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【過去ばなし】チート魔術師とチャラ男令息
王様のお茶会
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いつもの…、…あの、えー……
なんだ、その、あー……
…………。
そう、身体検査!
身体検査の後、メルバが言った。
「ギゼル、リブリー陛下が今度寮の視察に来るんだって」
「へ、え~…」
あー、マズい。
壊すの勿体なくて、共同浴場を取り込む設計に変更しちゃったんだよな…
今やカリーナ様のボイトレルームみたいになってるけど。
「それで、ナヴェント公も娘の様子を見に来るって」
「うん、そうか」
良かった。
あの人なら、風呂の事を擁護してくれそう…
なんせ娘のお気に入りの場所だし。
だが、やれやれ…なんて気を抜いた俺にメルバが告げた。
「だから、簡素なお茶会でも開こうかって」
「は?」
待て、そんな洒落た事出来るような施設はここに無いぞ。
確かに無駄にデカイ食堂はあるが小洒落たテーブルセットは無いし、ティーカップも無い。
今からどうにかして調達するには…うーん。
「大丈夫、必要なものは王宮から運んでくるよ」
「それは良かった」
じゃあ俺のやることはほとんど無いな。
当日は隅でじっとしてればいい…
と、思っていた時があったとさ。
***
それから暫く、視察&茶会の日。
前日から荷物の搬入と準備、足りない設備の増設…
俺もメルバも夜遅くまで準備に駆り出されていたので、久々に「身体検査」無しで寝て準備万端…
は、良いんだが。
「ギゼル、ここの壁はどのくらいの厚みが?大槌でぶっ叩いても平気か?窓ガラスは当然二重で魔法による強化も行われているよな?扉は鉄板がちゃんと入っているか?娘に不審な輩は近づいてきていないか?好きな男が出来た様子は?」
「……」
…「海の公爵」と呼ばれる男、セーユ・ナヴェント。
娘が「したい」という挑戦の全てを支援し、決してNOと言わない度量ある父…
というのは、娘にカッコいい所を見せたい彼のやせ我慢。
本来は娘が心配で、夜も眠れない父親…
「ギゼル、間違いは無いよな?
もし何かが起きたら私はお前を八つ裂きにせねばならん、答えろ」
「……」
小さな声で、それでいて威圧的な声で俺に尋問するかのような質問を投げかけるナヴェント公。
仕方なく、俺は出来るだけ丁寧に答える。
「壁の厚みは外壁30、内壁20。
全ての壁に対物理・対魔法耐性上昇の魔力集積回路を内蔵させ、扉も同様の処置をした。大槌どころか破城槌でも耐えられる仕様だ。
不審な輩は全てゴーレムが排除している。
好意を寄せる男性は…分かりかねる」
「…いるかいないかも分らんのか」
「左様だ」
ナヴェント公は俺に鋭い眼光を向けた。
まるで何かを見透かそうとしている様…だが「紅の王」と「洋上の薔薇姫」の恋愛をここで知られるわけには…。
「ギゼル…貴様、知っているな」
「いえ、ぞんじませ「存じておる!誰だ、言え。さもなくば貴様の首を折る」
「じゃあ『折れるものなら』と返すしか無いな」
「意地でも言わんつもりか?」
俺はナヴェント公と睨み合い、言わないという立場を貫こうと…
と、そこへ。
「なあメルバ…このピアス、変じゃないか?」
「だから変な事はありませんって」
遠くから2人の声が…
「でもでも、リブリー陛下の瞳は…」
「昨日も言ったでしょう、まだ周囲には秘…あ」
……最悪。
こいつら最悪。
「…どういう事か、聞かせてもらおうか?」
「い、いやぁ、俺も今知ったとこ…ははは」
「嘘をつくんじゃない!ギゼル!!」
「だから詳しくは、って、やめろ、火はやめろ、セーユ殿!!」
茶会の準備が台無しになるだろ!!
あああもおぉおお!!
