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幼少期編
お茶会での騒動 後編
しおりを挟む「シャルティ.サングイス!貴様の様な不義の子が何故神聖な王宮にいる!即刻出ていけ!」
辺りが騒然とする
美しく気品ある王宮に相応しくない騒音…それは確かにレオンハルト殿下の声だ…
今、今なんて言っていた!?シャルティ!?不義の子………?
誰に向かって言った!?何を勘違いしているんだ!?レオンハルト殿下は何をしようとしているんだ…!?!
あんなにも注意していたのに…………なぜ、おれはシャルティから離れたんだ…!!!
レオンハルト殿下のただならぬ声に、人混みになりつつあるデザートが置いてあった場所の周囲、シャルティか侯爵令嬢と楽しそうに話をしていた場所に急いで向う
いくら子供とはいえそれなりの人数が同じ場所に集まれば前に進みにくい…必死に前を譲って貰いながら足を進める、一刻も早くシャルティの゙元に向かいたかった…
「俺は知っているぞ…お前、サングイス家の汚点だろう?宰相ともあろう人が他の場所で女を作り、妻に逃げられ愛人を囲ったと、その事実を知らないとでも思っているのか?
公爵令嬢に上手く収まったつもりだろうがそうはいかない!俺は悪を許さない!!
………おい、シャルティ嬢?聞いているのか?無視か?この俺を無視していいと思ってるのか?!!!
………ちっ、ふざけるな!!!出ていけ!不愉快だ!!王宮を汚すな!」
何を言っているんだこの殿下は…あること無いこと大勢の人前で言うことじゃない…!
おれが人混みをかき分け、なんとかシャルティとレオンハルト殿下がいる場所に辿り着いた時、殿下は怯えて地面に座り込み言葉を発することの出来ないシャルティに苛立ち、手に持っていたグラスを力任せに投げる瞬間だった
何故、こうも早く動けたかはわからない…早くシャルティの元へと地面を踏み込んだ瞬間、身体が軽くなった…殿下とシャルティの間には割り込み、幼い義妹の身体を背にかばう、その瞬間おれの額を衝撃が襲った
何が起きたのか自分でも理解するのに時間がかかるが、ボタボタと何かが足元…いや全身を濡らし額が異常に痛い事からゆっくりと状況が飲み込めてくる…
レオンハルト殿下は持っていた飲み物の入ったグラスをシャルティに向かって投げつけたのだ…そしてそれがおれにあたった…
「な、なんなんだお前!っ………!サングイス公爵子息!!お前は被害者だろう!?俺が不義の子を懲らしめてやってるのに割込んでくるな!」
被害者?何言ってんだよこのクソガキは………
こいつは、シャルティにガラスのグラスを投げつけた…おれじゃなかったらどうなってたと思う?
女性にとって貴族にとって特に顔は命だ…
傷物と言われてしまう可能性だってある…それなのに…!こいつは………!!!
「レオンハルト殿下…おっしゃっている意味がわかりません…ぼくはサングイス嫡男で間違いはありません、後ろにいるのは義妹のシャルティで間違いはないのです…法律上なんの問題もなく国に認められて妹となったシャルティに何か御用だったのですか?」
「っ……!!!用も何も!レルム子息が教えてくれたんだ!害虫が産んだ不義の子を公爵令嬢にしたと!
俺はそれを駆除しようとしただけだ!何が悪い!?感謝されるならまだしもその目はなんだ!!!」
舌打ちを我慢したおれを褒めてほしい…
レルム子息………ペトラさんの実家か……なるほど?どういう手でレオンハルト殿下に嘘を吹き込んだかは知らないが…真実も偽りも一緒にし自分が行うことを正義と思い込んでいるのはわかった………
ふざけてんじゃねぇよ………
「レオンハルト殿下、あなたは大きな勘違いをしている…真実も偽りも裏を取らずに暴走しています、その正義がやったことは何ですか?
幼い令嬢の顔に向かってグラスを投げつけ罵倒する事があなたの正義なんですね?
……………ふざけんなよガキが!!!!人の心の痛みが分からない野郎が良き王となれるとでも思ってんのか…?
てめぇがこの国の王になる未来を想像するとゾッとするよ…偽善で偽りの正義を振りかざす愚王確定だからな……………
っ、………大変申し訳御座いません殿下、気分が優れないので先に帰らせて頂きます…不敬な発言をしてしまい申し訳御座いません、自主的に謹慎致しますので詳しくは父へお願いします…………シャルティ、帰るよ」
シャルティの手を引き、びしょ濡れの服のまま前へ進むと、周囲を囲んでいた子息や令嬢は道を開け関わりたくないといった感じだ
いいよ、それで…おれも誰にも関わりたくない
子ども達の騒ぎに王妃様や母様、参加者が小走りでこちらへ向かってくるのがわかる…
目がしみると思ったらグラスの破片で額が切れているみたいだった、母様が中庭から立ち去ろうとするおれたちの元に駆け寄り、おれの顔を見て…泣いた
王家に忠誠を誓う公爵家の…宰相の息子として失格な事をしてしまってごめんなさい…
どんな罰でも受けます…だから…シャルティが言われたことを…慰めてやってください…
母様は泣きながらおれとシャルティを抱きしめてくれる…ごめんなさい、問題起こして………頭に血が上ってしまったのか目眩が止まらない……ぐらぐらする…
二人を置き去りにおれの意識は途切れてしまった…
…………………
……………
………
「目が覚めたかい…?ルディヴィス………大変だったね…」
目が覚めると父様がいた…
見覚えのある天井…ここはおれの部屋だ
おれ……おれは確か………そうだ…レオンハルト殿下の勘違いと行動と偽善にブチギレてそれで……
公爵家の顔に泥を塗る行為をしてしまったんだ………
「………っ、父様……ごめんなさい………ぼく…ぼくっ………ううっ……ぅ゙っ……不敬だとしっでいで、がまんできませんでした…罰は、罰は受けまず…でも、でも………ゆるせながった……」
王家に対する不敬、その罪をおれは犯した…
未来の王に暴言を吐いたんだ…宰相として国の為に働く父様を裏切る行為
ヘタをすれば一家斬首とかどこかで見たこともある、そんな浅はかな事をおれはしたんだ…
精神年齢抜きにしても自分が情けなくて、でもシャルティを馬鹿にされた事が許せなくて涙が溢れる
そんなおれを、ぼくを父様はベッドから抱き起こして抱きしめてくれた…
「シャルティを守りたかったんだろう?大丈夫、わかっている…自分の犯した事をちゃんと自覚し反省できるなんてね…私の息子はいつの間にか、こんなにも大きくなっていたんだな…
だが、方法が不味かった、あの場では上手く流し私に早く伝えることが出来ていれば正解だったかな…?
しかし罰は罰だ、不敬罪を起こした罰として3日間、おやつ抜きの刑にしよう、ちゃんと罰を受けられるね?」
おれの頭を撫でながら抱きしめてくれる父様はちゃんとわかってくれていた事が嬉しかった…
勘当されてもおかしくないのに…しかも、おやつ抜きの刑だと言う…不敬罪だよ?そんなのでいいのか?
疑うおれの涙でぐちゃぐちゃの顔を見て父様は、笑って言った
「どちらに本当に非があるか、あの場にいた王妃様がちゃんと判断してくれた…だからおやつ抜きの刑で大丈夫だ
怪我の痛みが引いたら王妃様がお会いしたいと言っている、今は休んできちんと謝罪しなさい」
あの美形王妃様が…………え、おれまた王宮行くの……?謝罪はしたいがレオンハルト殿下に会いたくない…
現実は残酷だ
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