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【過去ばなし】チート魔術師とチャラ男令息
緊張の糸
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どうしよう、涙が止まらない。
「おい、ギゼル!…どうした」
「ああすまん…最近ちょっと、元気が無いんだわ」
「…魔術塔が辛いのか?それとも学園で…」
「何かされたのか?嫌がらせとか」
「ああ、いや、違う、そんなもんじゃ…」
皆が心配するじゃないか、何か良い返しを考えなきゃ…
そんな事を必死で考えていると、突然、背後から、
「どうしたの、ギゼル殿?」
メルバ殿が俺に声を掛けてきた。
今振り向くと…やばい。
「いや、何でも」
俺は振り返らずにただそう言ったが、メルバは俺の前に回り込んで、顔を覗き込んで…
「泣いてるの?」
「戦友に会えたのが嬉しすぎただけですよ」
頼む、適当に誤魔化されてくれ…
あんな言葉をぶつけてしまった相手に、涙の意味を知られたくない。
だけど、メルバは優雅に見える強引さで俺の手を引いた。
「あっちに休憩室があるから、行こう。
皆様、私の弟をお願いしても宜しいでしょうか」
「ああそりゃ、別に、構わねー…です」
「有難うご御座います…トリル、頑張ってね。
ギゼル殿、参りましょう」
メルバは俺の手をとり、エスコートするように会場から俺を連れ出した。
***
「…涙、止まった?」
「はい…お見苦しい所を晒して、すみません」
「見苦しいだなんて、そんな」
「…これでも自称36歳ですからね」
見た目は若いが、中身はおっさんだ。
いい歳した初老のおっさん。
「その、自称って何なの?
あ、聞いても良ければ、だけど」
「…本来の年齢では騎士団に同行できませんから。
問題児の寄せ集め集団でも、騎士団は騎士団だからという事で、前の団長にお気遣い頂きました」
そう、騎士団に入れるのは18歳から。
魔術塔に入れるのも18歳から。
基本貴族の子弟しか就けない仕事は、18歳からだ。
その規則は平民でも守らなきゃならない。
「貴族は子どもを働かせない…良い事です」
「そう?貴族にも良いところがあったんだ」
「本来、誰もが子どもを18歳まで養えるだけの余裕を持って生活できる世界が理想でしょう?」
…それが普通になると良い。
子どもが働かなければならない世界では、貧乏人と金持ちの差が開く一方だ。
「貴族が羨ましければ、努力して貴族になればいい…と言える世の中になれば、いい…のですが…」
努力が報われる社会であって欲しい。
前世でも…まあ、理不尽な事は沢山…あったけど。
この世界じゃ、努力する事すら許されないから。
「それに、何処かに、私と同じ様に、平民でも、魔法を使える人が…まだ、どこかに…
だから俺は…、探さなきゃ、ならない」
そうすれば…死んだ息子の生まれ変わりが、見つかるかもしれない。会えばきっと…すぐに、分かる。
「…ギゼル殿?」
「すみません、最近…涙腺が緩くてね、歳かな」
最近息子の事を少しでも考えると…涙が、出る。
前世で息子が、自分のミスで死んだのを、誰にもまだ言えていなくて…思考が堂々巡りして、居ない息子の影を…求めて、こんな…
ぽろぽろと涙が出る。
情けない、俺は…前を向くと、死んだ嫁にも…
「……ギゼル殿」
「っ!」
不意に抱きしめられて、驚く。
メルバの胸の中にすっぽりと収まる俺。
小さい、俺の…体、転生したせいで…この世界に。
どうして俺だったんだ。
どうして有翔じゃないんだ。
俺はもう、充分に生きた、息子はこれから…これから、楽しい事がいっぱい、待って…、
「大丈夫…こうしていれば、誰にも見えない」
「……メルバ殿」
「ギゼル殿は頑張り過ぎたんだ、辛いことも沢山あったのに、多くの人たちを守るために、厳しい戦いを幾つもしてきた…」
「……っ」
「僕たちは騎士に、親にも守られて…何処か他人事のように、この災害を捉えて、君を英雄に祀り上げて、それで何かをした気になってた…」
「……ですが、それが……政治……ですから」
仕方ない、仕方ないと言い続け…
考える時間が出来た所為で、あの時もう少し早く出ていれば、あの時あの道を通らなければ、無駄な反省を繰り返し、何故ここに有翔が…と…
「民を守る為の貴族なら、守られても仕方ない。
だけど、民を苦しめるだけの貴族ならいらない」
「…メルバ、殿、」
「僕と、リブリーで、やる。
必ずやるよ。
その為に色々と遊んで、情報を集めてたんだ」
「……うん」
「ギゼルの悲しみは、僕には想像もつかない。
だけど泣いてる姿を隠すことなら出来る」
「……うん……」
メルバは、俺が泣き止むまで抱きしめ続けた。
