67 / 70
第67話 期待と不安(ポエット視点)
しおりを挟む
「良かったわ、エカテリーナ様にようやく平穏が訪れて」
私はホッとしながら荷造りをしていた。
辺境伯領に移るという話は本格的に進められており、しかもあちらの辺境伯様の所にリヴィオが養子となる話も出ているとか。
嫡男は要る為、辺境伯領に来てくれる二人の後ろ盾になってくれるという事での提案らしい。
(子爵家よりは箔は付くし、身分差を気にするリヴィオにはいいのかもね)
エカテリーナ様が気にするとは思えないけれど、リヴィオの懸念が一つ消えるのは良い事だ。
無論心配事はまだまだあるので、私も気を引き締めないと。
今後もエカテリーナ様の手を煩わせないように、私とリヴィオは動いていくつもりだ。
その為に王宮の侍女も辞め、エカテリーナ様付となったのだから。侍女兼護衛としてどこまでも付き従う覚悟は出来ている。
ちなみに私の代わりにローシュ付きの侍女となったリルハは、主がいなくなったことにより普通の侍女となったわけだけど、第二王子付という事で驕って居た為、周囲の者と馴染めていないそうだ。
エカテリーナ様の元に戻りたいと泣きついてきたが、エカテリーナ様は丁重にお断りした。
「ポエットが居るもの、これ以上侍女はいらないわ。それにリルハは私の元ではなく、王宮の方がいいと思うの」
頑張ってね、とにこやかにリルハに伝えたのはとても印象的だった。
それと共に私はエカテリーナ様に選ばれたという事に、安堵したわ。
やはり多少の心配はしていたので。
その旨を正直に話すと、エカテリーナ様は安心させるようにか、抱きしめてくれた。
「今更他の人なんて嫌よ。寧ろ私が捨てられるのではないかと思ったもの。一緒に辺境伯領に来てくれるって言ってくれて、ありがとう」
そんな感謝をされて、胸がほっこりする。
やがて卒業式の日となり、国の代表としての挨拶にカルロス様もいらした。
本来ならば弟もいたはずの卒業式で挨拶とは、何とも言えない気持ちになる。
「新たな門出を祝うこの場で言う事ではないかもしれないが――」
カルロス様は王家の過ちを謝罪し、国を変えたいという決意を皆の前で宣言する。そしてその協力を皆に仰ぎたいと。
「難しく考えなくていい。俺が道を違えないように見ていてくれ。それだけをお願いしたい」
ここに居るもの達の大半はこの後王城に務めたり、自らの領地に帰り、家業を継ぐものが殆どだ。
支えられるだけではなく、今後は国を支える一部となるわけで、王家との関係は切っても切れない。
弟の件で自己を省みているのだろうか。
最後に激励の言葉とこれからの皆の幸せを願う事を述べて祝辞は終わった。
この宣言をどう捉えるか。
王家が弱体している今を好機として攻め入るか、立て直しを図る為に協力を行うのか。
エカテリーナ様もリヴィオも、ただ静かに耳を傾けていた。
ミリティア様やブライトン様も表情も変えていない。
そうして式が終わり、引っ越しとなる。荷物も多く人数も多いために、あちらに行くまでに通常よりも日数はかかるが、エカテリーナ様はご機嫌だ。
知らない土地に行く不安よりも楽しみが勝っていることはとてもいい事だ。
リヴィオが一緒な事もあるが、視察以外にこうした馬車の旅などしたことがない、というのも大きいらしい。
辺境伯領で生活も落ち着いたら式も挙げる予定なので、エカテリーナ様の笑顔は増えていた。
未来を考えられるほどエカテリーナ様が気を持ち直した事はとても喜ばしい。
ただ喜ばしいことばかりではないのが、現実だ。
私達は王都を離れるわけだけれど、カルロス様は治世を築くことが出来るのだろうか。
まぁカルロス様の婚約者は隣国の王女様である、とても頼もしい協力者なので、そこらの貴族では手が出せないから謀反は難しいだろう。
ローシュの失態や国王の不甲斐なさを知っても隣国は婚約の破棄はせず、寧ろ王の交代を早くしろと後押ししているそうだが……。
