ずかしいところをお見せしましたわ」
「いやいや、しっかり者のミリエッタさんがこんな失敗をするなんて…ねえ、セジュール」

俺は何とかミリエッタさんとセジュールの間を取り持とうと話を振った。
セジュールは頑張ってミリエッタさんに言った。

「そっ、そうですね…お疲れなのではありませんか?
 その、主に…変な噂などで」

するとミリエッタさんがやや恥ずかし気に言う。

「あ、あの…小型魔物以下の連中でしたら別にどうという事はございませんのよ?
 どちらかというと困っているのは、妙に私を応援してくる方達でしょうか…」
「ふむ?どんな連中だ」
「その…魔術塔にお勤めの方々が…ロンバード様には王子妃より魔術局長が相応しいと」

ミリエッタさんは俺の顔を見ながら申し訳なさそうに言う。
だけど、俺も魔術塔でよく泣きつかれてるから良く分かってる。

ダリル様はうんざりした顔で言う。

「またあの連中か…他には?」
「他…は、私の口からは何とも。
 もう殿下は隠密の方から報告を受けておられるのでしょう?」
「……分かるのか」
「ええまあ…多少、索敵能力がありまして」
「えっ、それって叔父上の旦那様と同じの?」

メルバ父さんには弟が1人いて、その人がキャンディッシュ領を運営してくれているんだ。
その叔父さんの旦那様は、我が国最強騎士団の元副団長様で救国の英雄の1人……

当然めちゃ強い。

特にかくれんぼはめちゃくちゃ強くて、親父に聞いたらそういう「能力」があるって教えてくれた。

セジュールは目をキラキラさせて言った。

「あの叔父さんと同じ能力…すごい!」
「うふふ、父が知らずと持っていた能力ですの。
 母のおかげで遺伝致しまして、このおかげで大抵の危険は察知できる…はず、でしたのに…」

植え込みに突っ込んだのが相当恥ずかしかったらしいミリエッタさん。
うん、それは…そっとしておこう。

「でも、そんなにすごい能力を持ってるなら…その」

やっぱり俺よりミリエッタさんの方が…

と、言いかけた矢先。

「あらロンバード様。
 私、殿下と結婚など頼まれても致しませんわ?
 そもそも結婚はしないと決めておりますし」
「えっ!?」

そんな、だってすごい玉の輿だよ!?
女の子はみんな王子様と結ばれる事に憧れてるんじゃないの?

そんなくだらない思い込みに足を取られかけてた俺に、ミリエッタさんは笑いながら言った。

「女は必ず結婚すべし、という法は御座いません。
 別に結婚だけが幸せになる道じゃありませんし、子どもを産むのが仕事では、家畜と変わりませんわ」

その言葉は何ともミリエッタさんらしく…
再撃沈したセジュールはがっくりと項垂れた。

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