メルバの体温が、明け方に子どもたちと身を寄せ合ったあの時のように、俺の眠気を誘う……
「おい、ギゼル!…どうした」
「ああすまん…最近ちょっと、元気が無いんだわ」
「…魔術塔が辛いのか?それとも学園で…」
「何かされたのか?嫌がらせとか」
「ああ、いや、違う、そんなもんじゃ…」
皆が心配するじゃないか、何か良い返しを考えなきゃ…
そんな事を必死で考えていると、突然、背後から、
「どうしたの、ギゼル殿?」
メルバ殿が俺に声を掛けてきた。
今振り向くと…やばい。
「いや、何でも」
俺は振り返らずにただそう言ったが、メルバは俺の前に回り込んで、顔を覗き込んで…
「泣いてるの?」
「戦友に会えたのが嬉しすぎただけですよ」
頼む、適当に誤魔化されてくれ…
あんな言葉をぶつけてしまった相手に、涙の意味を知られたくない。
だけど、メルバは優雅に見える強引さで俺の手を引いた。
「あっちに休憩室があるから、行こう。
皆様、私の弟をお願いしても宜しいでしょうか」
「ああそりゃ、別に、構わねー…です」
「有難うご御座います…トリル、頑張ってね。
ギゼル殿、参りましょう」
メルバは俺の手をとり、エスコートするように会場から俺を連れ出した。
***
「…涙、止まった?」
「はい…お見苦しい所を晒して、すみません」
「見苦しいだなんて、そんな」
「…これでも自称36歳ですからね」
見た目は若いが、中身はおっさんだ。
いい歳した初老のおっさん。
「その、自称って何なの?
あ、聞いても良ければ、だけど」
「…本来の年齢では騎士団に同行できませんから。
問題児の寄せ集め集団でも、騎士団は騎士団だからという事で、前の団長にお気遣い頂きました」
そう、騎士団に入れるのは18歳から。
魔術塔に入れるのも18歳から。
基本貴族の子弟しか就けない仕事は、18歳からだ。
その規則は平民でも守らなきゃならない。
「貴族は子どもを働かせない…良い事です」
「そう?貴族にも良いところがあったんだ」
「本来、誰もが子どもを18歳まで養えるだけの余裕を持って生活できる世界が理想でしょう?」
…それが普通になると良い。
子どもが働かなければならない世界では、貧乏人と金持ちの差が開く一方だ。
「貴族が羨ましければ、努力して貴族になればいい…と言える世の中になれば、いい…のですが…」
努力が報われる社会であって欲しい。
前世でも…まあ、理不尽な事は沢山…あったけど。
この世界じゃ、努力する事すら許されないから。
「それに、何処かに、私と同じ様に、平民でも、魔法を使える人が…まだ、どこかに…
だから俺は…、探さなきゃ、ならない」
そうすれば…死んだ息子の生まれ変わりが、見つかるかもしれない。会えばきっと…すぐに、分かる。
「…ギゼル殿?」
「すみません、最近…涙腺が緩くてね、歳かな」
最近息子の事を少しでも考えると…涙が、出る。
前世で息子が、自分のミスで死んだのを、誰にもまだ言えていなくて…思考が堂々巡りして、居ない息子の影を…求めて、こんな…
ぽろぽろと涙が出る。
情けない、俺は…前を向くと、死んだ嫁にも…
「……ギゼル殿」
「っ!」
不意に抱きしめられて、驚く。
メルバの胸の中にすっぽりと収まる俺。
小さい、俺の…体、転生したせいで…この世界に。
どうして俺だったんだ。
どうして有翔じゃないんだ。
俺はもう、充分に生きた、息子はこれから…これから、楽しい事がいっぱい、待って…、
「大丈夫…こうしていれば、誰にも見えない」
「……メルバ殿」
「ギゼル殿は頑張り過ぎたんだ、辛いことも沢山あったのに、多くの人たちを守るために、厳しい戦いを幾つもしてきた…」
「……っ」
「僕たちは騎士に、親にも守られて…何処か他人事のように、この災害を捉えて、君を英雄に祀り上げて、それで何かをした気になってた…」
「……ですが、それが……政治……ですから」
仕方ない、仕方ないと言い続け…
考える時間が出来た所為で、あの時もう少し早く出ていれば、あの時あの道を通らなければ、無駄な反省を繰り返し、何故ここに有翔が…と…
「民を守る為の貴族なら、守られても仕方ない。
だけど、民を苦しめるだけの貴族ならいらない」
「…メルバ、殿、」
「僕と、リブリーで、やる。
必ずやるよ。
その為に色々と遊んで、情報を集めてたんだ」
「……うん」
「ギゼルの悲しみは、僕には想像もつかない。
だけど泣いてる姿を隠すことなら出来る」
「……うん……」
メルバは、俺が泣き止むまで抱きしめ続けた。
メルバの体温が、明け方に子どもたちと身を寄せ合ったあの時のように、俺の眠気を誘う……
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