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分岐
しおりを挟む「ただいマイハウス~ッ!!」
今日は物凄く機嫌がいい。
それもそのはず、先輩に偽名ではないちゃんとした名前で呼んでもらったのだ。
自業自得だからと呼んでもらう事は諦めていたのだが、挽回することが出来て一安心だ。
いや、何でそもそも偽名使ったかと考えてみると先輩のせいなんだけどな。
「出会い頭に"生きが良い"とか変なこと言ってくる人だったし…やきそばパン半分取り上げられるし」
先輩のこと悪い人じゃないと思ってるけど、よく考えたら結構な仕打ちに遭ってるよな、俺…
ブツブツと文句を垂れながらレポートを書く。
今日は収穫無しかなあ…
上書き保存を押すと、一行に集約される。
「…あれ?」
✔︎嘉賀 恋愛エンド
目がおかしくなったのかとゴシゴシと擦り、もう一度見る。
やっぱり変わらない。
「✔︎嘉賀 恋愛エンド…?」
え、ここに来て全年齢対象になった…?
俺は呆然としながら、エピソードアーカイブを確認する。
主人: ✔︎初期 ✔︎友情 ✔︎R18
里田: ✔︎初期 ー友情 ー?
黒木: ✔︎初期 ✔︎友情 ✔︎R18
嘉賀: ✔︎初期 ✔︎友情 ✔︎恋愛
皇秀: ✔︎初期 ✔︎友情 ー?
皇輝: ✔︎初期 ✔︎友情 ✔︎R18
+他2エピソード
俺が予想していたのは、初期スチル、友情エンド、あとは黒木で初めて出たR18エンドだ。
俺はそこである可能性に辿り着く、
「もしかして、何かの分岐があった…?」
俺が先輩に好き勝手されている時、もしくはその前?…屋上に入った時かもしれない。
色々考え始めれば、無限に考えられるけど、
取り敢えず終盤に差し掛かって新たな発見があった。
それを自覚すると同時に、俺はがっくりと項垂れる。
「…そ、それならせめて、最初の黒木の時に出てくれれば…」
俺は今まで、皆との性行為が現実に戻るための必須条件になっていると思い、めちゃくちゃ気が重かったんだ。
特に誰かと付き合っているわけではないけど、なんだか、誰とでも関係を持つ自分が浮気者で嫌な奴に見えてきていた。
(つくづくこのゲームの制作者は意地が悪いな!!!)
でも、性行為が必須じゃないなら…
「はぁ~!!!良かったぁ~!!!」
肩の荷が8割下りた気分だ。
先輩とも、取り敢えず仲良くなれたし、一件落着!!
今日は火曜日だから、残る数日で里田と秀先輩と性的な意味以外で仲良くなれれば、晴れてエピソード全回収だ。
「やっと帰れるって実感湧いてきた…」
(帰ったら1番に何しようかなぁ…)
とりあえずは妹にゲームクリアを報告しなきゃ。そしたら、皆の事も話したいなぁ!
色んな濃い奴が居たからなぁ…きっと妹も楽しく聞いてくれる。
妹に赤裸々な話はしたくないから…エピソード回収の詳細は伏せておこうかな!!!
沢山話をしたら、それから……"その後"は?
「…それが終わったら、また引きこもる?」
寝て起きて、一人でパソコンの画面に向き合って…それの繰り返し?
突如、今までにない焦燥を感じた。
折角人と関わる機会を得たのに、
またあの生活に逆戻りするんだろうか。
(…あの生活も、割と楽しくやってたけど)
こうしてこの世界で様々な人達と関係を持ったからこそ、多分、物足りなく感じてしまう気がする。
(長い間避けていたけど、潮時かもしれない。)
「…就職活動、してみるかぁ」
ベッドに寝転びながら、白い天井に向かってボヤいた。
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