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おもてなし #とは

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俺は皇兄弟に両脇を固められ、捕まった宇宙人状態で運ばれていた。


(こんな状態、ご近所さんに見られたら、俺恥ずかしくて月曜日まで部屋から出られないっ…!!)


そしてそのまま妹の待つお家に帰るんだ…っ!!

俺がさめざめと泣く真似をしていると、秀先輩が心配そうに声をかけてくる。


「田中、すまない…強引な真似をしたな。」


「…うぅっ…良いんです。秀先輩とも、最後に挨拶したかったので…」


「そう言う話は俺ん家でやれよ。」


先生の面白くなさそうな声と共に、歩みが止まる。

…お?到着したか?


先生の背からヒョイと覗き見ると、


「エエェ?!これ、先生の家ですか?!戸建て?!」


「あぁ?…あ~言ってなかったか。俺の生家は不動産業もやってるから、戸建ても作りやすいんだ。」


「え、作った?!土地買って、家建てたってことですか?!」


「ああ、マイホームだ。

秀はまだ実家だからな、俺の家に招待したわけだ。」


ど、どひゃ~!!!
俺は昭和なリアクションを取りながら、マジマジと先生の家を見る。


壁面は黒と茶色の木目を生かしたお洒落なデザインで、入り口には何やらインダストリアルなランプまである。


「す、凄過ぎますよコレ!!

センスを感じる…圧倒的存在感…」


「そんな気に入ったんなら住めばいいだろ。」


「冗談の加減を覚えた方がいいぞ、兄貴。」


ウッ…この担任、隙あらば口説いてきよる…!!


俺はブルブルと震えながら、敵陣に踏み入る歩兵の気持ちでドアを潜った。


「朝食ったか?」


「食べてないです…」


誰かさん達のせいで食い損ねました!!と大声で叫びたかったが、俺は大人なので腹に一物として溜め込む。


「田中、好きな物はあるか?

兄貴の物だからなんでも使って良いぞ。」


先輩は俺に悪戯っぽく微笑みかける。
その笑顔で、俺の怒りはドロっと溶けてしまうのだ。


「あう…じゃ、じゃあ…白米とお味噌汁で。」


「へぇ、和食好きなんだな。」


「そういえば、前家で朝飯食わせてもらった時もそのメニューだったな。」


「あー!そうだったそうだっ……」


「朝…飯…?」


…ハッ!!!!!!

俺は思わず秀先輩を振り返ると、先輩は真顔で俺と先生をガン見していた。


(せんせぇぇえええええええ!!!!)


「兄貴、なんで田中の家でご馳走になってるんだよ。」


「ん?…あぁ。こいつの処女を貰ったついでにな。」


「…は?」


「くぉおるぁあああ!!!!」


俺は先生に膝カックンを仕掛けると、そのまま耳に思いっきり叫ぶ。


「誰にも言うなって、言ったよなぁあ!」


「いった、耳痛ぇって…」


「…その反応、本当の事なのか?」


先輩は未だ理解しきれていない様だが、取り敢えず言葉通りに受け取ったようだ。

眉間に物凄い皺を寄せてこちらに問いかけてくる。


「あ、あのう…きっかけは事故と言いますか…てへ。」


「その後はきちんと愛し合ったじゃねえか。」


「だまらっしゃい!!!!」


先生が喋ると思い切り拗れるからやめてくれ!!!!


「愛しあう…、愛しあう…?」


秀先輩も珍しくキャパオーバーしたのか、
単語を反芻する機械の様になってしまった。


「せ・ん・せ・い!!!」


「どうした?…別にいいだろ、秀相手だぞ。」


先生は俺の怒りもどこ吹く風、と言った感じで取り合わない。


「事実と異なる所が…っはぁぁあ~」


俺が諦め半分で深いため息を吐いていると、
背後から消え入りそうな声が聞こえた。


「本命は…兄貴なのか…?」


「いや、全然本命とかないので!」


「おい、忘れてるかもしれねぇが本人隣にいるからな?」


「そうか…。いや、むしろ敵は多い方が燃えるな。」


秀先輩は不穏な言葉を口走ると、俺の腕を引き、膝カックンしたままの距離感だった俺を引き離した。


「兄貴、田中のことは諦めてくれ。」


秀先輩は俺を引き寄せた勢いのまま、顎を持ち上げた。


(あ、いつかの顎クイ…!!)


「…前は邪魔が入ったからな。」


秀先輩の顔がボヤけて見えなくなる。

代わりに、唇に確かな温度を感じた。


「今日は俺の想いをここに刻むために連れて来たんだ。」


いつも壇上で見せる不敵な笑みを浮かべ、ゼロ距離で宣言された言葉に

"あぁ…今日の予定はコレで埋まってしまった"

と察したのは言うまでもない。


(おもてなしの心はどこに行ったんだ…)






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