ほたる祭りと2人の怪奇

飴之ゆう

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6章:永き夢想の果て

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影が離れた昊は、螢の記憶と寸分たがわぬ姿でそこに立っていた。

「確かに僕は望んでしまった。でも、君は僕の本質を見誤った。だから失礼だけど、思考の邪魔をさせてもらったよ……。一応元は僕の身体だったからね」

影はワナワナと震えていた。まさか邪魔をされるとは考えていなかったのだろう。二人は利害関係が一致していたから、影は好き勝手していたのだから。

「昊、貴方の本質って何?何があったの……」

後ろから螢に声をかけられた昊は驚いて振り返る。しかし、グッと堪えると前に向き直った。

「それは後で話すね、今はこの影を──!」
「う、うん!」

しかし影は最後の悪あがきと言わんばかりに攻撃をしかけてくる。昊はそんな攻撃に対し、直ぐさま両手を液体につけた。すると黒かった液体が無色透明の水になり、自分を含め螢と信乃を護る様にドーム型になり攻撃を弾く。



「絶対に、貴様だけでも!共に地獄へ連れて行く!消えてなるものか!!」

言葉一つ一つに怒りを込め、腕を鞭の様にしならせて叩きつける。

「僕が囮を引き受ける……その隙に鏡で影を封じてもらっても良いかい?」

君たちなら出来るはず、と続いた言葉に二人が頷くと、昊はドームから出て駆け出した。影はもうまともな思考回路ではなく、ただ昊の抹殺に照準を変え、螢と信乃には見向きもしなかった。

「影は昊という依り代が無くなって焦ってる。だからコッチも余程の事が無い限り封じる事が出来るはずだ。大丈夫か螢」
「うん!」

信乃は邪魔にならないように螢より一歩下がる。螢は一度深呼吸をして影を見据える。準備が出来た事が分かると昊は水をリング状にし、それを影に飛ばした。リング状の水は影の両脚を拘束し転ばせる。螢は直ぐさま鏡を突き出した。

「これで終わり……!」

螢は鏡に強く、強く力を、思いを込める。影を映し出した鏡面が、螢の思いを受け渦を巻き、影を吸い込み始めた。影は嫌だ、嫌だと地面にへばり付きながら助けてくれと懇願した。

「嫌だ……!もう嫌なんだ!!ただ生きたかっただけなのに!なぜ、どうして我々は苦痛を、悲しみを背負わなければならなかった!助けてくれ、助けてくれ!」
「君の気持ちも良く分かる……。でも、僕に取り憑いたとしても消滅は止められなかったよ。僕ももうすぐ消えるからね」
「そんな、消えたくない……い、嫌だ嫌だ嫌だああああああああああああああ!!」

断末魔が響き、赤い目から涙の様な黒い影を零しながら吸い込まれてゆく。ガタガタと強く揺れ滑り落ちそうになる鏡を、離さないよう懸命に力をいれるが激しさを増す揺れに限界を感じた。ゆるみそうになった瞬間、信乃が後ろに回り、螢の手ごと鏡を掴んだ。

「信乃……!」
「もう少しだ……、いけるか?」
「!うん、いける大丈夫!」

共に鏡を支える。鏡はいっそう激しく揺れ、影を吸い込み終わると、激しさが嘘だったかのように一瞬で静かになった。信乃は手を離し鏡面を見る。鏡だったはずのそれはもう何も映していなかった。

「お疲れ様、二人とも。……影の封印に成功したね」

昊が告げると螢は大きく息を吐きしゃがみ込んだ。

「良かった……本当に終わったんだ……」
「だな。でも、まだ聞きたいことは残っている」

信乃は昊に身体を向ける。昊も分かっていたようで、小さく頷いた。

「螢、君の思いを踏みにじって、あまつさえ君達二人を殺そうとした。本当に申し訳ない」

昊は深々と頭を下げた。

「それに関しては俺達よりも、鯉乃進達に謝ってくれ」
「確かに恐かったけど……でも、私は貴方を思い出せて、もう一度会えた事が嬉しい。そうだ!紹介するね、彼は雨瀬信乃。私の幼馴染なの!で、信乃、こっちが妖怪の昊だよ!」

螢はやりきったという風に腰に手をあてる。信乃と昊はお互いに顔を合わせると、そんな螢が可笑しく笑い合った。急に笑われた螢は「何で笑うの!」と文句を言う。

「楽しそうで良かった。じゃあ今度は僕が話すね。どうして君の記憶を消さなければならなかったのかも含めて」

昊はそう言うと一瞬泣きそうに表情が歪んだが、小さく首を振ると、いつも通りの穏やかな笑みを携えて話しだした。
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