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【過去ばなし】チート魔術師とチャラ男令息
こんやく
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その後、メルバは慌てて陛下を呼びに走り、俺とカリーナ様の2人で何とかナヴェント公を宥めすかし…
「清い交際なのだな?本当だな?」
「本当だってば!パパったらしつこいんだから…私だってもう16歳よ?いつまでも子どもじゃないの」
「こっ、こどもじゃないとは、どういう…」
「だからぁ…」
宥めすかし…
「まままさか、しょっ、しょっ、」
「処女だって言ってるでしょ!メルバと違って、殿下は紳士なの!」
「一言余計ですよカリーナ様?」
うん、宥めるというか…
何と言うか…
うん。
「か、カリーナ、その、き、き、き」
「…したらどうだって言うのよ」
「!!!」
「だから風も駄目だって!セーユ殿!!」
リブリー陛下が来るまで、俺はこの親子コントを見守る事になったのだった…。
***
…その後王様がやってきて、ナヴェント公と少々お話し合いの後、緊張のお茶会が始まった。
「セーユ殿、泣くなよ…」
「うっ、うっ、カリーナ…カリーナが…」
「良いじゃねえか、カリーナ王妃様。
これからのオーセンには女傑が必要だと思ってたんだ、俺は」
「まだおうひじゃないっ!!」
「ああ、すまん…だから泣くなって」
俺は予定通り隅っこで、予定外のお守りをしながら茶を飲む。
「ちくしょう、酒…」
「学園は飲酒禁止だ、セーユ殿」
「カリィナァ…俺の妖精…」
「そうだな、ドレスがとても似合ってる」
「あんな血も涙もない男からの贈り物っ…」
「いやそれほど冷血漢でも無いから」
何で俺がこんなとこで王様をフォローせにゃならんのだ。
何度も言うが、俺は…
「貴様もいつかこんな目に合えば分かる!
自分の大切な子どもが奪われる胸の痛みが…」
「…生きてんだからいいじゃねーか」
「生きているからこその痛みだ!…まさか王家に嫁ぐなんて、もうあと何度会えるか…っ!」
「いやいや、公爵様なんだからいつ王宮に来ても大丈夫だろ?
先触れさえ出しとけばさ」
ったく、ナヴェント公も俺の事はセーユと呼べ、とか言いやがって、妙に距離が近いもんだから勘違いしそうになるが、俺とこのオッサンの間にだって大きな「身分」という壁があるんだぞ。
なのにこの国の偉い連中には、何人か変わり者がいて…俺を友人のように扱うんだ。
「海と王宮の距離を知ってるだろ!?」
「空飛びゃすぐさ。後で飛行の魔法、教えるよ」
「何っ!?飛行だと!?」
「ああ、魔術塔でする事も無くてな、作った」
……自由になりたい。
魔術塔に入ってすぐ、そう思った。
だから作った。
出来上がった頃には、異能とやらでグズグズにされちまってたが…
「事故った時の対処法付きだぜ?」
「…ほう、それは有難いな」
今なら問題なく使えるし、教えられる。
「だが領地を放り出すわけには…
魔法が使える者は領主になってはならぬと言って、中央から新しいのが来たが…どうにもな」
「あんたなら港からここまで1日で飛べるさ、気合いだ気合い」
親が子を思う気持ちに、寄り添う力になれるような、そんな魔法があったって良い。
そうだろ、有翔。
「…そうか、それなら…悪くない」
「だろ?」
……
そんな事を思いながら、ナヴェント公の相手をしていると…突然。
「そうだ、皆に良き知らせがある」
王様が立ち上がって、言った。
「メルバ、行ってこい」
「はい」
メルバがこちらへやってくる。
緊張の面持ち。
嫌な予感がする!
俺は慌ててナヴェント公の背中に回って身を隠す。
「…なんだ急に」
「いいから!じっとしててくれ」
「…知らんぞ」
メルバはそのままナヴェント公の前に立ち、言う。
「セーユ・ナヴェント公爵様。
貴方がその背に守る魔術師殿に、これを」
背中からメルバの姿を覗う。
その手には小さな箱…こちらを向けて開けられた、小さな、箱。
やっぱり……!!
