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第14話 困った事
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そうして翌日から北杜さんは私との関係を周囲に隠さず、話すようになった。
「深春は俺の婚約者だ」
それまでお付き合いの話も何もなかった中で、結婚という話が出たのは皆も驚いたようだが、特に追及されたり非難される事なく、祝福をされる。
(昨日央さんもいたものね)
北杜さんや私が社長と親しいという事を、あのやり取りで何となく皆察したのだと思う。
遠くからじろじろと見られる事はあるが、わざわざ聞きに来るものは少ない。
少ないという事は聞きに来た者もいるという事なのだけど……。
「天羽生さん、一体どういう事なんですか?」
わざわざ女子トイレで詰め寄ってきたのは姫華さんだ。
「北杜さんと結婚するって噂が流れているんですけど、本当ですか?」
「噂ではなくて本当の事です、私と北杜さんはお付き合いしていますから」
そう伝えた途端、姫華さんの目が潤む。
「酷い、あたしが北杜さんの事を好きなのを知っていて黙っていたなんて」
そんな事を言われても困ってしまう。一方的に縁を繋げと言われて了承なんか出来ないもの。
(そもそも姫華さん、他の男性とも噂になっていたわよね)
北杜さん以外の男性と食事に言った話など私の耳にも入るのだもの、きっとたくさんの人も知っているわ。
そんな人を北杜さんが選ぶわけがない。今なら自信を持ってそう言えるわ。
「色々な事情があって言えなかったのです」
多分まともに話を聞いては貰えないと思いながらも、弁明はしておかないと後でどう言われるかわからない。
「そう言って、本当は邪魔して来たんじゃない?」
姫華さんの味方で同僚の二人も、睨みつけながらそんな事を言ってくる。
「邪魔なんてしていないですよ。そもそも北杜さんは姫華さんを誘った事もないですよね、どうしてそのような話になるのですか?」
それを聞いた三人はびっくりしていた。恐らく私が言い返すなどないと思ったのだろう。
(五百雀家の一員となるのだから)
北杜さんの告白を受けて、心の中でそんな自負が芽生えたからこそ言い返す。
「そんな事ないわ、北杜さんはあたしの事を可愛いって言ってくれるし、飲み会の時だって隣に来てくれるもの」
「違います。可愛いというのは必ず側に誰かがいる時に周囲に合わせて言っているだけですよ。何かイベントの時はあなたが勝手に隣に来るのだと北杜さんは言っていたわ。それらの話はあなたが勝手に言いふらしたものよ」
これらは北杜さんが愚痴のように聞かせてくれた事だ。
姫華さんに言われた事や、今まで聞いた話を伝えたら、嫌な顔をしながら吐き出された内容だ。
「そもそも俺はああいうのは好きじゃない。近づく事もしていないのに」
思い起こせば仕事以外で、北杜さんが自ら姫華さんに近寄ることは少なかったように思える。
二人で話す時に可愛いなどとは言ってなかったし、飲みの時もトイレと言って席を外し、その後ちゃっかり私の隣に来るような人だもの。
(そう考えると私って思ったよりも愛されていた?)
思わず北杜さんの好意を再確認して嬉しくなるが、今はそんな状況じゃない。
「天羽生さん、最低。そんなに性格悪いなんて思わなかったわ」
(女子トイレという他の人が入りづらい空間で問い詰めて来る人達に言われたくはないのだけれど)
この人たちはただただ私を追い詰めたいだけだと気づいているから、何も響かない。
北杜さんの告白を直接聞いたから、あれから心が強くなった気がするわ。
支えてくれる人がいるって言うのは良い事ね。
「話はこれで終わりですね、失礼します」
こうまで言われて話を続ける気はないし、他の人が来る気配もするし、私はまた手を掴まれないよう気をつけて素早く外に出た。
こういう事があると本当に困ってしまう。
もうこのような言いがかりがないと良いのだけれど。
「深春は俺の婚約者だ」
それまでお付き合いの話も何もなかった中で、結婚という話が出たのは皆も驚いたようだが、特に追及されたり非難される事なく、祝福をされる。
(昨日央さんもいたものね)
北杜さんや私が社長と親しいという事を、あのやり取りで何となく皆察したのだと思う。
遠くからじろじろと見られる事はあるが、わざわざ聞きに来るものは少ない。
少ないという事は聞きに来た者もいるという事なのだけど……。
「天羽生さん、一体どういう事なんですか?」
わざわざ女子トイレで詰め寄ってきたのは姫華さんだ。
「北杜さんと結婚するって噂が流れているんですけど、本当ですか?」
「噂ではなくて本当の事です、私と北杜さんはお付き合いしていますから」
そう伝えた途端、姫華さんの目が潤む。
「酷い、あたしが北杜さんの事を好きなのを知っていて黙っていたなんて」
そんな事を言われても困ってしまう。一方的に縁を繋げと言われて了承なんか出来ないもの。
(そもそも姫華さん、他の男性とも噂になっていたわよね)
北杜さん以外の男性と食事に言った話など私の耳にも入るのだもの、きっとたくさんの人も知っているわ。
そんな人を北杜さんが選ぶわけがない。今なら自信を持ってそう言えるわ。
「色々な事情があって言えなかったのです」
多分まともに話を聞いては貰えないと思いながらも、弁明はしておかないと後でどう言われるかわからない。
「そう言って、本当は邪魔して来たんじゃない?」
姫華さんの味方で同僚の二人も、睨みつけながらそんな事を言ってくる。
「邪魔なんてしていないですよ。そもそも北杜さんは姫華さんを誘った事もないですよね、どうしてそのような話になるのですか?」
それを聞いた三人はびっくりしていた。恐らく私が言い返すなどないと思ったのだろう。
(五百雀家の一員となるのだから)
北杜さんの告白を受けて、心の中でそんな自負が芽生えたからこそ言い返す。
「そんな事ないわ、北杜さんはあたしの事を可愛いって言ってくれるし、飲み会の時だって隣に来てくれるもの」
「違います。可愛いというのは必ず側に誰かがいる時に周囲に合わせて言っているだけですよ。何かイベントの時はあなたが勝手に隣に来るのだと北杜さんは言っていたわ。それらの話はあなたが勝手に言いふらしたものよ」
これらは北杜さんが愚痴のように聞かせてくれた事だ。
姫華さんに言われた事や、今まで聞いた話を伝えたら、嫌な顔をしながら吐き出された内容だ。
「そもそも俺はああいうのは好きじゃない。近づく事もしていないのに」
思い起こせば仕事以外で、北杜さんが自ら姫華さんに近寄ることは少なかったように思える。
二人で話す時に可愛いなどとは言ってなかったし、飲みの時もトイレと言って席を外し、その後ちゃっかり私の隣に来るような人だもの。
(そう考えると私って思ったよりも愛されていた?)
思わず北杜さんの好意を再確認して嬉しくなるが、今はそんな状況じゃない。
「天羽生さん、最低。そんなに性格悪いなんて思わなかったわ」
(女子トイレという他の人が入りづらい空間で問い詰めて来る人達に言われたくはないのだけれど)
この人たちはただただ私を追い詰めたいだけだと気づいているから、何も響かない。
北杜さんの告白を直接聞いたから、あれから心が強くなった気がするわ。
支えてくれる人がいるって言うのは良い事ね。
「話はこれで終わりですね、失礼します」
こうまで言われて話を続ける気はないし、他の人が来る気配もするし、私はまた手を掴まれないよう気をつけて素早く外に出た。
こういう事があると本当に困ってしまう。
もうこのような言いがかりがないと良いのだけれど。
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