BLゲームのモブ(俺)は誰にも見つからないはずだった

はちのす

文字の大きさ
上 下
57 / 145

分岐

しおりを挟む


「ただいマイハウス~ッ!!」


今日は物凄く機嫌がいい。

それもそのはず、先輩に偽名ではないちゃんとした名前で呼んでもらったのだ。

自業自得だからと呼んでもらう事は諦めていたのだが、挽回することが出来て一安心だ。

いや、何でそもそも偽名使ったかと考えてみると先輩のせいなんだけどな。


「出会い頭に"生きが良い"とか変なこと言ってくる人だったし…やきそばパン半分取り上げられるし」


先輩のこと悪い人じゃないと思ってるけど、よく考えたら結構な仕打ちに遭ってるよな、俺…

ブツブツと文句を垂れながらレポートを書く。

今日は収穫無しかなあ…


上書き保存を押すと、一行に集約される。



「…あれ?」


✔︎嘉賀 恋愛エンド


目がおかしくなったのかとゴシゴシと擦り、もう一度見る。

やっぱり変わらない。


「✔︎嘉賀 恋愛エンド…?」


え、ここに来て全年齢対象になった…?


俺は呆然としながら、エピソードアーカイブを確認する。


主人: ✔︎初期 ✔︎友情 ✔︎R18
里田: ✔︎初期 ー友情 ー?
黒木: ✔︎初期 ✔︎友情 ✔︎R18
嘉賀: ✔︎初期 ✔︎友情 ✔︎恋愛
皇秀: ✔︎初期 ✔︎友情 ー?
皇輝: ✔︎初期 ✔︎友情 ✔︎R18

+他2エピソード


俺が予想していたのは、初期スチル、友情エンド、あとは黒木で初めて出たR18エンドだ。

俺はそこである可能性に辿り着く、


「もしかして、何かの分岐があった…?」


俺が先輩に好き勝手されている時、もしくはその前?…屋上に入った時かもしれない。

色々考え始めれば、無限に考えられるけど、
取り敢えず終盤に差し掛かって新たな発見があった。

それを自覚すると同時に、俺はがっくりと項垂れる。


「…そ、それならせめて、最初の黒木の時に出てくれれば…」


俺は今まで、皆との性行為が現実に戻るための必須条件になっていると思い、めちゃくちゃ気が重かったんだ。

特に誰かと付き合っているわけではないけど、なんだか、誰とでも関係を持つ自分が浮気者で嫌な奴に見えてきていた。


(つくづくこのゲームの制作者は意地が悪いな!!!)


でも、性行為が必須じゃないなら…


「はぁ~!!!良かったぁ~!!!」


肩の荷が8割下りた気分だ。

先輩とも、取り敢えず仲良くなれたし、一件落着!!


今日は火曜日だから、残る数日で里田と秀先輩と性的な意味以外で仲良くなれれば、晴れてエピソード全回収だ。


「やっと帰れるって実感湧いてきた…」


(帰ったら1番に何しようかなぁ…)


とりあえずは妹にゲームクリアを報告しなきゃ。そしたら、皆の事も話したいなぁ!

色んな濃い奴が居たからなぁ…きっと妹も楽しく聞いてくれる。

妹に赤裸々な話はしたくないから…エピソード回収の詳細は伏せておこうかな!!!


沢山話をしたら、それから……"その後"は?


「…それが終わったら、また引きこもる?」


寝て起きて、一人でパソコンの画面に向き合って…それの繰り返し?

突如、今までにない焦燥を感じた。

折角人と関わる機会を得たのに、
またあの生活に逆戻りするんだろうか。


(…あの生活も、割と楽しくやってたけど)


こうしてこの世界で様々な人達と関係を持ったからこそ、多分、物足りなく感じてしまう気がする。


(長い間避けていたけど、潮時かもしれない。)


「…就職活動、してみるかぁ」


ベッドに寝転びながら、白い天井に向かってボヤいた。

しおりを挟む
感想 193

あなたにおすすめの小説

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜 ・話の流れが遅い ・作者が話の進行悩み過ぎてる

ヤバい薬、飲んじゃいました。

はちのす
BL
変な薬を飲んだら、皆が俺に惚れてしまった?!迫る無数の手を回避しながら元に戻るまで奮闘する話********イケメン(複数)×平凡※性描写は予告なく入ります。 作者の頭がおかしい短編です。IQを2にしてお読み下さい。 ※色々すっ飛ばしてイチャイチャさせたかったが為の産物です。

お兄ちゃんに任せなさいっ!