カルロス様が上手く立ち回らないとバークレイが乗っ取られるかもという別な危険性もある。
(気になるのが今から行く辺境伯領、そこが件の国との境なのよね)
その懸念についてはエカテリーナ様にも伝えたが、大丈夫だと言われてしまった。
カルロス様の婚約者様と会った事があるエカテリーナ様の言葉だから信じたいが、どうしてもまだ疑ってしまう。
その心配を取り払う為にもカルロス様と婚約者様にはぜひ仲良くして頂き、この国と彼の国を安住の地にしてもらいたい。
国境沿いでいざこざが起きない事を祈るばかりだ。
私の願いはただ一つ、エカテリーナ様の幸せだけなのだから。
私はホッとしながら荷造りをしていた。
辺境伯領に移るという話は本格的に進められており、しかもあちらの辺境伯様の所にリヴィオが養子となる話も出ているとか。
嫡男は要る為、辺境伯領に来てくれる二人の後ろ盾になってくれるという事での提案らしい。
(子爵家よりは箔は付くし、身分差を気にするリヴィオにはいいのかもね)
エカテリーナ様が気にするとは思えないけれど、リヴィオの懸念が一つ消えるのは良い事だ。
無論心配事はまだまだあるので、私も気を引き締めないと。
今後もエカテリーナ様の手を煩わせないように、私とリヴィオは動いていくつもりだ。
その為に王宮の侍女も辞め、エカテリーナ様付となったのだから。侍女兼護衛としてどこまでも付き従う覚悟は出来ている。
ちなみに私の代わりにローシュ付きの侍女となったリルハは、主がいなくなったことにより普通の侍女となったわけだけど、第二王子付という事で驕って居た為、周囲の者と馴染めていないそうだ。
エカテリーナ様の元に戻りたいと泣きついてきたが、エカテリーナ様は丁重にお断りした。
「ポエットが居るもの、これ以上侍女はいらないわ。それにリルハは私の元ではなく、王宮の方がいいと思うの」
頑張ってね、とにこやかにリルハに伝えたのはとても印象的だった。
それと共に私はエカテリーナ様に選ばれたという事に、安堵したわ。
やはり多少の心配はしていたので。
その旨を正直に話すと、エカテリーナ様は安心させるようにか、抱きしめてくれた。
「今更他の人なんて嫌よ。寧ろ私が捨てられるのではないかと思ったもの。一緒に辺境伯領に来てくれるって言ってくれて、ありがとう」
そんな感謝をされて、胸がほっこりする。
やがて卒業式の日となり、国の代表としての挨拶にカルロス様もいらした。
本来ならば弟もいたはずの卒業式で挨拶とは、何とも言えない気持ちになる。
「新たな門出を祝うこの場で言う事ではないかもしれないが――」
カルロス様は王家の過ちを謝罪し、国を変えたいという決意を皆の前で宣言する。そしてその協力を皆に仰ぎたいと。
「難しく考えなくていい。俺が道を違えないように見ていてくれ。それだけをお願いしたい」
ここに居るもの達の大半はこの後王城に務めたり、自らの領地に帰り、家業を継ぐものが殆どだ。
支えられるだけではなく、今後は国を支える一部となるわけで、王家との関係は切っても切れない。
弟の件で自己を省みているのだろうか。
最後に激励の言葉とこれからの皆の幸せを願う事を述べて祝辞は終わった。
この宣言をどう捉えるか。
王家が弱体している今を好機として攻め入るか、立て直しを図る為に協力を行うのか。
エカテリーナ様もリヴィオも、ただ静かに耳を傾けていた。
ミリティア様やブライトン様も表情も変えていない。
そうして式が終わり、引っ越しとなる。荷物も多く人数も多いために、あちらに行くまでに通常よりも日数はかかるが、エカテリーナ様はご機嫌だ。
知らない土地に行く不安よりも楽しみが勝っていることはとてもいい事だ。
リヴィオが一緒な事もあるが、視察以外にこうした馬車の旅などしたことがない、というのも大きいらしい。
