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5章:夢と結びつく
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四人は水無月神社の境内に降り立つ。とても静かだ。キヨ達は裏口に回りその階段を降りる。ホタルの妖怪がいるだろう場所へと速足に向かった。螢と信乃は急展開についていけず、とにかく先導するキヨに続く。
しばらく身の丈以上ある草むらをかき分け進むと、小さな祠と古井戸がポツンとあった。キヨはその祠の戸を開け丸い鏡を取り出すとそれを螢に差し出した。古く繊細な彫りがある鏡は、一切の曇りなく光を反射し、鏡をのぞき込む螢を映していた。
「じゃあ後は貴方達に任せるわ。そこの井戸に入って」
「この鏡は」
「『封魔の鏡』よ。多分使っても怒られないと思うけど……でもこれで、取り憑いているヤツを封じる事も出来ると思うし、最悪ある程度はしのげるはず」
やや早口で説明するキヨに螢がどうして共に行けないのか聞くと、「知らない、終わったら雨女にでも聞いて」と匙を投げられた。そんなキヨに苦笑するとアリサは淡々と言った。
「私達は行けないの。それに、退路を死守しないといけないから」
アリサが視線を草むらにやるのを追ってそちらをみると、泥のように影が染み出してきていた。その数は軽く十体を超え、更に増えて続けている。
いつの間にかアリサが井戸の四方に札を貼り呪文を唱え結界を作っていた。空まで伸びる光の柱のように井戸を護っている。
「あの影は妖怪なの?」
その問いにキヨは正解、と頷くと鞄から扇子を取り出す。開くと同時に結界の一部に斬る動作をした。すると斬ったところが人一人通れる位に広がる。
「こんなとこで時間食ってたら他のヤツに申し訳が立たないし……古参の人間?の底力を見せてやるわ!」
「大丈夫だから、早く行って──!」
アリサは二人の背中を優しく押す。
「分かった、ありがとう」
「ありがとう、二人も気をつけて!」
信乃が先に井戸の中に入り最後に螢が振り切るように飛び込んだ。
結界が自動的に閉じる。二人を見届けたキヨとアリサが放った札は、鋭く影に当たり強烈な電撃を喰らわせ消滅させる。しかし影はまだまだ湧いてきていた。
「さあアリサ、後輩の期待に応えるわよ!」
「そうね、足を引っ張らないでよ」
アリサが言うと、キヨは不適な笑みを零した。
「どっちが!」
しばらく身の丈以上ある草むらをかき分け進むと、小さな祠と古井戸がポツンとあった。キヨはその祠の戸を開け丸い鏡を取り出すとそれを螢に差し出した。古く繊細な彫りがある鏡は、一切の曇りなく光を反射し、鏡をのぞき込む螢を映していた。
「じゃあ後は貴方達に任せるわ。そこの井戸に入って」
「この鏡は」
「『封魔の鏡』よ。多分使っても怒られないと思うけど……でもこれで、取り憑いているヤツを封じる事も出来ると思うし、最悪ある程度はしのげるはず」
やや早口で説明するキヨに螢がどうして共に行けないのか聞くと、「知らない、終わったら雨女にでも聞いて」と匙を投げられた。そんなキヨに苦笑するとアリサは淡々と言った。
「私達は行けないの。それに、退路を死守しないといけないから」
アリサが視線を草むらにやるのを追ってそちらをみると、泥のように影が染み出してきていた。その数は軽く十体を超え、更に増えて続けている。
いつの間にかアリサが井戸の四方に札を貼り呪文を唱え結界を作っていた。空まで伸びる光の柱のように井戸を護っている。
「あの影は妖怪なの?」
その問いにキヨは正解、と頷くと鞄から扇子を取り出す。開くと同時に結界の一部に斬る動作をした。すると斬ったところが人一人通れる位に広がる。
「こんなとこで時間食ってたら他のヤツに申し訳が立たないし……古参の人間?の底力を見せてやるわ!」
「大丈夫だから、早く行って──!」
アリサは二人の背中を優しく押す。
「分かった、ありがとう」
「ありがとう、二人も気をつけて!」
信乃が先に井戸の中に入り最後に螢が振り切るように飛び込んだ。
結界が自動的に閉じる。二人を見届けたキヨとアリサが放った札は、鋭く影に当たり強烈な電撃を喰らわせ消滅させる。しかし影はまだまだ湧いてきていた。
「さあアリサ、後輩の期待に応えるわよ!」
「そうね、足を引っ張らないでよ」
アリサが言うと、キヨは不適な笑みを零した。
「どっちが!」
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