【完結】ざまぁは待ってちゃ始まらない!

紫蘇

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ざまぁしやがれください!

ちょっとだけ前世の話

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前世で虐められるようになったきっかけは、母親の死だった。

死因は…がん。
病院にかかった時には、手遅れだった。

それで、俺は片親になった。
それは中学3年の時の事だった。

あまりのショックで、俺は高校受験に失敗した。

本来余裕で受かるって言われてた高校に落ちて、その地方じゃ底辺って呼ばれる学校へ入った。
中学校の時の友だちはみんな、あの高校に通ってる子と遊ぶなって言われて逃げて行った。
そして、勉強が出来る方だった俺は…

クラスの連中から、宿題を押し付けられたりし始めた。
一人二人なら何とかなった。
でもクラス全員分なんか出来るわけがない。
出来ないと言ったら、次の日から「無能」呼ばわりが始まった。
嘘つき、愚図、役立たず、死ね…

先生に相談したら、お勉強しか出来ないんだからやるしかないねと嗤われた。

毎日泣きながら、同じプリントを何枚も何枚も、寝ないでやった。
そしたら親父が言った。

「学校なんて行かなくて良い、高校を辞めたって大学は受けられる」

って。
そうして親父は学校へ退学届を出しに行った。
すると教師が言ったそうだ。

「あなたが甘やかすから、根性無しの子が育つんですよ」

教師からしてみれば、自分のクラスから退学者が出るのは査定に響く事だったんだろう。
だから退学届は受理されず、毎日嫌がらせの様に教師が電話をかけてきた。

「ここで逃げるやつが、社会でやっていけると思うな」

着信拒否をしたら、今度は家まで来て『逃げるな、卑怯者』と罵り、親父の職場にまで電話をかけた。
だから親父は電話番号を変え、せっかく建てた家を売り、転職までしてくれた。

「徹底的に逃げれば良い、訴える事は出来ないけど…」

親父は申し訳なさそうにそう言って、俺の頭を撫でた。



虐められた話はそこで終わり。

引っ越した先ではそれなりの進学校に編入できた。
そこでは宿題を他人にやらせて楽をしようって思考の奴もいないし、何なら宿題を出して復習を促すような優しさも無かった。
だからみんな、俺の事なんてどうでも良かったんだと思う。
友だちは出来なかったけど、虐められる事もなかった。

それで良かった。
人付き合いは苦手になっていたし、誰とも関わらなくったって俺には趣味があった。

ものづくりだ。

死んだ母さんは手芸が趣味で、あれこれ手を出してた事もあって山ほど材料も本もあった。
…その本に混じって、当時流行りだった「悪役令嬢もの」の小説も出てきたわけだけど…。

まあ、それはさておき。

俺は本に載ってるやつじゃ飽き足らず、オリジナルで作品を作るようになった。
あれこれ設計を考えたり、どうやったら出来るか考えるのが楽しくて…
家に帰ったら勉強の合間にあれこれ作って、フリマサイトで売ってみたりした。
意外と売れて、小遣い程度にはなった。

そうしてちょっとだけ自分に自信をとりもどして…


んで、死んで、転生した。



転生先は転生前と違って天国だ。

友だちだっているし、何故か婚約者までいる。

そんなこの世界で、親父は新たに恋をして、メルバ父さんと結婚した。

そして俺がこの世に生まれた。

親父は、俺が前世の息子だと気づいた時、自分以外の人間も、この世界に転生している可能性に気が付いた。

今、親父は母さんを探そうとしている。
幸せになっているか、それだけ知りたいって。

ただ問題は、女性が異様に少なくて、母さんがこの国に転生している可能性は低そうだ、という事。
学園でも女の子といえば、セジュールの友だちのミリエッタちゃんくらいしか見た事ないしな。

だからバックパッカーになれれば、母さんを探しにも行けると思ったんだ。
親父の為に、母さんを探そうと思ったんだ。

俺を守ってくれた父さんだから。
いつか親孝行するって決めた相手だから。

「…だから、俺は旅に出るんだ」

ただ世界を見たいわけじゃない。
なるべく多くの人に会って、なるべく色んな話を聞いて…

母さんは幸せに暮らしてたよ、って、親父に話してあげたいんだ。

転生しているかどうかは、分からないけど…。
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