先生、マグロは好きですか？

2019・浅春

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　近頃飛鳥あすかは出張が増えて、潤じゅんとのデートもなかなかできなくなっている。

　微妙な中距離なので自宅へ帰れないこともないのだが、せめて寝る時間に使って欲しいと潤も会うことを我慢していた。　

　そんなある日の夜、潤のスマートフォンに待望の恋人からの着信が入る。


『♪～♪～』

「もしもし、アスカ、」

『こんばんは、元気そうだね』

「元気…だけど元気じゃないよ、寂しい」

『落ち着いたら会えるから…ちゃんとご飯食べてる？』

「うん、出来合いのものばっかりだけど…お米だけはなんとか炊いてる」

『えっ！凄いじゃん…カビさせたりしてない？』

「なんとか…でも変に水っぽかったり芯が残ってたりするの。炊飯器が壊れてるのかな」

『たぶん壊れてはないよ…水加減がおかしいんだよ』

「ちゃんと計ってるんだけどねー」

『そっか……あのさ、ところで明日って休み？』

「ううん、仕事、」

『そっか、いや、いいの。…明日ね、前々から言ってたマンション、本契約するから…一応お知らせしておこうと思って』

「あ、そうなんだ、おめでとう」

『ありがと、それでさ、…居住者のとこ…ジュンちゃんの名前も書いていいかな？』

「え、住まわしてくれるの？」

『変な言い回しだな…つまりだよ、いよいよボクと同棲、しない？』

「す、する、したい！わぁ………あ、でも私、家事できない…」

『ふは、今更だよ…ボクが全部するよ。せっかくの我が城をジュンちゃんに灰にされたくないし。…まぁ、オール電化だから火は無いけどね、』

「むぅ」

『じゃあ…入居は５月頭くらいだから、ジュンちゃんのアパートは５月末退去とかで調整してもらえるかな、』

「うん、５月末、ね。家具とか…どれくらい持って行っていいかな？」

『６畳間ひと部屋使えるから、全部持って来ればいいよ。間取り図も今度送るね。…寝室は別だからね、ボクが遅かったりするから…安眠は保証するよ』

「ありがとう…でも遅く帰っても、顔見れるだけで…幸せ、」

『うん、ボクも幸せ。……じゃあ、そういうことだから…また詳しいことが決まり次第お知らせするね、今日はもう寝るよ。おやすみ、』

「うん、おやすみなさい、」

『プツッ…』

「わ、同棲……嬉しい……あ、でもアスカが帰ってきても美味しいご飯とか用意できない……片付けもアスカ、私…ダメダメじゃない…」


　潤はそれからしばらく『初心者でも簡単！楽うまレシピ』などと銘打たれた料理サイトの記事を読み込んではため息をつくのだった。