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Ⅶ章.青色のスキル【信念】
06.プラスサンワームを手に入れた
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粘土状になり焦るルオに、胸元のペンダントが触れた。
龍の都に来る前、おじいがくれたものだ。
『お前が何者であっても、英雄でもそうじゃなくても、わしはずっとお前の味方だ。何があっても、お前はわしの大切な孫だ。どうか忘れないでくれ』
あの時おじいはそう言ってくれた。
人間じゃないルオの味方だといった。ルオが龍の都を救うヒーローになってもならなくても大切なことに変わりはないと。
そうだ。おじいは水中生活のできるアクアスーツの開発に携わったのかもしれない。罪のないクラゲを実験の犠牲にしたのかもしれない。でも多分、そのことを悔やんでる。後悔して、反省して、だから海に捨てられたものを拾い集めて再生したり、命を無駄にしない生き方を実践したりしている。
ルオのことも海から流れてきたどこの誰とも分からない存在なのに、自分の孫として大切に育ててくれた。
風の精霊ビュウはこのペンダントをおじいのスパイだといったけれど、やっぱりルオにはお守りに思える。ルオの行動を見張っているわけじゃなく、ルオのことを応援してくれているのだ。
「じゃ、次の、……」
言いかけたバクテリアを制した。
「ちょっと待って。オレは海藤ルオ。おじいを尊敬するおじいの孫だ」
急に自分自身が明確になった。
普通の人間だと思っていたのに違っていた。龍神だった。しかもいらないと言われた双子の片割れで、何の力もない。だけど、ルオはルオだ。
自分の命とみんなの命を大切にすること。生きることは食べること。自然の恵みをいただくこと。だからいつも感謝の気持ちを持たなければならないというおじいの教えを大切にしているおじいの孫だ。
龍の都に来たのは、もちろんドランに頼まれたからだけど。
龍神が力を失ったから、深海の生態系が変化して、時空の歪みの先の地球環境にも深刻な影響を及ぼした。生物たちが大量に死滅し、地上では全く雨が降らなくなってしまった。その状況を変えたいと思ったからだ。
おじいの畑に作物が実るように。海の生き物がのどかに暮らせるように。いつかおじいのような海の掃除人になるべく、学校で沢山のことを学べるように。
「またおじいとみんなと幸せに暮らしたいと思ったからここに来たんだ。アクア王から龍剣を取り戻せば、元の平和な龍宮に戻るって聞いて。でも、アクア王は平和な統一世界を創ろうとしてるって。負の感情からみんなを解放して幸せにしてるんだって。そうビュウが言ったんだ。それでちょっと、分からなくなっちゃって、……」
「なるほど」「なるほど」「なるほど」
「今のはいい答えだ」「いい」「いい」
「ちゃんと自分で考えた答えだ」「考えた」「考えた」
あれ。なんだかバクテリアたちの様子が緩和した。どうやら褒められているようだ。
「プラスサンワーム」
おお? また身体が石化して元のシスト状態に戻った。
「それじゃ、もっとよく考えて」
「君が思う幸せって何」
バクテリアがまたルオをつかんで高く高く放り投げた。ポーンと跳ね上がって、ゆっくりゆっくり降りていく。カウントダウンは聞こえない。自分が思う幸せについてよく考えろと言われているのだ。
ルオは思い出していた。
『自分の中にある真実を見つめるのです。何が正しいのか、あなた自身で決めるのです』
土の精霊チイの言葉。
『思考を放棄すると楽なんです。判断に責任を取らなくてもいいですし。何でも、難しい決定は頭のいい偉い人に任せればいい。なんなら、AI(人工知能)に任せる。彼らは決して間違えません。人間を幸せにしてくれます。さて、本当にそうなんでしょうか?』
青目ルオが言ったこと。
苦しみや悲しみから解放され、何も考えずただ流されるのは本当に幸せなんだろうか。
ルオはどんな時に幸せだと思うだろう。
龍の都に来る前、おじいがくれたものだ。
『お前が何者であっても、英雄でもそうじゃなくても、わしはずっとお前の味方だ。何があっても、お前はわしの大切な孫だ。どうか忘れないでくれ』
あの時おじいはそう言ってくれた。
人間じゃないルオの味方だといった。ルオが龍の都を救うヒーローになってもならなくても大切なことに変わりはないと。
そうだ。おじいは水中生活のできるアクアスーツの開発に携わったのかもしれない。罪のないクラゲを実験の犠牲にしたのかもしれない。でも多分、そのことを悔やんでる。後悔して、反省して、だから海に捨てられたものを拾い集めて再生したり、命を無駄にしない生き方を実践したりしている。
ルオのことも海から流れてきたどこの誰とも分からない存在なのに、自分の孫として大切に育ててくれた。
風の精霊ビュウはこのペンダントをおじいのスパイだといったけれど、やっぱりルオにはお守りに思える。ルオの行動を見張っているわけじゃなく、ルオのことを応援してくれているのだ。
「じゃ、次の、……」
言いかけたバクテリアを制した。
「ちょっと待って。オレは海藤ルオ。おじいを尊敬するおじいの孫だ」
急に自分自身が明確になった。
普通の人間だと思っていたのに違っていた。龍神だった。しかもいらないと言われた双子の片割れで、何の力もない。だけど、ルオはルオだ。
自分の命とみんなの命を大切にすること。生きることは食べること。自然の恵みをいただくこと。だからいつも感謝の気持ちを持たなければならないというおじいの教えを大切にしているおじいの孫だ。
龍の都に来たのは、もちろんドランに頼まれたからだけど。
龍神が力を失ったから、深海の生態系が変化して、時空の歪みの先の地球環境にも深刻な影響を及ぼした。生物たちが大量に死滅し、地上では全く雨が降らなくなってしまった。その状況を変えたいと思ったからだ。
おじいの畑に作物が実るように。海の生き物がのどかに暮らせるように。いつかおじいのような海の掃除人になるべく、学校で沢山のことを学べるように。
「またおじいとみんなと幸せに暮らしたいと思ったからここに来たんだ。アクア王から龍剣を取り戻せば、元の平和な龍宮に戻るって聞いて。でも、アクア王は平和な統一世界を創ろうとしてるって。負の感情からみんなを解放して幸せにしてるんだって。そうビュウが言ったんだ。それでちょっと、分からなくなっちゃって、……」
「なるほど」「なるほど」「なるほど」
「今のはいい答えだ」「いい」「いい」
「ちゃんと自分で考えた答えだ」「考えた」「考えた」
あれ。なんだかバクテリアたちの様子が緩和した。どうやら褒められているようだ。
「プラスサンワーム」
おお? また身体が石化して元のシスト状態に戻った。
「それじゃ、もっとよく考えて」
「君が思う幸せって何」
バクテリアがまたルオをつかんで高く高く放り投げた。ポーンと跳ね上がって、ゆっくりゆっくり降りていく。カウントダウンは聞こえない。自分が思う幸せについてよく考えろと言われているのだ。
ルオは思い出していた。
『自分の中にある真実を見つめるのです。何が正しいのか、あなた自身で決めるのです』
土の精霊チイの言葉。
『思考を放棄すると楽なんです。判断に責任を取らなくてもいいですし。何でも、難しい決定は頭のいい偉い人に任せればいい。なんなら、AI(人工知能)に任せる。彼らは決して間違えません。人間を幸せにしてくれます。さて、本当にそうなんでしょうか?』
青目ルオが言ったこと。
苦しみや悲しみから解放され、何も考えずただ流されるのは本当に幸せなんだろうか。
ルオはどんな時に幸せだと思うだろう。
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