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俺はフィーナ王女の乗っていた馬車に相乗りさせてもらっている。
「あの、すみませんでした、王女様にたいして、無礼な口をきいてしまって……」
「気にしないでください。あなたは命の恩人ですから」
「そう言ってもらえると助かります……」
俺はほっと胸を撫で下ろした。
「あなたの射撃の腕前は素晴らしいものでした」
「は、はあ……恐縮です……」
「ちなみにどれくらいの距離から射ったのです?」
「えっと、多分数キロ以上は離れてると思います……」
「それはすごいですね。あなたはそんなに遠くから正確に射貫けるのですか?」
「はい、まあ……」
俺は少し気恥ずかしくなりながら答えた。
「カイト様。どうか、我がアルカディア軍へ入隊していただけませんか?」
「え? 軍ですか……」
俺は突然の勧誘に戸惑った。大国の軍隊に入れるなんて願ってもないことだ。だが……
「ごめんなさい、そのお誘いはすごく嬉しいのですが……」
「どうしてですか!? あなた程の腕ならすぐに出世できるはずです!」
フィーナ王女が信じられないといった様子で目を見開く。
「そういう問題じゃないんです。俺は自由気ままに生きたいから冒険者になったんです。なので、軍に入ることはできません」
俺は今まで自由気ままに生きてきた。これからも好きなように生きていきたいと思っている。
「そう……ですか……」
フィーナ王女は残念そうに目を伏せる。
「ですが、もし気が変わりましたらいつでも言ってください」
「はい、分かりました」
そうしていると馬車はアルカディア王国に着いたのであった。
◇
「ここがアルカディア王国か……」
俺は馬車から降りて感嘆の声を上げた。目の前に広がるのは、広大な街と美しい城だった。
「アルカディア王国へようこそカイト様」
「王女様……ありがとうございます」
俺は少し照れながら答えた。王女様にここまでしてもらえるなんて光栄だ。
「それで、私のお父様に挨拶していただきたいのですが……」
フィーナ王女は何やら言いづらそうにそう言った。
「陛下にですか?」
それはいくらなんでも緊張する。国王陛下とは一体どんな人物なのだろう? 俺は国で一番偉い人との謁見を想像して身を震わせた。
「お父様はお優しい人です。そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ」
フィーナ王女がそう言うのなら、俺は安心して謁見に臨むことができるな。
「分かりました」
こうして、俺は国王に謁見することになったのだった。
「よく来たな、カイトよ」
国王陛下は威厳のある声で言った。その迫力に圧倒されそうになる。
「お、お初にお目にかかります。冒険者のカイトです」
俺は緊張しながらも自己紹介した。
「ふむ、では本題に入ろうか」
国王はじっと俺を見つめる。
「そなたは軍に入るつもりはないのだな? 王族の頼みを断るということは処刑も覚悟の上か?」
国王陛下が低い声で俺に言った。俺はゴクリと唾を飲む。
「そ、その件ですが……」
俺が言葉を濁すと、国王陛下はピクリと眉を動かす。
「俺は冒険者が気ままに生きれる職業だと考えています」
「ふむ……」
「なので、俺は軍には入りません」
俺ははっきりと自分の意思を伝えた。これで殺されても仕方がないだろう。でも、俺の素直な気持ちを伝えることができたなら悔いはないな……と思ったその時だった。
「はっはっは! そうか、ならば仕方がないな!」
国王陛下が笑いだす。俺はその豹変ぶりに呆然とした。
「え? いや、あの……」
「別に処刑なんてしないから安心したまえ」
国王陛下は快活に笑っていた。まさかこんなにあっさりと許されるとは思わなかった……
「お父様、私からもお願いがあります」
「何だ?」
「私は今日から冒険者として生きることに決めます」
「ほう?」
国王陛下は面白そうに目を細める。
「私はカイト様に惚れました。カイト様に相応しい女になるべく、私も冒険者として生きようと思います」
フィーナ王女は国王陛下にそう宣言した。
「ふむ、そうか。だが、冒険者は常に危険が付きまとう職業だ。お前にその覚悟があるか?」
「はい、承知しております」
フィーナ王女は真剣なまなざしで答えた。
「よかろう、好きにするがいい」
こうして、フィーナ王女は冒険者として生きることを決意したのであった。
「あの、フィーナ王女様……」
俺はおずおずと声をかける。すると、フィーナ王女はにっこりと微笑んだ。
「これからは私のことをフィーナとお呼びください」
「はい……じゃなくて、ああ……分かったよ。フィーナ」
俺は少し照れながら答える。他人を呼び捨てにするのは何だかむずがゆい。まあ、これからずっとそう呼ぶことになるんだろうけど……
「あの、すみませんでした、王女様にたいして、無礼な口をきいてしまって……」
「気にしないでください。あなたは命の恩人ですから」
「そう言ってもらえると助かります……」
俺はほっと胸を撫で下ろした。
「あなたの射撃の腕前は素晴らしいものでした」
「は、はあ……恐縮です……」
「ちなみにどれくらいの距離から射ったのです?」
「えっと、多分数キロ以上は離れてると思います……」
「それはすごいですね。あなたはそんなに遠くから正確に射貫けるのですか?」
「はい、まあ……」
俺は少し気恥ずかしくなりながら答えた。
「カイト様。どうか、我がアルカディア軍へ入隊していただけませんか?」
「え? 軍ですか……」
俺は突然の勧誘に戸惑った。大国の軍隊に入れるなんて願ってもないことだ。だが……
「ごめんなさい、そのお誘いはすごく嬉しいのですが……」
「どうしてですか!? あなた程の腕ならすぐに出世できるはずです!」
フィーナ王女が信じられないといった様子で目を見開く。
「そういう問題じゃないんです。俺は自由気ままに生きたいから冒険者になったんです。なので、軍に入ることはできません」
俺は今まで自由気ままに生きてきた。これからも好きなように生きていきたいと思っている。
「そう……ですか……」
フィーナ王女は残念そうに目を伏せる。
「ですが、もし気が変わりましたらいつでも言ってください」
「はい、分かりました」
そうしていると馬車はアルカディア王国に着いたのであった。
◇
「ここがアルカディア王国か……」
俺は馬車から降りて感嘆の声を上げた。目の前に広がるのは、広大な街と美しい城だった。
「アルカディア王国へようこそカイト様」
「王女様……ありがとうございます」
俺は少し照れながら答えた。王女様にここまでしてもらえるなんて光栄だ。
「それで、私のお父様に挨拶していただきたいのですが……」
フィーナ王女は何やら言いづらそうにそう言った。
「陛下にですか?」
それはいくらなんでも緊張する。国王陛下とは一体どんな人物なのだろう? 俺は国で一番偉い人との謁見を想像して身を震わせた。
「お父様はお優しい人です。そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ」
フィーナ王女がそう言うのなら、俺は安心して謁見に臨むことができるな。
「分かりました」
こうして、俺は国王に謁見することになったのだった。
「よく来たな、カイトよ」
国王陛下は威厳のある声で言った。その迫力に圧倒されそうになる。
「お、お初にお目にかかります。冒険者のカイトです」
俺は緊張しながらも自己紹介した。
「ふむ、では本題に入ろうか」
国王はじっと俺を見つめる。
「そなたは軍に入るつもりはないのだな? 王族の頼みを断るということは処刑も覚悟の上か?」
国王陛下が低い声で俺に言った。俺はゴクリと唾を飲む。
「そ、その件ですが……」
俺が言葉を濁すと、国王陛下はピクリと眉を動かす。
「俺は冒険者が気ままに生きれる職業だと考えています」
「ふむ……」
「なので、俺は軍には入りません」
俺ははっきりと自分の意思を伝えた。これで殺されても仕方がないだろう。でも、俺の素直な気持ちを伝えることができたなら悔いはないな……と思ったその時だった。
「はっはっは! そうか、ならば仕方がないな!」
国王陛下が笑いだす。俺はその豹変ぶりに呆然とした。
「え? いや、あの……」
「別に処刑なんてしないから安心したまえ」
国王陛下は快活に笑っていた。まさかこんなにあっさりと許されるとは思わなかった……
「お父様、私からもお願いがあります」
「何だ?」
「私は今日から冒険者として生きることに決めます」
「ほう?」
国王陛下は面白そうに目を細める。
「私はカイト様に惚れました。カイト様に相応しい女になるべく、私も冒険者として生きようと思います」
フィーナ王女は国王陛下にそう宣言した。
「ふむ、そうか。だが、冒険者は常に危険が付きまとう職業だ。お前にその覚悟があるか?」
「はい、承知しております」
フィーナ王女は真剣なまなざしで答えた。
「よかろう、好きにするがいい」
こうして、フィーナ王女は冒険者として生きることを決意したのであった。
「あの、フィーナ王女様……」
俺はおずおずと声をかける。すると、フィーナ王女はにっこりと微笑んだ。
「これからは私のことをフィーナとお呼びください」
「はい……じゃなくて、ああ……分かったよ。フィーナ」
俺は少し照れながら答える。他人を呼び捨てにするのは何だかむずがゆい。まあ、これからずっとそう呼ぶことになるんだろうけど……
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