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Ⅶ章.青色のスキル【信念】

04.青の【信念】番人チューブワーム

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「本体ルオはそうやって自分自身について考えるためにこのマグマの海に来たんですよね。それでは【信念】の番人に会いに行きましょう」

そういうと、青目ルオはためらうことなくマグマの中を進んでいった。
見ているだけで全身が熱湯でゆでだこになりそうな気がする。が、シスト状かつ青目ルオの中にいるため、熱さや苦痛は感じない。改めて、石化ってすごい。それに、衝撃を本体に移さないという青目ルオの優秀さもすごい。

マグマの海をぐんぐん奥へ進んでいくと、見たことのない生物の群れが現れた。

マグマが噴き出す噴出孔の周りをぐるりと囲むチューブ状の生物。白と赤に彩られて海藻のようにも見えるが、一本一本がホースのような筒形をしていて、先端に赤い唇のようなひらひらが付いている。珊瑚などとも違うようだ。

「これは、……」

一面に広がる不思議な生物の群れにルオは言葉を失った。こんな生物がいるなんて知らなかった。

「彼らが【信念】の番人、チューブワームです」
「チューブワーム、……」

初めて聞く名前である。

「彼らは言葉を発しません。ただ【信念】をもってこのような過酷な環境に身を置いています。彼らの生態を知るには、本体ルオが中に入るのが手っ取り早いかもしれませんね」

「ええっ、中に入るぅ?」

正直、ちょっとグロテスクな見た目である。ひらひらした赤い部分は口のようだし、白い筒型のホースは飲み込まれたら一巻の終わりのような得体の知れなさを感じさせる。

しかし、躊躇するルオに構うことなく、青目ルオはシスト状の本体ルオを吐き出すと、あっさり近くのチューブワームの中に投げ込んだ。

「な、…なんて無謀なんだ、青目ルオっ。冷静なふりして意外と大胆なんて、そんなギャップいらないんだって!」

ルオの嘆きは丸ごとチューブワームの管の中。
シロナガスクジラのお腹の中とか、青目ルオの中とか、いろんなところに入ったけどさ、ここが一番グロテスク。不気味で怖いんですけど、…!?

石化しているにもかかわらず思わず目を閉じると、

「君はずいぶん臆病なんだね」「怖がり」「怖がり」

ざわざわと大勢の声がした。心外である。

「こ、怖いわけじゃないよっ」

言い返して目を開けると、アメーバのような変な形をした大量の微生物に囲まれていた。ただしルオはシスト状なので大きさは同じくらいである。

「うわああ、……っ」

思わず悲鳴を上げる。怖い。というか、キモい。

「ハハハ、やっぱり怖がりだ」「ビビり」「ビビり」

アメーバたちの大合唱。

「うるさいな。ちょっと驚いただけだよ」

気を取り直してすごむが、正直心臓がバクバク言っている。しかし、石化しているルオの心臓の状態など、アメーバたちにバレるはずがない。大丈夫。

「君たちは誰? チューブワームさんの中に住んでるの?」

「ボクたちのこと知らないなんて」「無知」「むち」「ムチ」

アメーバたちが大勢で繰り返す。
なんだろう、ちょっとむかつく反響である。

「無知で悪かったよ。だから学校で勉強してるんだろ」

思わず言い返してから、あ、そうか。勉強しているのはそのためか、と先ほど青目ルオに聞かれた回答の一つを見つけた。

「ボクたちはバクテリア。チューブワームの体内に寄生していて、外界から守ってもらう。代わりに生物には有害な硫化水素を栄養に変えてチューブワームに提供している。つまり、お互いウィンウィンな関係で共生してるってわけ」

アメーバならぬバクテリアたちが得意そうに言った。
へええ、バクテリアかあ。

正直、バクテリアが何たるかもルオにはよく分からなかったが、これ以上無知をさらけ出したくなかったので黙っていた。要するに、体内に生息するごくごく小さな生き物ってことだよね。
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