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56 勝てない

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 大きなため息をついたアザリアは、アルフォードの首元に狙いをつけてナイフを振るう。
 そのナイフの刃が彼に届くことは決してないのだが、なんとなくムカついたために武器を手に取った。

 案の定、彼はアザリアの攻撃を軽く止め、その挙句アザリアの手から武器を握り取り、アザリアのくちびるを奪った。
 あまりの早技に、もう二の句を継ぐことさえもできない。


「今日もキレッキレだな、アザリア。もうこれなら並の相手では敵うまい」

「………元々、わたくしはそれなりに強かったですわ。というか、組織でナンバー2でしたのよ?」

「へー、《ブラックローズ》ってそんなに弱い組織だったんだ」

「っ、」

「アレ?気づいてないと思ってたのか?」

「………いいえ。
 あなたさまならご存知の可能性はあると思っていたのですが、ここまでさらっと言われるとは思っても見ていませんでしたので………………、」


 少し罰が悪そうな表情をしたアザリアに、アルフォードは苦笑した。


「さて、わたくしは組織の方に定期報告に行ってこなくてはならないので、さっさと部屋から出ていってください。というか、なぜ今日もわたくしのお部屋で寝ているのです?」

「いや、この部屋元はといえば俺のだから」

「それはそうですが、今はわたくしのお部屋です。乙女の聖域です」

「君、乙女の意味知ってる?」


 アルフォードの言葉を完璧に無視したアザリアは、意地でも出ていかないと言いたげなアルフォードを無視して、ベッドを抜け出して、着替えを開始する。
 彼で着替えることが嫌だだのなんだの言うのが、心底面倒くさくなってきてしまったのだ。


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読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈

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