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ざまぁなど知らぬ!
大事なミッション
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次の日、俺は馬車で王宮の大議事堂へ…
と見せかけて、校舎の方へ向かうセジュールを待ち構える。
何故かダリル様も一緒だ。
馬車を早々に降り、寮から校舎への道と正門から校舎への道が合流する地点の植え込みに隠れ、俺は寮からの道を、ダリル様は正門から伸びる道を見張る。
「…あっ、セジュールが来た」
「ミリエッタも来たぞ…おい、ロンバード、少し下がれ」
「ああ、はいはい」
セジュールには「すぐにでも必要なものだから、朝のうちに渡した方がいいよ」と言ってある。
その言葉にしっかり頷いていたから、間違いない…
声を掛けるなら今だぞ、セジュール!
「…あっ、呼び止めた」
「ふむ、ぎこちないがその意気や良し」
ダリル様がセジュールを褒める。
こんな時に褒めないで、本人が聞いてるところで褒めればいいのにね。
俺とダリル様は二人の会話に聞き耳をたてる…
「こういう時の魔法は無いのか」
「もう使ってます」
そう、だからちゃんと聞こえる…
***
「何かございましたの?セジュール様」
「いえ、あ、はい…その、ここじゃ何ですから、少しだけ庭へ行きませんか」
「分かりましたわ」
セジュールはミリエッタさんと一緒に校舎とは逆の道へ少し歩き、庭園のベンチへ。
「あの、こちらのベンチで、」
「はい、お先に失礼致します」
セジュールがハンカチを敷こうとポケットに手を入れる前に、ささっとベンチへ座ってしまうミリエッタさん。
デートの時にベンチにハンカチを敷くマナーに慣れていないところに、転生を感じる…
というか、絶対そうだと思う。
だって「バックパッカー」を正確に発音できるもん。
ちょっとしょんぼりしながらミリエッタさんの隣に座るセジュール…
違う、嫌われてるわけじゃないんだ、ミリエッタさんにそういう文化が無いだけ…落ち込まないで!
「…ミリエッタのああいうたまにガサツなところが、妙にお母様と似ていてな」
「ああ…不敬ながら分かります」
王妃様は港を治める公爵様の娘で、小さい頃から船の上で過ごすことが多かったらしく、親父曰く「海の男感が漂う」女性なのだ。
お忍びで時々箒に乗って出かけたりもするらしい。
結構この世界では珍しいタイプの女性である。
って、それは置いといて…。
セジュールが鞄からあの箱を取り出したのが見えた。
そして一生懸命何か話している…
「この『護身用アクセサリー3点せっと』なんですが…」
どうやら俺のセールストークをそのまま再現しているらしい。
「すごい魔法道具ですわね…これをロンバード様がお作りに?」
「そうなんです、ミリエッタさんが危ない目に合うことが増えたって、お兄様にご相談したら作ってくださって」
そしてほんのり自分の手柄を混ぜ込んでいる…やっぱり上手いな。
「ミリエッタさんは、人に守られるのがお好きではないんじゃないかって。
それで、せめてこの護身具で、ご自分の身を守って貰えたら…」
そう言って、セジュールはペンダントを取り出してミリエッタさんに付けてあげようとして…
「そうなんですのね…ねえ、試してみてもよろしくて?」
「え、ええ、もちろん!」
「有難う御座います!
…これを握るんですのね?」
「ええ…あ、待って下さい、僕、少し離れますので!」
ミリエッタさんはペンダントを首にかける事なく、試験してみるようだ。
よく考えると得体のしれない装備を人から付けられるのは嫌だよな…
やっぱりしっかりしてる。
それを見たダリル様が言う。
「…あれは脈なしなのではないか?」
「いやいや、きっと大丈夫…」
俺はミリエッタさんの試用実験を見守る。
どうやら無事に展開できた模様…
一安心。
結界の中からミリエッタさんが声を上げる。
「ところでロンバード様、この結界はどうやって解除しますの?」
「ああ、握るのをやめれば解除できますよ」
「馬鹿っ、ロンバード!」
「…あ」
…どうしよう。
見つかっちゃった…!!
