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3 魔法学校の聖人候補
407 おじさまへのお礼
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407
私がソーヤに指示して床のカーペットの上に置いたのは、直径1メートルはある巨大な《火の魔石》と《風の魔石》だった。魔石は見た目よりやや軽いとはいえ、この大きさのものは私にはピクリとも動かせない重さだ。
(でも、ソーヤは片手でホイホイ運んでる。相変わらず力持ちだ)
大きさからいったら伝説級のサイズの魔石だと言っていいだろう。値段は、多分つけられない。探したって見つかるようなものじゃないからだ。
でも、私は見つけた。
(まぁ、見つけたのは〝タネ石〟なんだけどね)
この2つの〝タネ石〟は、私が見つけた中でも最大のもので、私が消費しきれない日々の魔法力の受け皿になってきた〝タネ石〟でもある。それでもまだ魔石化しなかったため、ここ数日一気に魔法力を注ぎ込んで、やっと魔石化を完了させたものだ。
「メイロード、こんなものどこから……いやそれ以前に、こんなもの受け取れるわけがないだろう。これは、宝だぞ! とても使っていいものだとは思えん!」
「なぜですか? 使ってこその魔石じゃないですか。私は飾っておく趣味はありませんし、正直大きすぎて持て余していたぐらいなんです。それに、この《火の魔石》と《風の魔石》があったら、帝国でも類をみない巨大な《天舟》が作れるはずです。私はそのためにこれを使って欲しいんです!」
巨大な《天舟》建造の一言に、おじさまは息を飲んだ。
おじさまの構想から考えれば建造可能な残り2隻の《天舟》は、できるかぎり大型化し積載量を増やしたいはずだ。だが、そのためには動力系に高出力を出せる魔石が必要となる。特に《火の魔石》と《風の魔石》に関しては、大きければ大きいほど、最大出力を大幅に上昇させることができるようになるのだ。魔石の数で補うだけでは出せない安定した高出力を維持できる大きな魔石は、今のおじさまにこそ必要なものだ。
「何十億でも、何百億でも、関係ないんです。
これは〝信頼への対価〟なんです。何も聞かず、高価な《天舟》を貸してくれるおじさまに使って欲しいんですよ!」
サイデムおじさまは床に据えられた赤と青の鈍い光を放つ2つの巨大な魔石を見ながら暫くの間唸っていたが、ひとつ頷いてから私を見てこう言った。
「貰えない」
「えー、なんで……」
「だが、借りる」
「へっ?」
「借りると言っている。お前の言う通り、俺は今、この2つの魔石が必要だ。だが、どう考えても買い取れるような代物じゃない。だから、借りる」
おじさまは、これからこの2つの魔石を使って建造する、超大型《天舟》による輸送が稼ぎ出す利益に応じて配当を私に支払うと言うのだ。
「契約書に署名しろ。でなければとても借りられん」
そこからは、しばし交渉。最初は純利益の5割とか言うおじさまに、私が断固値下げを要求し、ゴネにゴネて、なんとか2割4分で交渉妥結。
「そんな額では、一生かかっても、この魔石の価値には追いつかんぞ」
「いいんですって、もしお金が必要になったら相談するかもしれないですが、今の私がこれ以上収入を増やしても使い道がないですよ!」
もう最後は喧嘩腰の交渉で、おじさまをねじ伏せた。
「お前も大概強情だな!!」
書類を確認している間もサイデムおじさまは呆れ顔だが、なんだか楽しげにも見える。
この《天舟》が完成すれば、サイデム商会は、この世界で唯一民間の高速巨大流通設備を持つことになる。文字通り世界一の高速流通網だ。
今までとは比較にならないスピードで大量の商品を行き来させ、莫大な利益を得ることになるだろう。
軍部や貴族からの大量注文にも即時対応できることは、拠点をイスに持ったまま、おじさまのサイデム商会が、帝国中の大都市をほぼ時間差なく全てカバーできるということだ。
「〝帝国の代理人〟らしくて、よろしいんじゃないですか」
私がサインした書類を渡すと、サイデムおじさまは私の持ってきたお弁当をつまみ食いしながら、苦笑いのような照れ隠しのような顔をしている。
そして、帰る私にこう言った。
「魔法学校では気をつけることだ。
お前には間違いなく、比類なき魔法使いの才能があるのだろう。
それは、お前を助けるだろうが、一歩でも間違えれば、追い詰めもする危険な才能だ。
魔法使いの世界でも、商人の冷静な目と耳を忘れるなよ。
状況が複雑になった時は、誰が〝得〟をし、誰が〝損〟をするのか、冷静に見極めろ。
そこに、答えがあるかもしれないぞ」
私はおじさまの言葉に頷いて、部屋を出た。
