【完結】偽りの花嫁 〜すり替えられた花嫁は冷血王子から身も心も蕩けるほどに溺愛される〜

葉月

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手作りの昼食 ③

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 僕のお気に入りのガゼボで昼食を食べた。敷物を敷き、その上に料理を置く。決して優雅な食べ方ではないけど、子どもの頃、家族で出かけたピクニックのようで楽しい。
 アレクはどの料理も「美味しい、美味しい」と食べてくれ、作りすぎたかと思っていた料理は全て綺麗に無くなった。

 食事の後のデザートを食べた後は、アレクは僕の膝の上に寝転がり瞳を閉じる。ヒューゴ様は読書、クロエは摘んできた花で王冠を作って、僕の頭の上に飾ってくれた。ゆっくりとした時間。とても平和で幸せな時間が過ぎていく。

「アレク様、そんなにずっとユベール様に膝枕をしていただいていますと、ユベール様の足が痺れてしまいますよ」
「そうなのか?」
 僕の膝の上で瞳を閉じていたアレクが、僕を見上げる。
 痺れているか痺れていないかと訊かれたら、少し痺れているけど……。
「まだ大丈夫」
 だって僕の膝の上で気持ちよさそうにしているアレクに、退いて欲しいとは言えない。
「ユベール様、アレク様に気を使うことはありませんよ」
 ヒューゴ様がそういうと、
「ヒューゴは俺が羨ましいのか?」
 にやりとアレクが笑う。

「そういう問題ではありません」
「そうなのか?膝枕してほしいならクロエにしてもらえばいいじゃないか」
 アレクがそう言った途端、
「絶対嫌ですよ!」
 クロエが断固拒否し、
「こちらこそ、そんなことは願い下げです」
 ヒューゴ様も断固拒否。せっかく穏やかだった空気が、一気にピリつく。

 この空気、どうしよう。僕が何とかしないと。
「クロエ、そんなに嫌がらなくても……」
 チラリとクロエとヒューゴ様の様子を伺うが、二人の間の空気は変わらない。
「ユベール様がそうおっしゃっても、嫌なものは嫌なんです!」
「そこまで言い切らなくても……」
「だって兄様を膝枕するなんて、考えただけでゾッとします」
 ……え?今、クロエが言った『兄様』ってヒューゴ様のこと?

「クロエとヒューゴ様って……」
「兄妹です。あれ?言ってませんでした?」
 クロエはきょとんとしているけど、
「そんなこと聞いてない!」
 あまりに驚きの真実に、僕の声は大きくなる。

「言ってなかったか?」
「ご存知ありませんでしたか?」
 アレクもヒューゴ様もきょとんとしている。
「聞いてない!絶対聞いてない」
「てっきりユベールに話てたと思い込んでいた」
 あははと愉快そうにアレクは笑うけど、知らないのが僕だけだなんて、なんだか面白くない。自然と頬を膨らませてしまう。 

「俺が大切なユベール専属の侍女を、ただの侍女に任せると思うか?それともクロエ以外の侍女がよかったか?」
「そんな!僕は絶対クロエがいい」
「だろ?俺はユベールとヒューゴとクロエしか信用していない。他のやつは、いつ、どこで、どんな形で裏切るかわからない。だからユベール、もし何かあったら俺かヒューゴかクロエの以外信用するな」
 アレクは手を伸ばし、僕の頬を掌で包み込む。

「約束する。俺たちは絶対ユベールを傷つけたりしない」
「うん。僕もアレクやヒューゴ様、クロエを絶対に傷つけないよ」
 そう誓った。
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