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「今日をもってお前を【黄金の獅子王】から追放する」


いつものように依頼を終えて、王都に戻ってきたその日の夜、リーダーのラインハルトから突然告げられたのは、パーティーからの追放だった。


「え? どういうことだよ」


俺は困惑しながら、リーダーのラインハルトに聞き返す。


「だから、お前を今日限りでクビにすると言っているんだ!」


ラインハルトが俺に冷たく言い放つ。その目はゴミを見るかのように蔑んでいた。


「……理由を教えてくれないか?」


「お前がパーティーの足を引っ張るお荷物だからだよ」


「お荷物、だと……?」


「ああ、そうだ。お前はパーティーの後ろからぶらぶら弓を持って矢を放ってるだけじゃねぇか。邪魔なんだよ!」


「ち、違う! 俺は遠くから狙撃してるんだ!」


「は? 狙撃? お前、弓使いのくせに狙撃なんてできるのか?」


「あ、ああ」


「はっ、笑わせんなよ。お前のようなヘボ弓使いが狙撃? 笑わせるなよ」


ラインハルトは嘲笑うように言った。他のメンバーも俺の無能っぷりに笑いをこらえている様子だった。


「ほ、本当なんだ! 俺は弓使いの職業で最強の狙撃手なんだ!」


俺は必死に訴えたが、ラインハルトたちは「はいはい」と全く信じてくれない。


「お前、パーティーに貢献してるのか? 貢献してないだろ?」


「……ッ!?」


俺は息を飲んだ。確かに、俺はパーティーに貢献できていない。それは自分でも自覚していたことだ。


「お前みたいな無能がいると、俺たちの評判まで下がるんだよ!」


「そうだ! そうだ!」


「とっとと出ていけ!」


ラインハルトの言葉に他のメンバーも同調する。


「だから、お前はクビだ! 分かったな?」


「……ああ」


俺は唇を嚙んだ。悔しいが何も言い返せなかった。


「じゃあな、お荷物の無能弓使いさんよ!」


こうして、俺は【黄金の獅子王】を追い出されたのだった。





「はぁ……これからどうしたらいいんだ」


俺は途方に暮れていた。このままパーティーを追放されて冒険者を続けるわけにはいかない。


「でも、追放されたらどこに行っても俺の無能っぷりは知れ渡って、雇ってくれるパーティーなんてないよなぁ……」


俺は自分がいかに無能で役立たずだったのかを痛感していた。今までは弓使いの職業のおかげで何とかやってこれたが、これからはそうはいかないだろう。弓使いなんて職業、誰も必要としてくれないのだ。


「はぁ……とりあえず隣国のアルカディア王国にでも行って、それから考えるか……」


俺は有り金をはたいて、隣国へ向かう馬車に乗り込んだ。


「ん?」


しばらくすると、遠くで何かが見える。俺はスキル【千里眼】で視力を上昇させ、遠くを見た。


「あれは……グラスウルフ?」


数キロ先にはやたら高そうな馬車が、グラスウルフの群れに襲撃されているのが見えた。


「ちっ、厄介だな……」


俺は急いで馬車から降りると、襲われている馬車に向かって走り出した。


「【流星矢(スターダスト・アロー)】!」


天に向かって矢を放つ。その矢は上空で無数に分裂し、そして流星群のように地上へと降り注ぐ。


「ギャンッ!」


この技は味方を巻き込む危険性がある技なのだが、俺は敵だけを正確に狙い撃つことができる。


「助けてくれて感謝する」


護衛の冒険者が俺にお礼の言葉を述べる。


「いや、いいんだ」


俺は当然のことをしただけだしな。そんなことより、俺はこの襲われていた馬車に乗っていた貴族が気になった。


「それより、あの馬車に乗っていたのはもしかして……」


「ああ、この国の第三王女であらせられるフィーナ様だ」


やっぱり。襲われていたのはこの国の王女様だったようだ。


「私からもお礼を言わせてください」


豪華そうな馬車から、一人の少女が降りてくる。サラサラとした金髪、サファイアのような青い瞳に、整った顔立ち。その少女からは気品があふれ出ていた。


「初めまして。私はフィーナ・フォン・アルカディアと申します」


「はぁ……どうも。冒険者のカイトです」


「この度は助けていただいて本当にありがとうございました」


フィーナ王女が深々と頭を下げる。


「い、いや! 当然のことをしたまでですから!」


俺は慌てて畏まった。まさか王女様に頭を下げられるとは思わなかったのだ。


「お礼に私の国であるアルカディア王国に来ていただけませんか?」
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