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【過去ばなし】チート魔術師とチャラ男令息

それからというもの

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……全てを受け入れてくれたメルバを、俺もまた全て受け入れ…えっと、主にそっち方面…で…

……………馬鹿っ!!

何を言い出すんだ、俺!!

で、でも、最初にせ、せ、最後までした、日に、

「今日から毎日しようね♡」
「ま、毎日は、むり……」
「だーめ、毎日。」
「だから持たないってば……」

って言ったのに、仕事の合間にやってきたり、仕事終わりにやってきたり、そんで、そんで…

「ばっ…、こんなところで、」
「ここなら誰も来ないよ」
「そういう問題っ……ッ、ん……」

寮の外でも、過激な……過激な、えーと…えー…

スキンシップ?

とにかく毎日、ほんとに毎日……

で、だから……

その……

……

教師になった、戦友たちに、言われた。

「ギゼル、麗しの婚約者様に言っとけ。
 誰も取らないから風紀を乱すな、って」
「なななななにを?」
「こっからチラっと見えんだよ、青姦してるの」
「!!!」

な、なんで、みえるの!?

「多分見せつけてんだと思うんだよ、こっち見て勝ち誇った顔してるし」
「はぁあああ!?」

牽制!?牽制なの!?いき過ぎだろ!!

「はは、でもまあよくある事だし」
「よくある!?」

元戦友によると、貴族間ではわざとそういうのを見せて関係を主張する事がままあるらしい。

ド変態の集まりかよ!

そんなのついてけない。
だって、その、あ、あ、あ、
ままあるって!
しちゃってる身で言うのも、だけど!

「もうやだ…きぞくこわい」

でも、そんな俺を見て元戦友たちは笑う。

「ははは、もう遅えよ!」
「ギゼルってホント、エロ耐性低いよな~」
「うっ、うるさい!!」
「そういうとこだけ見た目通りなのがまた…」
「なんだよ!!」
「「かわいい」」
「かわいくねーーーわ!!!」

俺だって、俺だって少し身長伸びたし!
ちょっとだけど髭だって生えるし!!
ふ、ふ、ふん!
男らしく、なってるんだぞ!

「そういうとこが可愛いんだわ」
「そうそう、恐ろしくて手は出せないけど」
「はは、メルバ様の逆鱗に触れたら、次の日からどこへ行っても針のムシロだからな」
「えっこわい」

どうやらメルバはメルバで、恐るべき政治力を身に着けつつあるらしい。

「まあ、兎に角、風紀を乱さないでくれ、って。
 今んとこ俺等くらいしか見てないみたいだけど」
「お前らに見られてんのが一番嫌だっつの!!」

見ず知らずの他人より顔を知ってるやつに見られる方が何万倍か気まずい。
もうやだ。

だからメルバにそっくりそのまま伝えると、今度は

「ふーん…じゃあ次は魔術塔でセックスしよ?」

とか言い始める始末。

だから牽制の仕方がおかしいんだよ…
なんでせっ、せっ……み、みせる、必要が?

「結婚までは気を抜けないからね。
 君を掻っ攫いたい連中は山ほどいるんだから…
 魔術師は魔術師同士掛け合わせるべき、とか、家畜か何かと勘違いしてる発言も聞こえるし」

ああその話か…。
良く聞かされる説だが、それは妄言だぞ。
まだ信じてる馬鹿がいるんだな…。

「アホだなぁ…
 魔術師同士を掛け合わせても魔術師が生まれるとは限らないって、自分の経験上で分かってるはずだが」
「…そうなの?」
「そうさ、お互い魔術師の両親の元にも、魔法が使えない子は産まれる。
 だってあいつらの言う魔術師は、貴族出のだけだからな」
「ああ、そっか……」

そう、そもそもこの国で正式に「魔術師」と認められるのは貴族の血を引く男だけだ。
女はいくら魔法が使えても「魔術師」と認められないんだ…例えその人が貴族であったとしても。

だから、奴らの言う「魔術師同士を掛け合わせる」事は「男同士で子どもを作る」事と同義になる。

男が産む場合、親の能力が受け継がれるかどうかは五分五分と言われていて…稀にどちらとも違う能力を持っている子もいる。
つまり、魔法が使えない子が産まれてくる可能性がいくらかはあるって事だ。

「それに、例え女に産ませたとしても、親の持つ魔力の大きさが必ず引き継がれるとは限らないみたいでな。
 時には小さな魔法しか使えない子どもだって産まれてくる事があるんだ。
 そういう子が、どんな扱いを受けてきたか…
 俺は、知ってる」

時々起こる、遺伝子の悪戯。
それによって生まれてしまった、魔法が使えない、少ししか使えない子どもたち。
たったそれだけの事なのに、親から冷遇され、無きものとして扱われる子どもたち。

元・第27騎士団長のユッカさんは、そんな子どもたちを片っ端から引き取り、騎士になるよう育て上げ続けた。
だから第27騎士団の「魔物の大増殖」以前の評価は底辺に近かったし、魔法を使える奴もいなかった。
いたとしても、メルバみたいに「コップに水を溜められる」程度の魔力で…

そんな「魔術師」を憎んで当然の騎士団に、俺は拾われて育ててもらった。

彼らは知っていたんだ、神様は気まぐれだって事を。
魔法のあるなしを選んで生まれてくることは出来ないんだって事も…
だから、魔法持ちになってしまった俺を救う事も、厭わなかった。

「俺は、両親も爺ちゃん達も魔法とは無縁だった」
「そうなんだね」
「ああ、そもそも『魔術師』なんてのは突然変異みたいなもんなんだ、きっと」

だから俺に付いてきた子どもたちの中にも、魔法を使えるようになった子が1人だけどいたりなんかしてさ。
俺ほどでもないけど、今や立派に学園でもトップクラスの実力……うん、魔法だけ、だけどな…。

だから、意外とこの「突然変異」は起きやすいのかもしれない。
でなきゃ魔法が使える平民が何百人いる事に理由がつかないだろう?

「そもそも子どもの将来は、親が決められる事じゃない。
 確実に遺伝するのは、ハゲるかどうかとか…まあ、見た目くらいのもんかもな」

魔法が使えなくても、子どもの顔は親に似る。
下手に似ているぶん、勝手に期待して勝手に失望する。
そして、産ませた方は産んだ方の腹が悪いと主張し、産んだ方は産ませる方の種が悪いと罵倒する。
それが全部、子どもに向いてしまう…

弱い者にしわ寄せが行く。
魔力偏重は、そういう危険を孕んでいる。

「そっか…じゃあ、僕とギゼルの子どもは、僕とギゼルに似てるってことだね?」
「……ああ、まあ、そうだな」
「きっと可愛いだろうね…
 ね、結婚したらすぐ、子作りしようね!
 って、今もうしちゃってるか♡」
「……ばか」

男は秘術を受けなきゃ子どもは授かれない。
つまり今してるその……あれは、単に……か、か……の、で、あー…を、確かめ合う…

「おやギゼル、顔が赤いよ?」
「メルバが、こっ、こづ、子作りとか言うから!」
「だから恥ずかしかったの?」
「うっ……う、う…、うん……」

メルバは良い顔で笑う。
そして言う。

「そういうところも、可愛くて好きだよ」
「もっ!?」
「姿形も、本当は優しいとこも、好き。
 魔法が沢山使える頼もしいとこも…
 剣を振る、かっこいいとこも好き。
 少し泣き虫で寂しがりやなとこも好き。
 それから…」
「も、も、もういい!!」

聞いてるこっちが恥ずかしい。
何で俺のことそんなに好きなの!?
全然分かんない!
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