===============
過去ばなしが思いの外長くなりすみません。
7/19から本編再開します。
もう少々お付き合い頂けますと幸いです。
なんだ、その、あー……
…………。
そう、身体検査!
身体検査の後、メルバが言った。
「ギゼル、リブリー陛下が今度寮の視察に来るんだって」
「へ、え~…」
あー、マズい。
壊すの勿体なくて、共同浴場を取り込む設計に変更しちゃったんだよな…
今やカリーナ様のボイトレルームみたいになってるけど。
「それで、ナヴェント公も娘の様子を見に来るって」
「うん、そうか」
良かった。
あの人なら、風呂の事を擁護してくれそう…
なんせ娘のお気に入りの場所だし。
だが、やれやれ…なんて気を抜いた俺にメルバが告げた。
「だから、簡素なお茶会でも開こうかって」
「は?」
待て、そんな洒落た事出来るような施設はここに無いぞ。
確かに無駄にデカイ食堂はあるが小洒落たテーブルセットは無いし、ティーカップも無い。
今からどうにかして調達するには…うーん。
「大丈夫、必要なものは王宮から運んでくるよ」
「それは良かった」
じゃあ俺のやることはほとんど無いな。
当日は隅でじっとしてればいい…
と、思っていた時があったとさ。
***
それから暫く、視察&茶会の日。
前日から荷物の搬入と準備、足りない設備の増設…
俺もメルバも夜遅くまで準備に駆り出されていたので、久々に「身体検査」無しで寝て準備万端…
は、良いんだが。
「ギゼル、ここの壁はどのくらいの厚みが?大槌でぶっ叩いても平気か?窓ガラスは当然二重で魔法による強化も行われているよな?扉は鉄板がちゃんと入っているか?娘に不審な輩は近づいてきていないか?好きな男が出来た様子は?」
「……」
…「海の公爵」と呼ばれる男、セーユ・ナヴェント。
娘が「したい」という挑戦の全てを支援し、決してNOと言わない度量ある父…
というのは、娘にカッコいい所を見せたい彼のやせ我慢。
本来は娘が心配で、夜も眠れない父親…
「ギゼル、間違いは無いよな?
もし何かが起きたら私はお前を八つ裂きにせねばならん、答えろ」
「……」
小さな声で、それでいて威圧的な声で俺に尋問するかのような質問を投げかけるナヴェント公。
仕方なく、俺は出来るだけ丁寧に答える。
「壁の厚みは外壁30、内壁20。
全ての壁に対物理・対魔法耐性上昇の魔力集積回路を内蔵させ、扉も同様の処置をした。大槌どころか破城槌でも耐えられる仕様だ。
不審な輩は全てゴーレムが排除している。
好意を寄せる男性は…分かりかねる」
「…いるかいないかも分らんのか」
「左様だ」
ナヴェント公は俺に鋭い眼光を向けた。
まるで何かを見透かそうとしている様…だが「紅の王」と「洋上の薔薇姫」の恋愛をここで知られるわけには…。
「ギゼル…貴様、知っているな」
「いえ、ぞんじませ「存じておる!誰だ、言え。さもなくば貴様の首を折る」
「じゃあ『折れるものなら』と返すしか無いな」
「意地でも言わんつもりか?」
俺はナヴェント公と睨み合い、言わないという立場を貫こうと…
と、そこへ。
「なあメルバ…このピアス、変じゃないか?」
「だから変な事はありませんって」
遠くから2人の声が…
「でもでも、リブリー陛下の瞳は…」
「昨日も言ったでしょう、まだ周囲には秘…あ」
……最悪。
こいつら最悪。
「…どういう事か、聞かせてもらおうか?」
「い、いやぁ、俺も今知ったとこ…ははは」
「嘘をつくんじゃない!ギゼル!!」
「だから詳しくは、って、やめろ、火はやめろ、セーユ殿!!」
茶会の準備が台無しになるだろ!!
あああもおぉおお!!
===============
過去ばなしが思いの外長くなりすみません。
7/19から本編再開します。
もう少々お付き合い頂けますと幸いです。
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