BLゲームのモブ(俺)は誰にも見つからないはずだった

はちのす

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誘拐?!お巡りさんこっちです!

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意識が浮上する。


「…あ、今日は日曜日か。」


今日がこの世界で過ごせる最後の休日。
明日が来る、そう確約されている時間だ。


「はぁ…どうしたもんかな。結局先輩のストーリーは回収出来てないし、出来る見込みもないよなあ」


俺は起き上がると同時に、重くのしかかる現状にため息が止まらなくなっていた。

とりあえず今日は身の回りの整理と…諦めて散歩でもしようかな。

月曜日の朝に生徒会室に張ってみるとかで、どうにかしてコンタクトを取ってみるしかない。


「そうと決まれば…今日はゆっくりするか!」


一人でのんびりする休日もなかったため、
俺としてはワクワクしてきた。


「散歩はどこ行ってみようかな、まだ行ったことないエリアもあるだろうし…」


想像を膨らませながら、一旦ゴミ出しに行くため部屋着から外着に着替えた。

その時だった。


"ピンポーーーン!"


…え、呼び鈴?

いつもは役割を果たせず、お飾りの存在となっていた呼び鈴が俺に来客を伝えた。


「な、なんか、デジャヴだぞ…これ。」


一度はスルーしてみようと思ったチャイムも、容赦ないけたたましさで2度目の呼び出しが始まった。


「あああ…もう!はい、はいっ!出ますよ!!」


俺はドアをゆっくり開ける。
まあなんだ…あの人だろうな、という予感があったからだ。


ドアを開けた先には、案のじょ…


あれ?


「え…秀先輩??」


「あ、ああ。突然押しかけてすまない。」


先輩は顔を赤くしながら、忙しなく視線を動かしている。

え、なんで先輩が…?


「実は…昨日兄貴から田中が明日転校になると聞いたんだ。」


先輩は恥ずかしそうに、でも困った様な表情でこちらを窺っていた。


「…迷惑じゃなければ、最後に話をできないだろうか。」


「…っ!はい、もちろんで…「おい秀、そうじゃねえだろ。」…ぇ、えええ?!」


俺の話を真っ二つにする様に遮るその声の主は…っ!


「せ、先生…」


「ったく、秀は奥手過ぎるのがよくねぇな。さっきだって俺がベル鳴らさなきゃ帰ってただろ。」


先生は俺の驚愕など全く聞こえない調子のいい素振りで、秀先輩の脇腹をチョンとつついた。


「今しかないぞ~?」


「…うるさい」


あ、あのー兄弟喧嘩をされるのなら、また今度でもよろしいでしょうか…。

俺はもう俺への用は済んだかな、とコッソリドアを閉めようとすると、息ピッタリにドアを掴まれた。

先生に至っては、高そうな靴をドアに挟んでいる。


「「話は終わってない」んだ」


「ひぇっ…」


(これ、押し売りの怖い人たちの手法じゃん…)


「だからよ、田中…顔貸してくれ?」


俺は先生に両腕をホールドされ、右頬にキスを降らされる。


「すまない田中…不自由はさせないから、少し時間をくれないか。

鍵も俺が掛けよう。」


秀先輩は心底申し訳ない、と言った顔で俺に鍵のありかを聞いてくる。

秀先輩のさりげないフォローに感動しそうになるが、先輩も共犯だ。

秀先輩とどうにかして会おう、と考えていたからいいけど、先生にタダで着いて行くのも癪だなっ!!


「ウッ…暇だから良いですけど!お、俺にメリットはありますか…!!」


「あ?…ああ、用意できる物はなんでも用意してやるよ。

攫うからには、全身全霊でたぁっぷりともてなしてやるぜ?」


「兄貴!怯えさせる様なことを言うな。

田中、俺が側についていよう…嫌だと思うことはさせない。」


先生は兄弟で激似の不敵な笑顔を浮かべ俺を誘導しようとして、先輩に叱責されている。

秀先輩は先生から俺を遠ざけながらも、しっかりと部屋から連れ出したのだった。



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