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Ⅶ章.青色のスキル【信念】

05.共生生物バクテリアの恐怖のキャッチボール

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「ハハハ。無知なのは悪いことじゃない。新しく知れるってことだから」
「むしろ、自分が無知であると認めたほうがいい」「伸び幅」「のびはば」

うごめくバクテリアたちはどうやらルオを励ましているようだ。

あ。そうなん? じゃあ思い切って晒してしまおうかな。

「オレ、あんまり真面目に授業うけてないっていうか、難しい話聞くと眠くなるタチっていうか、……バクテリアって何?」

「いわゆる細菌ってやつだよ」
「そう言うと人間はバイ菌とか言って嫌な顔するけど」
「ボクたちには物質を分解して浄化する特別な力がある」
「さっき言った硫化水素を栄養に変えるのもその一つ」
「まあ最近は人間もボクたちをバイオの力とか言って、汚れた土や水をきれいにするために利用しているけどね」

「へえ。小さいのにすごい能力があるんだね」

素直に感心すると、バクテリアたちは嬉しそうに頬を染めた(ように見えた)。
土や水をきれいにしていると聞いて、ルオの頭に何かが浮かびかけたが、つかめないまま消えてしまった。

「まあ人間の病気の元になる菌もいるけど」
「別に痛めつけようと思ってるわけじゃなくて、そういう性質だから仕方ないっていうかね」
「世の中の生物は人間のためだけに存在しているわけじゃないから」
「ある者にとっては有害でも、別のものには有効だったり」
「うまく付き合っていくしかないってわけ」

「うん、まあ、確かに」

菌と言われたら、やっぱりばい菌のイメージが強い。手を洗わないでご飯を食べるとお腹が痛くなるとか、風邪の原因になったりするとか、そんな感じ。でもそれは、ちゃんと手を洗ったりうがいをしたりすればいい。人間のお腹をきれいにしてくれる菌もいるし、汚れた土や水をきれいにしてくれる菌もいる。一概にいいとか悪いとか言えないのかもしれない。

「つまり、物事には様々な側面があるってこと」
「あと、目に見えないところで働いてる力があるってこと」

「あ、はい。ありがとうございます?」

疑問形になりながらもルオがお礼を言うと、バクテリアたちはざわざわと揺り動きながら笑った。

「じゃあ次はボクたちが聞く番」

言うと、バクテリアの一人がルオをつかんでポイっと投げた。

「うわああ、何するん、……っ」

飛んできたルオを受け止めた別のバクテリアが、再び投げながら問いかける。

「君は何者?」

「えっ? そんなこと、急に聞かれたって、……」

大体どうしてキャッチボールのボールみたいになってるんだ。これじゃ落ち着いて考えることも出来やしない。

何者? 何者ってなに?
オレは人間、…じゃなくて龍神の双子の弟、ってことは龍?

「五秒前、四、三、二、……」

カウントダウンまであるの!?
ポンポン投げられて落ち着かないうえ、焦らされ、

「りゅ、龍神の弟っ」

とりあえず思いついた答えを叫ぶと、

「うーん、イマイチ」「△みたいな」「全然自分のこと分かってないよね」

バクテリアたちからため息が漏れた。

「じゃあマイナス一ワーム」

「な、なに、マイナス一ワームって?」

不吉な響きである。

「君がちゃんと質問に答えられないと、このままこのマグマの海でチューブワームとして過ごすことになる。マイナス十ワームになったらチューブワーム決定。あ、心配しなくても君の中にもボクたちが住んでちゃんと栄養を与えてあげるよ?」

「丁重にお断りします、……」

なんて危険な質問なんだ。
こんな地下深くに埋もれたままマグマの海から動くことも出来ずに一生を終えるなんて勘弁してほしいんですけど!?

「じゃ、次の質問」
「君はどうして龍の都に来たの?」

質問と同時にまたバクテリアに投げられた。あっちへポーン、こっちへポーン。
だからボールじゃないっていうの!

「五秒前、……」
「早くない!?」
「四、三、二、一、……」
「ドランに頼まれたからっ」

やけくそに叫ぶと、

「うわー、主体性がない」「頼まれたから断り切れずにってこと?」
「仕方ないから来てやったみたいな?」「君自身の考えはないわけ?」

さっきよりも反応が悪い。

「マイナスニワーム」「合計マイナス三ワームで」

言われた途端、石化していた自分の身体がぐにゃりと柔らかくなるのを感じた。いわゆる粘土のような。

やばい。このままじゃ本当に何もできず一生ここにいることになっちゃう。
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