はちのす
BL
⚠︎予告なくアレなシーンが入ります。 4人兄弟の長男である 愛野 彼方 <カナタ>は、酔っ払いついでに怪しげな占いを受ける。 占い師に告げられたのは、家庭崩壊寸前の未来。 阻止するには、ハグとキスで仲を保て!などと意味不明なアドバイスまで貰ってしまった。 親代わりである自分が何とかしなければ、と意気込んだカナタに降りかかるのは弟達からの愛ある♡な悪戯の数々?! これに耐えなければ、未来はない……! 3人の弟×流されるままなチョロイン長男(総受) ぴゅあらぶを書いていた作者の頭が混乱して突如始まったおバカ連載です。 深夜に半分寝ながら書いているので、誤字脱字が目立つかもしれません… 不定期更新。 IQを2にしてお読みください。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

普通の学生だった僕に男しかいない世界は無理です。帰らせて。

かーにゅ
BL
「君は死にました」 「…はい?」 「死にました。テンプレのトラックばーんで死にました」 「…てんぷれ」 「てことで転生させます」 「どこも『てことで』じゃないと思います。…誰ですか」 BLは軽い…と思います。というかあんまりわかんないので年齢制限のどこまで攻めるか…。

実は俺、悪役なんだけど周りの人達から溺愛されている件について…

彩ノ華
BL
あのぅ、、おれ一応悪役なんですけど〜?? ひょんな事からこの世界に転生したオレは、自分が悪役だと思い出した。そんな俺は…!!ヒロイン(男)と攻略対象者達の恋愛を全力で応援します!断罪されない程度に悪役としての責務を全うします_。 みんなから嫌われるはずの悪役。  そ・れ・な・の・に… どうしてみんなから構われるの?!溺愛されるの?! もしもーし・・・ヒロインあっちだよ?!どうぞヒロインとイチャついちゃってくださいよぉ…(泣) そんなオレの物語が今始まる___。 ちょっとアレなやつには✾←このマークを付けておきます。読む際にお気を付けください☺️ 第12回BL小説大賞に参加中! よろしくお願いします🙇‍♀️

【完結】お前らの目は節穴か?BLゲーム主人公の従者になりました!

MEIKO
BL
第12回BL大賞奨励賞いただきました!ありがとうございます。僕、エリオット・アノーは伯爵家嫡男の身分を隠して、公爵家令息のジュリアス・エドモアの従者をしている。事の発端は十歳の時…我慢の限界で田舎の領地から家出をして来た。もう戻る事はないと己の身分を捨て、心機一転王都へやって来たものの、現実は厳しく死にかける僕。薄汚い格好でフラフラと彷徨っている所を救ってくれたのが我らが坊ちゃま…ジュリアス様だ!坊ちゃまと初めて会った時、不思議な感覚を覚えた。そして突然閃く「ここって…もしかして、BLゲームの世界じゃない?おまけにジュリアス様が主人公だ!」 知らぬ間にBLゲームの中の名も無き登場人物に転生してしまっていた僕は、命の恩人である坊ちゃまを幸せにしようと奔走する。だけど何で?全然シナリオ通りじゃないんですけど? お気に入り&いいね&感想をいただけると嬉しいです!孤独な作業なので(笑)励みになります。 ※貴族的表現を使っていますが、別の世界です。ですのでそれにのっとっていない事がありますがご了承下さい。

所詮、狗。

はちのす
BL
パワハラ上司を殴って職を失った、元刑事の"黒谷(くろや)"。 それ以降、金と運に見放されていた黒谷に手を差し伸べたのは、探偵業を営む美貌の男"白王(しらお)"だった。 その手は救いか、それとも獲物を捕らえんとする罠か。 事件解決のため、凸凹コンビの共同生活が始まる。 推理×BL ⚠︎猛犬注意! よく飼い主の手を噛む狗がいます。 ※事件として残酷表現あり ※この物語はフィクションです ※ブロマンス寄り ※主人公が複数人から激重感情を寄せられていますのでご注意ください

処理中です...