と見せかけて、校舎の方へ向かうセジュールを待ち構える。
何故かダリル様も一緒だ。
馬車を早々に降り、寮から校舎への道と正門から校舎への道が合流する地点の植え込みに隠れ、俺は寮からの道を、ダリル様は正門から伸びる道を見張る。
「…あっ、セジュールが来た」
「ミリエッタも来たぞ…おい、ロンバード、少し下がれ」
「ああ、はいはい」
セジュールには「すぐにでも必要なものだから、朝のうちに渡した方がいいよ」と言ってある。
その言葉にしっかり頷いていたから、間違いない…
声を掛けるなら今だぞ、セジュール!
「…あっ、呼び止めた」
「ふむ、ぎこちないがその意気や良し」
ダリル様がセジュールを褒める。
こんな時に褒めないで、本人が聞いてるところで褒めればいいのにね。
俺とダリル様は二人の会話に聞き耳をたてる…
「こういう時の魔法は無いのか」
「もう使ってます」
そう、だからちゃんと聞こえる…
***
「何かございましたの?セジュール様」
「いえ、あ、はい…その、ここじゃ何ですから、少しだけ庭へ行きませんか」
「分かりましたわ」
セジュールはミリエッタさんと一緒に校舎とは逆の道へ少し歩き、庭園のベンチへ。
「あの、こちらのベンチで、」
「はい、お先に失礼致します」
セジュールがハンカチを敷こうとポケットに手を入れる前に、ささっとベンチへ座ってしまうミリエッタさん。
デートの時にベンチにハンカチを敷くマナーに慣れていないところに、転生を感じる…
というか、絶対そうだと思う。
だって「バックパッカー」を正確に発音できるもん。
ちょっとしょんぼりしながらミリエッタさんの隣に座るセジュール…
違う、嫌われてるわけじゃないんだ、ミリエッタさんにそういう文化が無いだけ…落ち込まないで!
「…ミリエッタのああいうたまにガサツなところが、妙にお母様と似ていてな」
「ああ…不敬ながら分かります」
王妃様は港を治める公爵様の娘で、小さい頃から船の上で過ごすことが多かったらしく、親父曰く「海の男感が漂う」女性なのだ。
お忍びで時々箒に乗って出かけたりもするらしい。
結構この世界では珍しいタイプの女性である。
って、それは置いといて…。
セジュールが鞄からあの箱を取り出したのが見えた。
そして一生懸命何か話している…
「この『護身用アクセサリー3点せっと』なんですが…」
どうやら俺のセールストークをそのまま再現しているらしい。
「すごい魔法道具ですわね…これをロンバード様がお作りに?」
「そうなんです、ミリエッタさんが危ない目に合うことが増えたって、お兄様にご相談したら作ってくださって」
そしてほんのり自分の手柄を混ぜ込んでいる…やっぱり上手いな。
「ミリエッタさんは、人に守られるのがお好きではないんじゃないかって。
それで、せめてこの護身具で、ご自分の身を守って貰えたら…」
そう言って、セジュールはペンダントを取り出してミリエッタさんに付けてあげようとして…
「そうなんですのね…ねえ、試してみてもよろしくて?」
「え、ええ、もちろん!」
「有難う御座います!
…これを握るんですのね?」
「ええ…あ、待って下さい、僕、少し離れますので!」
ミリエッタさんはペンダントを首にかける事なく、試験してみるようだ。
よく考えると得体のしれない装備を人から付けられるのは嫌だよな…
やっぱりしっかりしてる。
それを見たダリル様が言う。
「…あれは脈なしなのではないか?」
「いやいや、きっと大丈夫…」
俺はミリエッタさんの試用実験を見守る。
どうやら無事に展開できた模様…
一安心。
結界の中からミリエッタさんが声を上げる。
「ところでロンバード様、この結界はどうやって解除しますの?」
「ああ、握るのをやめれば解除できますよ」
「馬鹿っ、ロンバード!」
「…あ」
…どうしよう。
見つかっちゃった…!!
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