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しおりを挟む数日後。
昼休憩、たまたま隣に掛けた長岡へ遥はいつも通り話しかける。
「モジャ、聞いたぁ?秋花ちゃんと車崎さん、付き合ってるんだって♡」
「あー…やっぱり?守谷の顔が変わったと思ったわ」
「え、気付いてたの?すごい」
同僚の整備士同士が交際を始めていた、長岡は前々からなんとなく2人からそんな雰囲気は感じていたが、改めて耳にすると「ほぅ」という感想しか出なかった。元々が知り合いで学生時代からの仲、守谷をこの会社に紹介したのも車崎だと聞いているし収まるところに収まった、順当なところであろう。
「人間観察が好きなんだよ」
「ネクラねー…」
「てめぇみたいな馬鹿をウォッチして遊んでんだよっ」
「ひどーい」
今日の弁当はブロッコリーに卵焼きとタコさんウインナーを入れた彩りだけの飯、遥はフォークで器用に刺しては油のついたブロッコリーを口へ運ぶ。
「んで?ケルホイの男はその後どうよ」
「なーんにも?もういいの。新しい出会い見つけるんだー♡」
「はぁ、アグレッシブだな。だったらあんなに呑まなきゃ良かったのにな、」
あの夜もあっさり諦められていれば酔い潰れて同僚のモノを口に含んだりなどせずとも良かったのに。
もっとも酒で本性が暴かれただけで、あれを好きでやっているのなら止めはしないのだが、と長岡は思った。
「ちょっとぉ……内密にしてよぉ」
昼間だとそれなりに理性が働くのか遥は顔を赤くして恥ずかしがり、あの翌朝の風景を思い出したようにもじもじと下を向く。
「……」
「お、ハルカちゃん、今度駅前の商工会が街コンやるんだけど集まり悪くてさ、参加費負担するから来ない?商店街であんだよ、友達とか誘ってさ、」
「えー、気になる、いつですかぁ?…」
「……」
別の整備士に誘いをかけられて落ち込みもどこへやら、街コンの予約をするその表情に長岡は無性に…苛立ちを覚えた。
それは断じて嫉妬などではない。ドン底で踊る遥を見ていたかったのにすぐに垂らされた救いの糸に興醒めというか…邪魔するなよという心理が働いたのだ。
「……じゃあまた、……やった♡出会い♡」
「はぁ。懲りないねぇ…」
「もう騙されないって、ニックネームでいいんだし」
「絶対すぐにボロが出るよ、やめとけ」
綿密な計画を立ててもポロっと本名を漏らしたりするだろう。
馬鹿なんだから…と思いながら長岡は爪楊枝を齧る。
「そうかな、」
「ふん、失敗したらすぐ教えろよ。人の不幸ほど美味いアテはねぇからさ、」
「性格悪いのね」
「そうだよ、じゃあな」
さて何か面白い話でも聴けたら面白いな…長岡と遥は意図は違えど、楽しみにしながらその街コンの日を迎えたのだった。
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