孤独の栽培人～栽培アプリで生活向上～

一章 グリーン・ライフ

第29話

「…ふう」

　パーキングエリアに車を駐車し、大助が自動販売機へと向かう。

（うへへ。どう考えても割高な自販機の飲み物も今なら好きなだけ買えちゃうんだぜ）

「むうう……」

　思考とは裏腹に悩む大助。彼からしてみれば150円でも大金なのだ。その金銭感覚は大金を手にした今でも変わる事はなかった。湯水のように金を使えると理解していても体がブレーキをかけてしまう。積み重ねてきたその人間の本質はそう簡単には変わらないものだ。

「自販機の飲み物を5秒で決められる人間を俺は尊敬するぜ」

　悩みに悩んで1分が経過。大助は無難にブラックコーヒーを購入した。プルタブを引き中身をグビグビと飲み干す。特に意味もなく周囲を見回していると、とある場所が目に入った。

「蕎麦屋か…」

　スマートフォンに表示された時計を確認しながら大助は悩む。

（値段はちと高めだが自家製麺を売りにしてるみたいだな。チェーン店ってわけでもなさそうだしちょっと気になる…）

「よし。せっかくだし行ってみますか」

　大助が今日の昼飯を食べるべく行動を始めた。


「いらっしゃい！」

「ども」

　カウンター席に腰を下ろしメニュー表を手に取る。

「何にしますか？」

「え～と。天ぷら蕎麦を1つ大盛りで。あとこの特製炊き込みご飯というやつも1つお願いします」

　注文を済ませスマートフォンに目を落とす大助。そこにはお助けモンスター達から数々のメッセージが届いていた。

＜マスター。今日の天気は晴れです。予定通りに植物の栽培を開始します＞

＜…暇。構って欲しい＞

＜魚が食べたい。アイテムボックスに補充してくれ＞

「メッセージって結構個性が出るもんだよな」

　大助がのんびりとお茶を飲み干す。それからしばらくして注文していた蕎麦が運ばれてきた。

（天ぷらがやけにデカいな。こりゃ食べ応えがありそうだ）

　両手を合わせ。定番かつこの場に最も相応しい言葉をチョイスする大助。

「いただきます！」


「ふいいい。食った食った」

　食事を済ませ。上機嫌で車を運転する大助。

（びっくりする程美味かったぜ。何て言うんだか。こう、麺にコシがあるというかなんというか）

　そのまましばらく運転していると、目的地の海岸に到着した。時刻は平日の昼間という事もあり人気は0だ。車で侵入できるギリギリの場所まで向かい、その場所に車を停車する。荷物を担ぎ、なるべく目立たないような場所を大助は探した。

「よし。この場所なら問題ないだろう」

　目の前には海があり、地面は砂だ。ここなら魔法を使っても大丈夫だろうと大助は判断する。