らぶこめ! わたしのツンが消える時

稲田シンタロウ(SAN値ぜろ!)

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第七話 ふわふわであまあま(1)

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   ◆◆◆

  ふわふわであまあま

   ◆◆◆

 間違って「姉ちゃん」と呼んでしまったあの日から、俺の中でちょっとした変化が起きた。
 変な話だが、どう呼べばいいのか分からなくなったのだ。
 それまではずっと「アサヒナさん」だった。恋人同士になってもずっとだ。
 しかしそれが急に他人行儀のように感じられるようになったのだ。
「アサヒナさん」と呼ぶことに抵抗が生じるようになってしまった。
 じゃあ、恋人らしく名前のほうで「コアネさん」だろうか?
 ……なぜか語感が悪いように感じる。幼少時に「コアネおねえちゃん」とずっと呼んでいたせいだろうか。
 だが今の彼女に「ちゃん」はふさわしくない。ありがたく、頼れる存在になっている。
 じゃあ、「コアネ姉さん」?
 いやいや、やっぱり「姉」扱いはやめるべきだ。
 じゃあ、さんを外して「コアネ」?
 ……どうもしっくりこない。頼りにしている人のことを呼び捨てにすることに抵抗があるせいだろう。
 ならば仕方ない。「コアネさん」と呼ぶことにしよう。呼んでいるうちに慣れるだろう。俺はそう思い込むことにした。

   ◆◆◆

 あの日以来、彼はわたしの呼び方を変えた。
 正直、しっくりこなかった。
「コアネさん」よりは「コアネ姉ちゃん」のほうがマシに感じられた。
 苗字から名前呼びに変わったこと自体はいい変化だと思う。
 でもやっぱり「さん」付けはいやだ。他人行儀な感じがする。
 だからわたしは彼のことを「カズノリ」と呼ぶことにした。
 最初はちょっと恥ずかしかったが、一週間くらいで慣れた。
 それから、わたしは彼に自分のことを「さん」付けで呼ぶのをやめるように言った。
 彼は素直に従ってくれた。
 その日から、わたし達は互いを名前で呼び合うようになった。
 しかしこれには一つ弊害があった。
 学校で間違えてそう呼ばないように気をつけないといけないことだ。
 しかしわたしと彼は違うクラスだ。そのような事態が発生する危険性は薄い、わたしはそう思っていた。
 だが、意外なところに落とし穴があったのだ。

 ……いや、よく考えたら意外でもなんでもないかも。ただのわたしのうっかりミスなだけな気がしてきた。
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