【本編完結】婚約者を守ろうとしたら寧ろ盾にされました。腹が立ったので記憶を失ったふりをして婚約解消を目指します。

しろねこ。

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第67話 期待と不安(ポエット視点)

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「良かったわ、エカテリーナ様にようやく平穏が訪れて」
 私はホッとしながら荷造りをしていた。

 辺境伯領に移るという話は本格的に進められており、しかもあちらの辺境伯様の所にリヴィオが養子となる話も出ているとか。

 嫡男は要る為、辺境伯領に来てくれる二人の後ろ盾になってくれるという事での提案らしい。

(子爵家よりは箔は付くし、身分差を気にするリヴィオにはいいのかもね)

 エカテリーナ様が気にするとは思えないけれど、リヴィオの懸念が一つ消えるのは良い事だ。

 無論心配事はまだまだあるので、私も気を引き締めないと。

 今後もエカテリーナ様の手を煩わせないように、私とリヴィオは動いていくつもりだ。

 その為に王宮の侍女も辞め、エカテリーナ様付となったのだから。侍女兼護衛としてどこまでも付き従う覚悟は出来ている。

 ちなみに私の代わりにローシュ付きの侍女となったリルハは、主がいなくなったことにより普通の侍女となったわけだけど、第二王子付という事で驕って居た為、周囲の者と馴染めていないそうだ。

 エカテリーナ様の元に戻りたいと泣きついてきたが、エカテリーナ様は丁重にお断りした。

「ポエットが居るもの、これ以上侍女はいらないわ。それにリルハは私の元ではなく、王宮の方がいいと思うの」

 頑張ってね、とにこやかにリルハに伝えたのはとても印象的だった。

 それと共に私はエカテリーナ様に選ばれたという事に、安堵したわ。

 やはり多少の心配はしていたので。

 その旨を正直に話すと、エカテリーナ様は安心させるようにか、抱きしめてくれた。

「今更他の人なんて嫌よ。寧ろ私が捨てられるのではないかと思ったもの。一緒に辺境伯領に来てくれるって言ってくれて、ありがとう」

 そんな感謝をされて、胸がほっこりする。

 やがて卒業式の日となり、国の代表としての挨拶にカルロス様もいらした。

 本来ならば弟もいたはずの卒業式で挨拶とは、何とも言えない気持ちになる。

「新たな門出を祝うこの場で言う事ではないかもしれないが――」

 カルロス様は王家の過ちを謝罪し、国を変えたいという決意を皆の前で宣言する。そしてその協力を皆に仰ぎたいと。

「難しく考えなくていい。俺が道を違えないように見ていてくれ。それだけをお願いしたい」

 ここに居るもの達の大半はこの後王城に務めたり、自らの領地に帰り、家業を継ぐものが殆どだ。

 支えられるだけではなく、今後は国を支える一部となるわけで、王家との関係は切っても切れない。

 弟の件で自己を省みているのだろうか。

 最後に激励の言葉とこれからの皆の幸せを願う事を述べて祝辞は終わった。

 この宣言をどう捉えるか。

 王家が弱体している今を好機として攻め入るか、立て直しを図る為に協力を行うのか。

 エカテリーナ様もリヴィオも、ただ静かに耳を傾けていた。

 ミリティア様やブライトン様も表情も変えていない。




 そうして式が終わり、引っ越しとなる。荷物も多く人数も多いために、あちらに行くまでに通常よりも日数はかかるが、エカテリーナ様はご機嫌だ。

 知らない土地に行く不安よりも楽しみが勝っていることはとてもいい事だ。

 リヴィオが一緒な事もあるが、視察以外にこうした馬車の旅などしたことがない、というのも大きいらしい。

 辺境伯領で生活も落ち着いたら式も挙げる予定なので、エカテリーナ様の笑顔は増えていた。

 未来を考えられるほどエカテリーナ様が気を持ち直した事はとても喜ばしい。


 ただ喜ばしいことばかりではないのが、現実だ。

 私達は王都を離れるわけだけれど、カルロス様は治世を築くことが出来るのだろうか。

 まぁカルロス様の婚約者は隣国の王女様である、とても頼もしい協力者なので、そこらの貴族では手が出せないから謀反は難しいだろう。

 ローシュの失態や国王の不甲斐なさを知っても隣国は婚約の破棄はせず、寧ろ王の交代を早くしろと後押ししているそうだが……。

 カルロス様が上手く立ち回らないとバークレイが乗っ取られるかもという別な危険性もある。

(気になるのが今から行く辺境伯領、そこが件の国との境なのよね)

 その懸念についてはエカテリーナ様にも伝えたが、大丈夫だと言われてしまった。

 カルロス様の婚約者様と会った事があるエカテリーナ様の言葉だから信じたいが、どうしてもまだ疑ってしまう。

 その心配を取り払う為にもカルロス様と婚約者様にはぜひ仲良くして頂き、この国と彼の国を安住の地にしてもらいたい。

 国境沿いでいざこざが起きない事を祈るばかりだ。

 私の願いはただ一つ、エカテリーナ様の幸せだけなのだから。

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