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「今日をもってお前を【黄金の獅子王】から追放する」
いつものように依頼を終えて、王都に戻ってきたその日の夜、リーダーのラインハルトから突然告げられたのは、パーティーからの追放だった。
「え? どういうことだよ」
俺は困惑しながら、リーダーのラインハルトに聞き返す。
「だから、お前を今日限りでクビにすると言っているんだ!」
ラインハルトが俺に冷たく言い放つ。その目はゴミを見るかのように蔑んでいた。
「……理由を教えてくれないか?」
「お前がパーティーの足を引っ張るお荷物だからだよ」
「お荷物、だと……?」
「ああ、そうだ。お前はパーティーの後ろからぶらぶら弓を持って矢を放ってるだけじゃねぇか。邪魔なんだよ!」
「ち、違う! 俺は遠くから狙撃してるんだ!」
「は? 狙撃? お前、弓使いのくせに狙撃なんてできるのか?」
「あ、ああ」
「はっ、笑わせんなよ。お前のようなヘボ弓使いが狙撃? 笑わせるなよ」
ラインハルトは嘲笑うように言った。他のメンバーも俺の無能っぷりに笑いをこらえている様子だった。
「ほ、本当なんだ! 俺は弓使いの職業で最強の狙撃手なんだ!」
俺は必死に訴えたが、ラインハルトたちは「はいはい」と全く信じてくれない。
「お前、パーティーに貢献してるのか? 貢献してないだろ?」
「……ッ!?」
俺は息を飲んだ。確かに、俺はパーティーに貢献できていない。それは自分でも自覚していたことだ。
「お前みたいな無能がいると、俺たちの評判まで下がるんだよ!」
「そうだ! そうだ!」
「とっとと出ていけ!」
ラインハルトの言葉に他のメンバーも同調する。
「だから、お前はクビだ! 分かったな?」
「……ああ」
俺は唇を嚙んだ。悔しいが何も言い返せなかった。
「じゃあな、お荷物の無能弓使いさんよ!」
こうして、俺は【黄金の獅子王】を追い出されたのだった。
◇
「はぁ……これからどうしたらいいんだ」
俺は途方に暮れていた。このままパーティーを追放されて冒険者を続けるわけにはいかない。
「でも、追放されたらどこに行っても俺の無能っぷりは知れ渡って、雇ってくれるパーティーなんてないよなぁ……」
俺は自分がいかに無能で役立たずだったのかを痛感していた。今までは弓使いの職業のおかげで何とかやってこれたが、これからはそうはいかないだろう。弓使いなんて職業、誰も必要としてくれないのだ。
「はぁ……とりあえず隣国のアルカディア王国にでも行って、それから考えるか……」
俺は有り金をはたいて、隣国へ向かう馬車に乗り込んだ。
「ん?」
しばらくすると、遠くで何かが見える。俺はスキル【千里眼】で視力を上昇させ、遠くを見た。
「あれは……グラスウルフ?」
数キロ先にはやたら高そうな馬車が、グラスウルフの群れに襲撃されているのが見えた。
「ちっ、厄介だな……」
俺は急いで馬車から降りると、襲われている馬車に向かって走り出した。
「【流星矢(スターダスト・アロー)】!」
天に向かって矢を放つ。その矢は上空で無数に分裂し、そして流星群のように地上へと降り注ぐ。
「ギャンッ!」
この技は味方を巻き込む危険性がある技なのだが、俺は敵だけを正確に狙い撃つことができる。
「助けてくれて感謝する」
護衛の冒険者が俺にお礼の言葉を述べる。
「いや、いいんだ」
俺は当然のことをしただけだしな。そんなことより、俺はこの襲われていた馬車に乗っていた貴族が気になった。
「それより、あの馬車に乗っていたのはもしかして……」
「ああ、この国の第三王女であらせられるフィーナ様だ」
やっぱり。襲われていたのはこの国の王女様だったようだ。
「私からもお礼を言わせてください」
豪華そうな馬車から、一人の少女が降りてくる。サラサラとした金髪、サファイアのような青い瞳に、整った顔立ち。その少女からは気品があふれ出ていた。
「初めまして。私はフィーナ・フォン・アルカディアと申します」
「はぁ……どうも。冒険者のカイトです」
「この度は助けていただいて本当にありがとうございました」
フィーナ王女が深々と頭を下げる。
「い、いや! 当然のことをしたまでですから!」
俺は慌てて畏まった。まさか王女様に頭を下げられるとは思わなかったのだ。
「お礼に私の国であるアルカディア王国に来ていただけませんか?」
