【完結】偽りの花嫁 〜すり替えられた花嫁は冷血王子から身も心も蕩けるほどに溺愛される〜

葉月

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手作りの昼食 ②

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 アレクが会議に行った後すぐ、僕はクロエと朝の支度と朝食を大急ぎで済ませ、昼食作りにとりかかる。

 メニューはライ麦パン、野菜たっぷりスープ、牛肉のローストに果物。いつも食べている昼食とは比べ物にならないけど、料理人に手伝ってもらわず僕が一人で作れる精一杯。

 アレク、喜んでくれるかな?
 誰かのために料理を作ったのは、孤児院の時以来。アレクのことを思いなが作る料理は、本当に楽しい。今日は天気もいいし、部屋じゃなくて園庭で食べよう。

「クロエ、敷物の用意してくれる?」
「はい!」
 二人して大急ぎで用意をしていると、

ーバンッー 

 厨房のドアが勢いよく開けられ、そこに立っていたのは……
「ユベール、終わったぞ!」
 息を切らしながら仁王立ちしているアレクがいた。
「え?午前中の会議が終わったの?」
 時計の針を見ると、まだ昼食を食べるには早い時間。
「いや、今日の分の会議は終わった。というか調査に行くまでに決めるべきことは全て決めてきた!」
 アレクは清々しいばかりの、してやったり顔。
「本当に?」
 にわかに信じられず、アレクの後から息を切らしながら駆けつけたヒューゴ様の方を見る。
「嘘のような話ですが、本当です。こんなに仕事ができるなら、毎日こうして欲しいぐらいです。今までのアレは何だったのか……」
 会議が終わったとは喜ばしいことなのに、ヒューゴ様は複雑そう。

「それで、昼食はどんな感じだ?」
 野菜をぐつぐつ煮込む鍋を、アレクは覗き込む。
「もうできてて、後は園庭に運ぶだけだから……アレクつまみ食いしない!」
 お皿の上に盛り付けられている牛肉のローストに、手を伸ばそうとしていたアレクの手を掴む。
「クロエとヒューゴ様の分もあります」
 そう言ってから、
「アレク、すぐに食べられるから、運ぶの手伝って」
 使用人の手は借りず、料理をカートに乗せ、敷物、飲み物も四人で運んだ。
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