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35 王妃という人物

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 貴族の女性にしては珍しい流行りのショートカットにした丁寧なお手入れが伺えるプラチナブロンドには、複数の貴石が散りばめられたネックレス状の髪飾り。
 豪奢で首がもげそうなほどに多くの宝石が取り付けられたネックレスには、宝石の王さまたるダイヤモンドが惜しげもなく散りばめられ、ベルラインの豪華絢爛なドレスは瞳に合わせたであろう見事な染地が美しいたんぽぽ色。
 顔立ちはきつめで威厳に満ち溢れているのにも関わらず、いかんせん可愛らしいデザインのドレスとケバケバしいアクセサリーが似合っていないために、そこら辺に転がっているお金持ちのただのケバいおばさんにしか見えない。


(わたくしなら、この素材を活かしてもっと素敵にコーディネートできるのに………。
 やっぱり、宝の持ち腐れは見ていて腹立たしいわ)


 王妃の表情や空気から滲み出る人を見下し、貶め、陥れ慣れた意地悪そうな感覚を無視しながら、アザリアはあたふたと慌てるようにごくごく一般的な貴族の挨拶を高尚にしてみせる。
 アザリアがしっかりとした教育を受けたご令嬢であり、親によって無理矢理第2王子の元に連れてこられた可哀想な娘であると理解してもらうために。

 そんなのはただの設定であり、嘘だが、嘘と本当を織り交ぜることによって誠のことにしか聞こえなくなったアザリアの話す耳触りのいい言葉に、話に、王妃は段々と引き込まれていった。


(———そろそろ踏み込みどきかしら)


 王妃がアザリアのペースに完全に巻き込まれた瞬間、アザリアは意を決したように瞳に宿す光を強めた。


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読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈

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