【完結】ざまぁは待ってちゃ始まらない!

紫蘇

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【過去ばなし】チート魔術師とチャラ男令息

結婚

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何だかんだ有りつつも、俺とメルバは結婚した。

「過去の清算が間に合って良かったな?」
「そうだね、僕は本来の姿を偽って遊び人の仮面をつけてたんだって事を、みんながしっかり理解してくれたからね」

メルバはそう言ってニコニコ笑う。
俺もいい加減、この笑顔の向こうに隠し事があるのに気がついてきた。
だから聞く。

「いや、本当はただのチャラ…遊び人、だろ」
「違うよ!あれは噂や醜聞の真相を探るのに手っ取り早いから、そういう風に演じてただけ」
「つまり情報収集の為、と?」
「そうだよ!
 そもそもただの遊び人なら、借金くらい作ってると思わない?」
「…………そうだな」

メルバは娼館や賭場に出入りすることはせず、ただただ声をかけて親密になって…という手法(つまりナンパ)で様々な人間と関係を持ったそうだ。

「お金が無い分、苦労したんだから」
「…………そうですか」
「そうだよ?
 だけどギゼルと出会って、恋をして…。
 そうなったら、遊び人の仮面なんか被っていられないでしょ?
 ま、リブリーも王様になったし、丁度良かったんだよね」

…本当だろうか。

でも前世で息子を死なせ、今生でも血にまみれた俺を受け止めて愛してくれるのはメルバくらいのものだとも思うし…

正直、その…

あっちの方は上手いし、その…
今更他に相手を作るのも…
想像つかないし。

結局、飽きて捨てられるまでは一緒に生きていこうかな…って、そんな感じ?

まあ、一人になっても食っていけるスキルは充分に持ってるしな。

だから今は、その…それでいい。


「秘術も無事に終わったしね」
「……うん」

秘術というのは、男が子どもを産めるようにする魔術式の事だ。

そのー、えー、だな。
な、中、出、し…、の、後、特別な、えー、あー、お道具…?で、し…尻に、栓…を…で、それを入れたまま丸一日ベッドで寝ておくと、子宮に似た器官が体内で育つ、っていう…

神秘性も儀式性もあったもんじゃない。

「しかし、これだけは常に無料なんだな」
「結婚したらどちらかが受けなきゃいけないって決まってるからね」

結婚しても子どもが出来ない…じゃあ困る。
人口は国力の大事な要素だからな。
とはいえ、子どもが生まれても育てられないんじゃ何にもならないと思うが。

「それで貧乏人でも子どもができちまうんだよな…
 自分たちの経済状況を考えて、秘術を受けない選択肢もあって良いと思うがね」
「そうだね、子どもが欲しくて結婚する人も、ただ一緒にいたくて結婚する人もいるからね」

そう言ってメルバは俺を抱き寄せ…

「暫く二人きりっていうのも有りだよね。
 国が落ち着いてから景色の良いところでのんびり過ごしつつ子育てする、って…どう?」
「はは、今はどこへ行っても荒れてるからな…
 半分以上は俺がやったんだけどさ」

魔物を蹴散らすのに、景色だなんだを気にしている暇はない。
人命優先だからと反射的に魔法をぶっ放し、歴史のある建物をぶっ壊すなんて日常茶飯事。
鄙びた田園風景を雷で破壊した事もある。
風光明媚な丘の花畑を火の海に変えたこともある。
美しい湖を魔物の血でどす黒く染めた事だって、一度や二度じゃない。

人の住処なわばりから魔物を排除するのに必死だった。
魔物に明け渡した村を、町を、取り戻すのに必死だった。
できる限りの人を助けてきた。
何人も殺した俺だけど、見殺しにした人間は一人もいない。
そう断言できるぐらいには。

「うん…オーセンを救ってくれて有難う、ギゼル」
「どういたしまして」

毎日魔力を限界まで使い果たし、死んだように寝て、起きたらまた魔法を使いまくる…
そんな日常で、魔物を追い出した後の事に気を回す余裕は無かった。
だから復興に力を尽くしてくれる王様には、少しだけ申し訳ないと思っている。

「子どもを売らなきゃならない親が出てこない国になってくれたら…それでいい」

憎くて売るのでも、金欲しさに売るのでもなく、ただ子どもにだけは生きて欲しいと人買いに売る。
だから当然買い叩かれて、行く先は…地獄。

何人の子どもが泣きながら死んだのだろう。
あの日の人買いも、人買いから人を買っていた奴も、必ず処刑台に上がらせると、王は約束したが。

「リブリーならやってくれるよ。
 だから、ギゼルもいざという時には…頼むね」
「ああ」

まだ粛清は終わっていない。
いちいち丁寧に裁判をしているからだろう。
ちゃんと法律というものを分かっている王様で良かったと思う。気分次第で処刑してたんじゃ、恐怖政治と同じだからな。

「ところでギゼル、今日は初夜なんだけど」
「う……やっぱ、する、のか?」
「うん、する。明日の朝までする。
 そして明日の夜も、次の日も…毎日、しようね」

……何を、とは言うまい。
しかし俺の身体…持つのか?

不安になってきた……。

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