馬鹿でミーハーな女の添い寝フレンドになってしまった俺の話。

茜琉ぴーたん

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 週が明けて月曜日。
「ねー、モジャ、今日の夜ヒマ?映画観に行かない?」
「はぁ?なんでだよ」
「チケットあるんだけど、ドタキャンされたの…だめ?」
休憩室で遥は右手に弁当箱を、左手でVサインを作り長岡へアピールする。
「お前さぁ、……酷い扱いされ過ぎじゃねぇ?払い戻ししてもらえよ」
「んー…どうせ流行りの映画だし、観ておこうかなって…興味無い?これなんだけど」
 スマートフォンを操作して映画のプロモーションサイトを映す、それは特定の支持者に絶大な人気を誇るカーアクション大作の続編だった。
「マジか…」
「あんた、こういうの好きでしょ?特典でグッズもパンフも付いてくるし…」
「超好きだよ、全シリーズ観てるけど…んー…レイトショー?お前興味無いんだろ?」
作品自体は好きだが人混みが好きでない、長岡はディスクでじっくり車の細部を確認しながらひとりで楽しみたいタイプである。
 しかしてやはり大迫力のアクション映画はシアターで観てこそか。後々ディスクも買うとして、生の興奮を味わうのも悪くないと思った。
「うん、無いけどー…一緒に行ってくれるなら観てもいい」
「はぁ…じゃあ行くわ…どこ?現地集合でいいか?」
「モールのとこ。ここから乗せてって、夜の運転、好きじゃないの」
「はぁ…」
ドタキャンは可哀想だがわざわざ興味の無い映画を観に行くこともないだろうに、長岡は遥の様子に違和感を覚える。
 そういえば先日話していた街コンは既に終わっていると思うが結果は聞いていない。彼女の浮かない表情からするときっと満足できる収穫は無かったのだろう。
 前髪の分け目が違うからか化粧を変えたのか、笑ってはいるが元気がないというかどことなくいつもと違う、悲壮感が漂っていた。
「何か、話でもある?」
「え、なんで分かるの?」
「いや、わざわざ俺に声かけるとか…裏があるような気がするじゃん」
「んー…映画、観た後でもいい?」
「いいけど…この前言ってた街コンの話は?」
「それ、その街コンに関わること…アンタの好きそうな話だから…聞いてほしいの」
遥はよほど独りになりたくないのか、長岡が好む餌を身を切って提供する。
「ほー…いいね。お前の不幸話はその辺のメシより美味えからな」
「さいあくね」
「お前の男の趣味もな、じゃーな、終業後に」

 好きな映画に美味そうな不幸話、午後の仕事にも精が出せそうだ…長岡は目元を隠すように帽子を被り直してわらい、作業場へ戻った。
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