辺境伯領で生活も落ち着いたら式も挙げる予定なので、エカテリーナ様の笑顔は増えていた。
未来を考えられるほどエカテリーナ様が気を持ち直した事はとても喜ばしい。
ただ喜ばしいことばかりではないのが、現実だ。
私達は王都を離れるわけだけれど、カルロス様は治世を築くことが出来るのだろうか。
まぁカルロス様の婚約者は隣国の王女様である、とても頼もしい協力者なので、そこらの貴族では手が出せないから謀反は難しいだろう。
ローシュの失態や国王の不甲斐なさを知っても隣国は婚約の破棄はせず、寧ろ王の交代を早くしろと後押ししているそうだが……。
カルロス様が上手く立ち回らないとバークレイが乗っ取られるかもという別な危険性もある。
(気になるのが今から行く辺境伯領、そこが件の国との境なのよね)
その懸念についてはエカテリーナ様にも伝えたが、大丈夫だと言われてしまった。
カルロス様の婚約者様と会った事があるエカテリーナ様の言葉だから信じたいが、どうしてもまだ疑ってしまう。
その心配を取り払う為にもカルロス様と婚約者様にはぜひ仲良くして頂き、この国と彼の国を安住の地にしてもらいたい。
国境沿いでいざこざが起きない事を祈るばかりだ。
私の願いはただ一つ、エカテリーナ様の幸せだけなのだから。
187
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢に転生したと気付いたら、咄嗟に婚約者の記憶を失くしたフリをしてしまった。
ねーさん
恋愛
あ、私、悪役令嬢だ。
クリスティナは婚約者であるアレクシス王子に近付くフローラを階段から落とそうとして、誤って自分が落ちてしまう。
気を失ったクリスティナの頭に前世で読んだ小説のストーリーが甦る。自分がその小説の悪役令嬢に転生したと気付いたクリスティナは、目が覚めた時「貴方は誰?」と咄嗟に記憶を失くしたフリをしてしまって──…
恋した殿下、愛のない婚約は今日で終わりです
百門一新
恋愛
旧題:恋した殿下、あなたに捨てられることにします〜魔力を失ったのに、なかなか婚約解消にいきません〜
魔力量、国内第二位で王子様の婚約者になった私。けれど、恋をしたその人は、魔法を使う才能もなく幼い頃に大怪我をした私を認めておらず、――そして結婚できる年齢になった私を、運命はあざ笑うかのように、彼に相応しい可愛い伯爵令嬢を寄こした。想うことにも疲れ果てた私は、彼への想いを捨て、彼のいない国に嫁ぐべく。だから、この魔力を捨てます――。
※「小説家になろう」、「カクヨム」でも掲載
理想の女性を見つけた時には、運命の人を愛人にして白い結婚を宣言していました
ぺきぺき
恋愛
王家の次男として生まれたヨーゼフには幼い頃から決められていた婚約者がいた。兄の補佐として育てられ、兄の息子が立太子した後には臣籍降下し大公になるよていだった。
このヨーゼフ、優秀な頭脳を持ち、立派な大公となることが期待されていたが、幼い頃に見た絵本のお姫様を理想の女性として探し続けているという残念なところがあった。
そしてついに貴族学園で絵本のお姫様とそっくりな令嬢に出会う。
ーーーー
若気の至りでやらかしたことに苦しめられる主人公が最後になんとか幸せになる話。
作者別作品『二人のエリーと遅れてあらわれるヒーローたち』のスピンオフになっていますが、単体でも読めます。
完結まで執筆済み。毎日四話更新で4/24に完結予定。
第一章 無計画な婚約破棄
第二章 無計画な白い結婚
第三章 無計画な告白
第四章 無計画なプロポーズ
第五章 無計画な真実の愛
エピローグ
婚約者から婚約破棄をされて喜んだのに、どうも様子がおかしい
棗
恋愛
婚約者には初恋の人がいる。
王太子リエトの婚約者ベルティーナ=アンナローロ公爵令嬢は、呼び出された先で婚約破棄を告げられた。婚約者の隣には、家族や婚約者が常に可愛いと口にする従妹がいて。次の婚約者は従妹になると。
