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ざまぁしやがれください!

【閑話】隠したものは ~メルバ父さん視点~

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「…、あった」

ある日、ベッドサイドのテーブルの下に落ちていた小さな箱。

指輪を入れるためだけの箱。

あの日、この箱を見つけた時、すぐにでも捨ててやろうと思った。
自分が贈ったものでないことは分かったし、自分のものでもなかったから。

もしかしたら、ギゼルがどこかから貰ってきたんじゃないのか、とか。
心の中にいる「大事な人」に、渡すつもりなんじゃないか、とか。

そう考えたら、腸が煮えくり返って…

でも思い直した。

問い詰めて泣かせてやろうと思ったから。
許して、って泣くギゼルを組み敷いて、一生許さないと言って、自分に縛り付けてやるって。
だから閉じ込めておく部屋を、準備して…
ロンバードが結婚して出て行ったら、すぐにでもそうするつもりだった。

「…指輪なんて、いつ以来だろう」

結婚する前に、お互い贈り合って、それだけだ。
石の魔力が仕事の邪魔になるから嵌められないって、だから…
それからは贈る事すら、出来なくて。

小箱を開けてみる。
綺麗な藍色…ギゼルの瞳の色。
自分の色を贈ってくるなんて、そんなロマンティックな事…いつもの彼には、似つかわしくなくて。

「…きれいだね」

早く聞けば良かった。
そうしたら、ロンバードの事も、もっとちゃんと考えてあげられたのに。

指輪を出して、嵌めてみる。
少し緩いかな、と思った瞬間に、丁度良いサイズまで締まった。
まるで自分の指に抱き着いたみたい…

「かわいい」

まるでギゼルみたい。
朝、少し冷えてくるとこんな風に、きゅっと抱き着いてくるんだ。

「…もしかして」

寝ぼけてると思ってたけど、本当はちゃんと起きてたのかな?
愛してるって、伝えてくれてたのかな。

きゅって。

私の事、好きだよって。
言うのは恥ずかしいって、いつも。
情事の最中にしか言わないから。
抱かないと愛が伝わらないと思ってた。

「ちゃんと、言ってくれれば良いのに」

だけど、そうだね。
君は愛してるって言葉が恥ずかしいんだよね。
好きって言葉が恥ずかしいんだよね。

最初に好きだと言ってくれた時の真っ赤な顔。
より真っ赤な顔。
可愛すぎて脳裏に焼き付いてるよ。

「この指輪をしていたら、どんな顔をするんだろう」

この為に、どれだけ頑張ったんだろう、ギゼル。
私が転移魔法に良い顔をしなかった事に、傷ついただろうな。
ごめんね、って謝って、いっぱい褒めよう。
頑張ったねって言おう。

「…それから、甘やかして、とろとろにしてあげる」

思いをぶつけるんじゃなくて、思いを受け止めて優しく包み込むようなセックスをしよう。
きもちいいことしかしない、そんなセックスを…

「ふふ、どんな顔するのか、楽しみ」

私は指輪に口づけた。
するとふいに声が聞こえた…

<あー、えっと、メルバ、愛してるよ>

…ここにいないギゼルの声だ。

「……えっ?」

…まさかね?
私はもう一度指輪に口づけた。

<あー、えっと、メルバ、愛してるよ>

…まさか!?なんて、すごい…!

「…なんて、素敵な指輪…!」

私は何度も口づけた。
指輪からはその度に、声が聞こえた。

<あー、えっと、メルバ、愛してるよ>

…と。

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