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ざまぁしやがれください!
諦めの悪い男
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王宮から家に戻ったのは夜、夕飯後。
「ただいま…」
昼飯から夕飯の間にも色々あって、帰りの馬車の中でも色々あって、もう親父の顔が見れない…
「おかえり、ロンバード」
と思っていたら、出迎えてくれたのはメルバ父さんだけだった。
そういえば親父、今日は泊りって言ってたっけ?
「ダリル殿下との仲が進展したようで何よりだ。
おめでとう、ロンバード」
「ま、まだそこまでじゃなくて」
「はは、順調そうで安心したよ」
「…メルバ父様…」
メルバ父さんは嬉しそうだ。
何となく理由は分かる。
親父が俺の事を構うのに嫉妬してるから。
複雑な気分のまま、俺はメルバ父さんの言葉を聞いた。
「ロンバード、お前はダリル殿下の伴侶になるべきだ、分かるね」
はっきりと、有無を言わさない口調。
それが当然、それが最善、だから文句を言わず嫁ぎなさい…と、いうことだろう。
「でも……」
「でも、じゃないんだよ。
お前がギゼルの為に人探しの旅へ出ようとしているのは分かってる。それが前世でギゼルの伴侶だった女の生まれ変わりだって事もね」
メルバ父さんは冷たい顔で喋る。
それは親父にも見せた事の無い顔だろう。
「お前が前世でもギゼルの息子だったのも知ってる。
そして、私は赤の他人だった事も。
だけど今この人生で、ギゼルは私と番った。心の中にいた誰かを押しのけて、私は今ここにいる…ギゼルの、横にね。
余計な事はして欲しくない。
ようやく手に入れた人を、知らない他人に横取りされるなんて、冗談じゃない!」
メルバ父さんは親父を心から愛している。
今も愛を隠さず全部伝えようとしている。
それは子どもでも分かるくらい分かりやすい。
「父さん……」
一方、親父から父さんへの愛は分かりにくい。
「好き」も「愛してる」も言わないから。
だけど、俺には分かるんだ。
親父との付き合いは、俺も長い方だから。
「……分かってるよ、メルバ父さん。
でも、これだけは言わせて欲しい」
「何をだい」
「親父は間違いなく、メルバ父さんを愛してる」
すると、メルバ父さんは一瞬嬉しそうな顔になり…すぐに冷たい顔に戻った。
あんまり信用してない感じ…
ま、信用が無いのは今更だけどな。
俺はもう少し信用させるために、話を続ける。
「そもそも、親父が転移魔法を作ったのはさ、メルバ父さんとの時間を増やすためだよ。
家と魔術塔の往復で、空を飛ぶ時間も惜しくなって、転移魔法を作ろうと思った…
俺のこのポケットは、それをヒントに作った」
「…ぽけっと…?」
「このポケットには魔法が仕込んである。
小さなトランク1つ分程度の物が入るように、この中に魔力集積回路を仕込んである」
このポケットは、物を2次元にたたんで仕舞い込む。
出す時に3次元に戻る。
入れるのが物質だから出来る荒業だ。
「親父のしようとしてるのは、これより遥か上。
このポケットを作るとき、親父の仕事を見たよ。
とてつもない量だった」
紙と紙の端っこは、広げていると距離があるけどたたむとくっつく。
転移魔法の理論の始まりは、そういう事。
だけど生き物は物質じゃなくて「命」っていうものを持ってる。
その「命」を安全に扱う為には…次元の数は4どころじゃ足りない。
「このポケットより数百倍難しい演算と、超絶に複雑な魔力集積回路が必要になる。
俺の生まれる前からずっと考えてたはずだ。
だから転移魔法の話を、俺より先にメルバ父さんにしたんだろ」
「…!!」
PCの無い世界で、その演算がどれだけ大変か!
吐きそうなレベルの計算が馬鹿みたいに…
正直、俺は考えるのも嫌。
それでも親父が頑張れたのは、愛があるから…
愛があったから、だと思うんだ。
「親父はさ、前世で母さんが幸せだったのか、今も幸せなのか知りたいだけなんだ。
だって生まれ変わった母さんにも、今の人生があるだろ?それを壊してまで何かしようとかは無いよ。幸せであって欲しいのにさ…
って、そもそも母さんがこの世界に生まれ変わった可能性自体低いんだけどね!
女の人が少なすぎるからさ」
俺は笑った。
メルバ父さんは笑うのに失敗した。
ちょっと心に響いてる…そんな気がした。
俺はメルバ父さんに言う。
結婚に自分を押し込められたくない。
それを分かって欲しいから。
「でも、俺、人探しは別にして、一人旅するのはずっと前から夢だったんだ。
この世界は広いんだぞ、って体感したいの。
それで、この世界に俺は一人しかいないんだぞって感じたいの。
そりゃ俺だって母さんに会いたいけど…そこから先にどうこうしたいわけじゃないよ、俺も」
俺は言うだけの事は言った。
今日はもう部屋で寝よう。
昨日の夢がアレだったもんで、寝た気がしないんだ…
「待って、ロンバード!」
「何?」
「何で、ギゼルが私の事を愛していると、」
「さっき散々言ったでしょ?
ま、一番分かりやすいのは…転移魔法の初実験で物を飛ばした先が、父さんとの寝室だってことかな」
「!?」
「何か、急に物が増えたりしなかった?
探してみてよ。親父、自分で送ったのにどこ行ったか見つけらんないんだってさ」
「わ、かっ、った…」
…多分、メルバ父さんが先に見つけて、どっか隠したんだと思うんだ。
事もあろうに指輪を送ったそうだから…
ったく自分で渡しなさいよ、自分で!
勘違いの元でしょうが!
「ただいま…」
昼飯から夕飯の間にも色々あって、帰りの馬車の中でも色々あって、もう親父の顔が見れない…
「おかえり、ロンバード」
と思っていたら、出迎えてくれたのはメルバ父さんだけだった。
そういえば親父、今日は泊りって言ってたっけ?
「ダリル殿下との仲が進展したようで何よりだ。
おめでとう、ロンバード」
「ま、まだそこまでじゃなくて」
「はは、順調そうで安心したよ」
「…メルバ父様…」
メルバ父さんは嬉しそうだ。
何となく理由は分かる。
親父が俺の事を構うのに嫉妬してるから。
複雑な気分のまま、俺はメルバ父さんの言葉を聞いた。
「ロンバード、お前はダリル殿下の伴侶になるべきだ、分かるね」
はっきりと、有無を言わさない口調。
それが当然、それが最善、だから文句を言わず嫁ぎなさい…と、いうことだろう。
「でも……」
「でも、じゃないんだよ。
お前がギゼルの為に人探しの旅へ出ようとしているのは分かってる。それが前世でギゼルの伴侶だった女の生まれ変わりだって事もね」
メルバ父さんは冷たい顔で喋る。
それは親父にも見せた事の無い顔だろう。
「お前が前世でもギゼルの息子だったのも知ってる。
そして、私は赤の他人だった事も。
だけど今この人生で、ギゼルは私と番った。心の中にいた誰かを押しのけて、私は今ここにいる…ギゼルの、横にね。
余計な事はして欲しくない。
ようやく手に入れた人を、知らない他人に横取りされるなんて、冗談じゃない!」
メルバ父さんは親父を心から愛している。
今も愛を隠さず全部伝えようとしている。
それは子どもでも分かるくらい分かりやすい。
「父さん……」
一方、親父から父さんへの愛は分かりにくい。
「好き」も「愛してる」も言わないから。
だけど、俺には分かるんだ。
親父との付き合いは、俺も長い方だから。
「……分かってるよ、メルバ父さん。
でも、これだけは言わせて欲しい」
「何をだい」
「親父は間違いなく、メルバ父さんを愛してる」
すると、メルバ父さんは一瞬嬉しそうな顔になり…すぐに冷たい顔に戻った。
あんまり信用してない感じ…
ま、信用が無いのは今更だけどな。
俺はもう少し信用させるために、話を続ける。
「そもそも、親父が転移魔法を作ったのはさ、メルバ父さんとの時間を増やすためだよ。
家と魔術塔の往復で、空を飛ぶ時間も惜しくなって、転移魔法を作ろうと思った…
俺のこのポケットは、それをヒントに作った」
「…ぽけっと…?」
「このポケットには魔法が仕込んである。
小さなトランク1つ分程度の物が入るように、この中に魔力集積回路を仕込んである」
このポケットは、物を2次元にたたんで仕舞い込む。
出す時に3次元に戻る。
入れるのが物質だから出来る荒業だ。
「親父のしようとしてるのは、これより遥か上。
このポケットを作るとき、親父の仕事を見たよ。
とてつもない量だった」
紙と紙の端っこは、広げていると距離があるけどたたむとくっつく。
転移魔法の理論の始まりは、そういう事。
だけど生き物は物質じゃなくて「命」っていうものを持ってる。
その「命」を安全に扱う為には…次元の数は4どころじゃ足りない。
「このポケットより数百倍難しい演算と、超絶に複雑な魔力集積回路が必要になる。
俺の生まれる前からずっと考えてたはずだ。
だから転移魔法の話を、俺より先にメルバ父さんにしたんだろ」
「…!!」
PCの無い世界で、その演算がどれだけ大変か!
吐きそうなレベルの計算が馬鹿みたいに…
正直、俺は考えるのも嫌。
それでも親父が頑張れたのは、愛があるから…
愛があったから、だと思うんだ。
「親父はさ、前世で母さんが幸せだったのか、今も幸せなのか知りたいだけなんだ。
だって生まれ変わった母さんにも、今の人生があるだろ?それを壊してまで何かしようとかは無いよ。幸せであって欲しいのにさ…
って、そもそも母さんがこの世界に生まれ変わった可能性自体低いんだけどね!
女の人が少なすぎるからさ」
俺は笑った。
メルバ父さんは笑うのに失敗した。
ちょっと心に響いてる…そんな気がした。
俺はメルバ父さんに言う。
結婚に自分を押し込められたくない。
それを分かって欲しいから。
「でも、俺、人探しは別にして、一人旅するのはずっと前から夢だったんだ。
この世界は広いんだぞ、って体感したいの。
それで、この世界に俺は一人しかいないんだぞって感じたいの。
そりゃ俺だって母さんに会いたいけど…そこから先にどうこうしたいわけじゃないよ、俺も」
俺は言うだけの事は言った。
今日はもう部屋で寝よう。
昨日の夢がアレだったもんで、寝た気がしないんだ…
「待って、ロンバード!」
「何?」
「何で、ギゼルが私の事を愛していると、」
「さっき散々言ったでしょ?
ま、一番分かりやすいのは…転移魔法の初実験で物を飛ばした先が、父さんとの寝室だってことかな」
「!?」
「何か、急に物が増えたりしなかった?
探してみてよ。親父、自分で送ったのにどこ行ったか見つけらんないんだってさ」
「わ、かっ、った…」
…多分、メルバ父さんが先に見つけて、どっか隠したんだと思うんだ。
事もあろうに指輪を送ったそうだから…
ったく自分で渡しなさいよ、自分で!
勘違いの元でしょうが!
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