いつものように依頼を終えて、王都に戻ってきたその日の夜、リーダーのラインハルトから突然告げられたのは、パーティーからの追放だった。
「え? どういうことだよ」
俺は困惑しながら、リーダーのラインハルトに聞き返す。
「だから、お前を今日限りでクビにすると言っているんだ!」
ラインハルトが俺に冷たく言い放つ。その目はゴミを見るかのように蔑んでいた。
「……理由を教えてくれないか?」
「お前がパーティーの足を引っ張るお荷物だからだよ」
「お荷物、だと……?」
「ああ、そうだ。お前はパーティーの後ろからぶらぶら弓を持って矢を放ってるだけじゃねぇか。邪魔なんだよ!」
「ち、違う! 俺は遠くから狙撃してるんだ!」
「は? 狙撃? お前、弓使いのくせに狙撃なんてできるのか?」
「あ、ああ」
「はっ、笑わせんなよ。お前のようなヘボ弓使いが狙撃? 笑わせるなよ」
ラインハルトは嘲笑うように言った。他のメンバーも俺の無能っぷりに笑いをこらえている様子だった。
「ほ、本当なんだ! 俺は弓使いの職業で最強の狙撃手なんだ!」
俺は必死に訴えたが、ラインハルトたちは「はいはい」と全く信じてくれない。
「お前、パーティーに貢献してるのか? 貢献してないだろ?」
「……ッ!?」
俺は息を飲んだ。確かに、俺はパーティーに貢献できていない。それは自分でも自覚していたことだ。
「お前みたいな無能がいると、俺たちの評判まで下がるんだよ!」
「そうだ! そうだ!」
「とっとと出ていけ!」
ラインハルトの言葉に他のメンバーも同調する。
「だから、お前はクビだ! 分かったな?」
「……ああ」
俺は唇を嚙んだ。悔しいが何も言い返せなかった。
「じゃあな、お荷物の無能弓使いさんよ!」
こうして、俺は【黄金の獅子王】を追い出されたのだった。
◇
「はぁ……これからどうしたらいいんだ」
俺は途方に暮れていた。このままパーティーを追放されて冒険者を続けるわけにはいかない。
「でも、追放されたらどこに行っても俺の無能っぷりは知れ渡って、雇ってくれるパーティーなんてないよなぁ……」
俺は自分がいかに無能で役立たずだったのかを痛感していた。今までは弓使いの職業のおかげで何とかやってこれたが、これからはそうはいかないだろう。弓使いなんて職業、誰も必要としてくれないのだ。
「はぁ……とりあえず隣国のアルカディア王国にでも行って、それから考えるか……」
俺は有り金をはたいて、隣国へ向かう馬車に乗り込んだ。
「ん?」
しばらくすると、遠くで何かが見える。俺はスキル【千里眼】で視力を上昇させ、遠くを見た。
「あれは……グラスウルフ?」
数キロ先にはやたら高そうな馬車が、グラスウルフの群れに襲撃されているのが見えた。
「ちっ、厄介だな……」
俺は急いで馬車から降りると、襲われている馬車に向かって走り出した。
「【流星矢(スターダスト・アロー)】!」
天に向かって矢を放つ。その矢は上空で無数に分裂し、そして流星群のように地上へと降り注ぐ。
「ギャンッ!」
この技は味方を巻き込む危険性がある技なのだが、俺は敵だけを正確に狙い撃つことができる。
「助けてくれて感謝する」
護衛の冒険者が俺にお礼の言葉を述べる。
「いや、いいんだ」
俺は当然のことをしただけだしな。そんなことより、俺はこの襲われていた馬車に乗っていた貴族が気になった。
「それより、あの馬車に乗っていたのはもしかして……」
「ああ、この国の第三王女であらせられるフィーナ様だ」
やっぱり。襲われていたのはこの国の王女様だったようだ。
「私からもお礼を言わせてください」
豪華そうな馬車から、一人の少女が降りてくる。サラサラとした金髪、サファイアのような青い瞳に、整った顔立ち。その少女からは気品があふれ出ていた。
「初めまして。私はフィーナ・フォン・アルカディアと申します」
「はぁ……どうも。冒険者のカイトです」
「この度は助けていただいて本当にありがとうございました」
フィーナ王女が深々と頭を下げる。
「い、いや! 当然のことをしたまでですから!」
俺は慌てて畏まった。まさか王女様に頭を下げられるとは思わなかったのだ。
「お礼に私の国であるアルカディア王国に来ていただけませんか?」
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