(では、商人の目を持った魔法使い見習いとして、頑張りましょうか)
丸めた契約書の写しを手に持ち、私は魔法学校へ戻るため《無限回廊の扉》を開けた。
私がソーヤに指示して床のカーペットの上に置いたのは、直径1メートルはある巨大な《火の魔石》と《風の魔石》だった。魔石は見た目よりやや軽いとはいえ、この大きさのものは私にはピクリとも動かせない重さだ。
(でも、ソーヤは片手でホイホイ運んでる。相変わらず力持ちだ)
大きさからいったら伝説級のサイズの魔石だと言っていいだろう。値段は、多分つけられない。探したって見つかるようなものじゃないからだ。
でも、私は見つけた。
(まぁ、見つけたのは〝タネ石〟なんだけどね)
この2つの〝タネ石〟は、私が見つけた中でも最大のもので、私が消費しきれない日々の魔法力の受け皿になってきた〝タネ石〟でもある。それでもまだ魔石化しなかったため、ここ数日一気に魔法力を注ぎ込んで、やっと魔石化を完了させたものだ。
「メイロード、こんなものどこから……いやそれ以前に、こんなもの受け取れるわけがないだろう。これは、宝だぞ! とても使っていいものだとは思えん!」
「なぜですか? 使ってこその魔石じゃないですか。私は飾っておく趣味はありませんし、正直大きすぎて持て余していたぐらいなんです。それに、この《火の魔石》と《風の魔石》があったら、帝国でも類をみない巨大な《天舟》が作れるはずです。私はそのためにこれを使って欲しいんです!」
巨大な《天舟》建造の一言に、おじさまは息を飲んだ。
おじさまの構想から考えれば建造可能な残り2隻の《天舟》は、できるかぎり大型化し積載量を増やしたいはずだ。だが、そのためには動力系に高出力を出せる魔石が必要となる。特に《火の魔石》と《風の魔石》に関しては、大きければ大きいほど、最大出力を大幅に上昇させることができるようになるのだ。魔石の数で補うだけでは出せない安定した高出力を維持できる大きな魔石は、今のおじさまにこそ必要なものだ。
「何十億でも、何百億でも、関係ないんです。
これは〝信頼への対価〟なんです。何も聞かず、高価な《天舟》を貸してくれるおじさまに使って欲しいんですよ!」
サイデムおじさまは床に据えられた赤と青の鈍い光を放つ2つの巨大な魔石を見ながら暫くの間唸っていたが、ひとつ頷いてから私を見てこう言った。
「貰えない」
「えー、なんで……」
「だが、借りる」
「へっ?」
「借りると言っている。お前の言う通り、俺は今、この2つの魔石が必要だ。だが、どう考えても買い取れるような代物じゃない。だから、借りる」
おじさまは、これからこの2つの魔石を使って建造する、超大型《天舟》による輸送が稼ぎ出す利益に応じて配当を私に支払うと言うのだ。
「契約書に署名しろ。でなければとても借りられん」
そこからは、しばし交渉。最初は純利益の5割とか言うおじさまに、私が断固値下げを要求し、ゴネにゴネて、なんとか2割4分で交渉妥結。
「そんな額では、一生かかっても、この魔石の価値には追いつかんぞ」
「いいんですって、もしお金が必要になったら相談するかもしれないですが、今の私がこれ以上収入を増やしても使い道がないですよ!」
もう最後は喧嘩腰の交渉で、おじさまをねじ伏せた。
「お前も大概強情だな!!」
書類を確認している間もサイデムおじさまは呆れ顔だが、なんだか楽しげにも見える。
この《天舟》が完成すれば、サイデム商会は、この世界で唯一民間の高速巨大流通設備を持つことになる。文字通り世界一の高速流通網だ。
今までとは比較にならないスピードで大量の商品を行き来させ、莫大な利益を得ることになるだろう。
軍部や貴族からの大量注文にも即時対応できることは、拠点をイスに持ったまま、おじさまのサイデム商会が、帝国中の大都市をほぼ時間差なく全てカバーできるということだ。
「〝帝国の代理人〟らしくて、よろしいんじゃないですか」
私がサインした書類を渡すと、サイデムおじさまは私の持ってきたお弁当をつまみ食いしながら、苦笑いのような照れ隠しのような顔をしている。
そして、帰る私にこう言った。
「魔法学校では気をつけることだ。
お前には間違いなく、比類なき魔法使いの才能があるのだろう。
それは、お前を助けるだろうが、一歩でも間違えれば、追い詰めもする危険な才能だ。
魔法使いの世界でも、商人の冷静な目と耳を忘れるなよ。
状況が複雑になった時は、誰が〝得〟をし、誰が〝損〟をするのか、冷静に見極めろ。
そこに、答えがあるかもしれないぞ」
私はおじさまの言葉に頷いて、部屋を出た。
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