俺は怖くなってナヴェント公の背中に張り付く。
そんな俺を背中に庇ったまま、セーユ殿が言う。
「では問おう、メルバ・キャンディッシュ。
……本気だな?」
「勿論」
「その言葉に僅かでも嘘が混じる事あれば、貴様の命は無い。
それでもか」
「当然です、セーユ・ナヴェント公爵様」
静まり返った部屋の中、メルバの声が響く。
「愛しいギゼル。
僕と、結婚してください」
「清い交際なのだな?本当だな?」
「本当だってば!パパったらしつこいんだから…私だってもう16歳よ?いつまでも子どもじゃないの」
「こっ、こどもじゃないとは、どういう…」
「だからぁ…」
宥めすかし…
「まままさか、しょっ、しょっ、」
「処女だって言ってるでしょ!メルバと違って、殿下は紳士なの!」
「一言余計ですよカリーナ様?」
うん、宥めるというか…
何と言うか…
うん。
「か、カリーナ、その、き、き、き」
「…したらどうだって言うのよ」
「!!!」
「だから風も駄目だって!セーユ殿!!」
リブリー陛下が来るまで、俺はこの親子コントを見守る事になったのだった…。
***
…その後王様がやってきて、ナヴェント公と少々お話し合いの後、緊張のお茶会が始まった。
「セーユ殿、泣くなよ…」
「うっ、うっ、カリーナ…カリーナが…」
「良いじゃねえか、カリーナ王妃様。
これからのオーセンには女傑が必要だと思ってたんだ、俺は」
「まだおうひじゃないっ!!」
「ああ、すまん…だから泣くなって」
俺は予定通り隅っこで、予定外のお守りをしながら茶を飲む。
「ちくしょう、酒…」
「学園は飲酒禁止だ、セーユ殿」
「カリィナァ…俺の妖精…」
「そうだな、ドレスがとても似合ってる」
「あんな血も涙もない男からの贈り物っ…」
「いやそれほど冷血漢でも無いから」
何で俺がこんなとこで王様をフォローせにゃならんのだ。
何度も言うが、俺は…
「貴様もいつかこんな目に合えば分かる!
自分の大切な子どもが奪われる胸の痛みが…」
「…生きてんだからいいじゃねーか」
「生きているからこその痛みだ!…まさか王家に嫁ぐなんて、もうあと何度会えるか…っ!」
「いやいや、公爵様なんだからいつ王宮に来ても大丈夫だろ?
先触れさえ出しとけばさ」
ったく、ナヴェント公も俺の事はセーユと呼べ、とか言いやがって、妙に距離が近いもんだから勘違いしそうになるが、俺とこのオッサンの間にだって大きな「身分」という壁があるんだぞ。
なのにこの国の偉い連中には、何人か変わり者がいて…俺を友人のように扱うんだ。
「海と王宮の距離を知ってるだろ!?」
「空飛びゃすぐさ。後で飛行の魔法、教えるよ」
「何っ!?飛行だと!?」
「ああ、魔術塔でする事も無くてな、作った」
……自由になりたい。
魔術塔に入ってすぐ、そう思った。
だから作った。
出来上がった頃には、異能とやらでグズグズにされちまってたが…
「事故った時の対処法付きだぜ?」
「…ほう、それは有難いな」
今なら問題なく使えるし、教えられる。
「だが領地を放り出すわけには…
魔法が使える者は領主になってはならぬと言って、中央から新しいのが来たが…どうにもな」
「あんたなら港からここまで1日で飛べるさ、気合いだ気合い」
親が子を思う気持ちに、寄り添う力になれるような、そんな魔法があったって良い。
そうだろ、有翔。
「…そうか、それなら…悪くない」
「だろ?」
……
そんな事を思いながら、ナヴェント公の相手をしていると…突然。
「そうだ、皆に良き知らせがある」
王様が立ち上がって、言った。
「メルバ、行ってこい」
「はい」
メルバがこちらへやってくる。
緊張の面持ち。
嫌な予感がする!
俺は慌ててナヴェント公の背中に回って身を隠す。
「…なんだ急に」
「いいから!じっとしててくれ」
「…知らんぞ」
メルバはそのままナヴェント公の前に立ち、言う。
「セーユ・ナヴェント公爵様。
貴方がその背に守る魔術師殿に、これを」
背中からメルバの姿を覗う。
その手には小さな箱…こちらを向けて開けられた、小さな、箱。
やっぱり……!!
俺は怖くなってナヴェント公の背中に張り付く。
そんな俺を背中に庇ったまま、セーユ殿が言う。
「では問おう、メルバ・キャンディッシュ。
……本気だな?」
「勿論」
「その言葉に僅かでも嘘が混じる事あれば、貴様の命は無い。
それでもか」
「当然です、セーユ・ナヴェント公爵様」
静まり返った部屋の中、メルバの声が響く。
「愛しいギゼル。
僕と、結婚してください」
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