待ちに待った婚約破棄を喜んでいると思われる訳にもいかず、冷静に、でも笑顔は忘れずに二人の幸せを願ってあっさりと従者と部屋を出た。
婚約破棄をされた件で父に勘当されるか、何処かの貴族の後妻にされるか待っていても一向に婚約破棄の話をされない。また、婚約破棄をしたのに何故か王太子から呼び出しの声が掛かる。
従者を連れてさっさと家を出たいべルティーナと従者のせいで拗らせまくったリエトの話。
※なろうさんにも公開しています。
※短編→長編に変更しました(2023.7.19)
婚約破棄を望むなら〜私の愛した人はあなたじゃありません〜
みおな
恋愛
王家主催のパーティーにて、私の婚約者がやらかした。
「お前との婚約を破棄する!!」
私はこの馬鹿何言っているんだと思いながらも、婚約破棄を受け入れてやった。
だって、私は何ひとつ困らない。
困るのは目の前でふんぞり返っている元婚約者なのだから。
白い結婚を告げようとした王子は、冷遇していた妻に恋をする
夏生 羽都
恋愛
ランゲル王国の王太子ヘンリックは結婚式を挙げた夜の寝室で、妻となったローゼリアに白い結婚を宣言する、
……つもりだった。
夫婦の寝室に姿を見せたヘンリックを待っていたのは、妻と同じ髪と瞳の色を持った見知らぬ美しい女性だった。
「『愛するマリーナのために、私はキミとは白い結婚とする』でしたか? 早くおっしゃってくださいな」
そう言って椅子に座っていた美しい女性は悠然と立ち上がる。
「そ、その声はっ、ローゼリア……なのか?」
女性の声を聞いた事で、ヘンリックはやっと彼女が自分の妻となったローゼリアなのだと気付いたのだが、驚きのあまり白い結婚を宣言する事も出来ずに逃げるように自分の部屋へと戻ってしまうのだった。
※こちらは「裏切られた令嬢は、30歳も年上の伯爵さまに嫁ぎましたが、白い結婚ですわ。」のIFストーリーです。
ヘンリック(王太子)が主役となります。
また、上記作品をお読みにならなくてもお楽しみ頂ける内容となっております。
【完結】今日も旦那は愛人に尽くしている~なら私もいいわよね?~
コトミ
恋愛
結婚した夫には愛人がいた。辺境伯の令嬢であったビオラには男兄弟がおらず、子爵家のカールを婿として屋敷に向かい入れた。半年の間は良かったが、それから事態は急速に悪化していく。伯爵であり、領地も統治している夫に平民の愛人がいて、屋敷の隣にその愛人のための別棟まで作って愛人に尽くす。こんなことを我慢できる夫人は私以外に何人いるのかしら。そんな考えを巡らせながら、ビオラは毎日夫の代わりに領地の仕事をこなしていた。毎晩夫のカールは愛人の元へ通っている。その間ビオラは休む暇なく仕事をこなした。ビオラがカールに反論してもカールは「君も愛人を作ればいいじゃないか」の一点張り。我慢の限界になったビオラはずっと大切にしてきた屋敷を飛び出した。
そしてその飛び出した先で出会った人とは?
(できる限り毎日投稿を頑張ります。誤字脱字、世界観、ストーリー構成、などなどはゆるゆるです)
婚約者を交換ですか?いいですよ。ただし返品はできませんので悪しからず…
ゆずこしょう
恋愛
「メーティア!私にあなたの婚約者を譲ってちょうだい!!」
国王主催のパーティーの最中、すごい足音で近寄ってきたのはアーテリア・ジュアン侯爵令嬢(20)だ。
皆突然の声に唖然としている。勿論、私もだ。
「アーテリア様には婚約者いらっしゃるじゃないですか…」
20歳を超えて婚約者が居ない方がおかしいものだ…
「ではこうしましょう?私と婚約者を交換してちょうだい!」
「交換ですか…?」
果たしてメーティアはどうするのか…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる