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ざまぁなど知らぬ!
ラスト1年の新生活
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翌日、荷物をまとめてセジュールと一緒に学生寮に向かうと、俺とセジュールの部屋が一つとダリル様の部屋が一つ用意されていた。
メルバ父さんが事もあろうに国王陛下に話をねじ込んで、同棲という事態は回避されたのだが…
当然ダリル様は不機嫌だ。
「…何でこうなるんだ」
「仕方ないですね!
ギゼル父様が婚前に同棲するなんて駄目って仰ってますし~」
「…あの、お堅い大魔術師め…!!」
どうやら親父の言う事は絶対らしい。
さすが大魔術師、国家さえ黙らせる圧倒的火力…!
「まあいい、入ってしまえばこっちのものだ」
「何を不穏当な事言ってるんですかダリル殿下」
「うるさい小舅だな」
「まだ小舅ではありませんよ、殿下?
結婚してないうちから旦那様顔もお止め頂きたく」
こっちはこっちでバッチバチ…
この生活、不安しかないんだけど!!
***
引っ越しの荷物を片付けていると、さっそくサリュール先輩が遊びに来た。
「学生寮、今日から?
いっぱいお話できるね、ロンバード」
「はい、宜しくお願いします、サリュール先輩」
折角なのでお茶でも振舞おうと、ポットとカップを出す。
「茶葉、どこだっけ」
「ここですよお兄様」
「おー、ありがと!」
面倒なのでポットに直接茶葉を入れる。
「えーと、お湯…」
これまた面倒なので、ポットに魔法で湯を入れる。
するとそれを見ていたサリュール先輩が言う。
「すごいね!お湯、何もない所から出る」
「ああ、これは魔法で…」
「これも魔法…素晴らしいな。
この魔法を是非、私にも教えて貰いたいのだが」
「え、ああ…これはですね、空気中の水分を魔力で固めて水にして沸かしてるんです」
「先だっての腕輪のように、道具で出来るようにならないのか?」
「えっ、道具で?
うーん…どうかな、魔力集積回路変換しようと思った事なくて…あーでも攻撃魔法系の理論…」
「お兄様っ!」
「え、何、セジュー…る」
セジュールは怖い顔をしている。
対するサリュール先輩はニコニコ顔だ。
…もしかして、何か問題、ある?
「…お茶、もう、抽出が終わってますよ」
「お、ああ…そっか、ありがと」
俺はお茶をカップに注ぎ、サリュール先輩にお出しする。
うーん、問題…問題…あっ。
「…サリュール先輩の国は大きな砂漠がありますから、ちょっと難しいかな…」
「そっか、残念ね」
「そうですね…サラシナ国の半分でも湿気が」
「お兄様っ」
「あ、うん、すみません先輩…」
余計な事を言ってしまった。
サラシナ国の湿気を持って来るなんて、そんな事出来る訳ないのに…ん?
出来なくは無いのか?
サラシナのブレスレットは、湿気を水にして容器に溜める方式で…だからその水を、このポケット…
「…お兄様!!」
「はっ!あ、何、セジュール」
「アブル・サリュール殿下のおもてなしは僕が。
お兄様はダリル殿下のお部屋へ行って差し上げてください」
「あ、うん、わかった」
良く分かんないけど、セジュールがそういうからには何か意味があるんだろう…。
俺はそういうの疎くて良く分かんないけど。
「じゃ、サリュール先輩、ごゆっくり」
「ああまた今度、話、二人きりで」
「いや二人きりは、ちょっと…」
「……だめ?」
「…えっ…と…ぉ…」
サリュール先輩が俺の事をじっと見つめる。
断れなさげな雰囲気に俺が頷きかけると、セジュールがまた言う。
「駄目に決まっています。
婚約者のある者を軽々しく誘うのはお止めください」
「おー怖い怖い、弟、やきもち焼きね」
そう言ってサリュール先輩はカップを傾け、お茶を一口。
その姿に、微笑みを浮かべたセジュールがはっきりとした口調で言う。
「何とでも思って頂いて結構。
この国の是は永世中立、どこか一つに肩入れするわけには参りませんからね」
「!?」
えっ、これ、まさか外交…ってやつなの!?
いやでも、別に困ってる人を助けるのに国籍とか関係ないんじゃ…
俺が固まっていると、サリュール先輩は堂々たる微笑みを浮かべてセジュールに言った。
「だがこの話、我がサリルだけでは無くサラシナにも利益がありそうではないか?
…まあ、今日のところは引き下がろう。
近々寮生全員参加の晩餐会がある。
そこで前向きな返答がある事を祈っているよ…
ロンバード」
「ふへっ!?」
サリュール先輩はお茶を飲み干して出て行った。
セジュールは深呼吸をすると、俺の顔を見た。
「…セジュール、なんて頼もしい…」
「良いんです、お兄様は優しすぎてこういう事には不向きだと、分かっていますから」
「でも…」
情けない。
3歳も年下の弟に助けられてしまった。
…俺、こんなんじゃ、やっぱり…。
「その、セジュールが、ダリル様とけっこん…」
「いえ、お兄様の側近として登用下さる様、ダリル殿下におねだりして頂ければ」
「えっでも領地は?」
俺がそう言うと、セジュールは大きく目を見開いて、そして、ちょっと間を置いて、言った。
「お兄様から、領地という言葉を聞くなんて…」
なっ…なんだと?
そ、そこまで馬鹿じゃねーし!!
ふん!
メルバ父さんが事もあろうに国王陛下に話をねじ込んで、同棲という事態は回避されたのだが…
当然ダリル様は不機嫌だ。
「…何でこうなるんだ」
「仕方ないですね!
ギゼル父様が婚前に同棲するなんて駄目って仰ってますし~」
「…あの、お堅い大魔術師め…!!」
どうやら親父の言う事は絶対らしい。
さすが大魔術師、国家さえ黙らせる圧倒的火力…!
「まあいい、入ってしまえばこっちのものだ」
「何を不穏当な事言ってるんですかダリル殿下」
「うるさい小舅だな」
「まだ小舅ではありませんよ、殿下?
結婚してないうちから旦那様顔もお止め頂きたく」
こっちはこっちでバッチバチ…
この生活、不安しかないんだけど!!
***
引っ越しの荷物を片付けていると、さっそくサリュール先輩が遊びに来た。
「学生寮、今日から?
いっぱいお話できるね、ロンバード」
「はい、宜しくお願いします、サリュール先輩」
折角なのでお茶でも振舞おうと、ポットとカップを出す。
「茶葉、どこだっけ」
「ここですよお兄様」
「おー、ありがと!」
面倒なのでポットに直接茶葉を入れる。
「えーと、お湯…」
これまた面倒なので、ポットに魔法で湯を入れる。
するとそれを見ていたサリュール先輩が言う。
「すごいね!お湯、何もない所から出る」
「ああ、これは魔法で…」
「これも魔法…素晴らしいな。
この魔法を是非、私にも教えて貰いたいのだが」
「え、ああ…これはですね、空気中の水分を魔力で固めて水にして沸かしてるんです」
「先だっての腕輪のように、道具で出来るようにならないのか?」
「えっ、道具で?
うーん…どうかな、魔力集積回路変換しようと思った事なくて…あーでも攻撃魔法系の理論…」
「お兄様っ!」
「え、何、セジュー…る」
セジュールは怖い顔をしている。
対するサリュール先輩はニコニコ顔だ。
…もしかして、何か問題、ある?
「…お茶、もう、抽出が終わってますよ」
「お、ああ…そっか、ありがと」
俺はお茶をカップに注ぎ、サリュール先輩にお出しする。
うーん、問題…問題…あっ。
「…サリュール先輩の国は大きな砂漠がありますから、ちょっと難しいかな…」
「そっか、残念ね」
「そうですね…サラシナ国の半分でも湿気が」
「お兄様っ」
「あ、うん、すみません先輩…」
余計な事を言ってしまった。
サラシナ国の湿気を持って来るなんて、そんな事出来る訳ないのに…ん?
出来なくは無いのか?
サラシナのブレスレットは、湿気を水にして容器に溜める方式で…だからその水を、このポケット…
「…お兄様!!」
「はっ!あ、何、セジュール」
「アブル・サリュール殿下のおもてなしは僕が。
お兄様はダリル殿下のお部屋へ行って差し上げてください」
「あ、うん、わかった」
良く分かんないけど、セジュールがそういうからには何か意味があるんだろう…。
俺はそういうの疎くて良く分かんないけど。
「じゃ、サリュール先輩、ごゆっくり」
「ああまた今度、話、二人きりで」
「いや二人きりは、ちょっと…」
「……だめ?」
「…えっ…と…ぉ…」
サリュール先輩が俺の事をじっと見つめる。
断れなさげな雰囲気に俺が頷きかけると、セジュールがまた言う。
「駄目に決まっています。
婚約者のある者を軽々しく誘うのはお止めください」
「おー怖い怖い、弟、やきもち焼きね」
そう言ってサリュール先輩はカップを傾け、お茶を一口。
その姿に、微笑みを浮かべたセジュールがはっきりとした口調で言う。
「何とでも思って頂いて結構。
この国の是は永世中立、どこか一つに肩入れするわけには参りませんからね」
「!?」
えっ、これ、まさか外交…ってやつなの!?
いやでも、別に困ってる人を助けるのに国籍とか関係ないんじゃ…
俺が固まっていると、サリュール先輩は堂々たる微笑みを浮かべてセジュールに言った。
「だがこの話、我がサリルだけでは無くサラシナにも利益がありそうではないか?
…まあ、今日のところは引き下がろう。
近々寮生全員参加の晩餐会がある。
そこで前向きな返答がある事を祈っているよ…
ロンバード」
「ふへっ!?」
サリュール先輩はお茶を飲み干して出て行った。
セジュールは深呼吸をすると、俺の顔を見た。
「…セジュール、なんて頼もしい…」
「良いんです、お兄様は優しすぎてこういう事には不向きだと、分かっていますから」
「でも…」
情けない。
3歳も年下の弟に助けられてしまった。
…俺、こんなんじゃ、やっぱり…。
「その、セジュールが、ダリル様とけっこん…」
「いえ、お兄様の側近として登用下さる様、ダリル殿下におねだりして頂ければ」
「えっでも領地は?」
俺がそう言うと、セジュールは大きく目を見開いて、そして、ちょっと間を置いて、言った。
「お兄様から、領地という言葉を聞くなんて…」
なっ…なんだと?
そ、そこまで馬鹿じゃねーし!!
ふん!
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