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幼少期編

お茶会での騒動 前編

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時の流れは残酷だ…父様から王宮での顔合わせを目的とした茶会の話を聞かされてから、まだ猶予があると思っていたら当日になっていた…


「おにいさま、とてもお似合いです」

「ルティもね、とても似合ってる素敵だね」


当日まで、元々伯爵令嬢だったシャルティは通常の座学にプラスし礼儀作法を必死に学んだ…
結果、シャルティは舌足らずな喋り方を気合で克服し、立派な幼い公爵令嬢として外に出れるレベルになっていた
うちの義妹が頑張り屋さんで可愛いっ…!おれは精神年齢が社畜三十路になってしまったため、とても雰囲気が急激に大人びてしまったが、そこまでの問題では無いだろう
ルディヴィスは6歳にしてはそこそこデカい…太っているわけでは無く父様と駆け落ち元母様が身長高めなのを受け継いでいるような…ぱっと見6歳以上に見える事もあるらしい

話は逸れたがおれたちは、これから王宮でのお茶会に参加するのだ 
お揃いの色合いで仲のいい兄妹を華麗にアピールするため、仕立て屋さんに頑張って頂いた素晴らしい服を着て…
王妃様主催の非公式な茶会…攻略対象の1人、王太子殿下はこの茶会に確実にいる


「二人共、落ち着いてご挨拶しましょうね」


ペトラさんの優しい声である意味あった緊張がほぐれた…が心の中は穏やかにはなれなかった
馬車で移動する間、どうしても考えてしまう…この茶会でシャルティは王太子殿下に見初められてしまうのか…それが重要なんだ…










「よく来てくれました、私は正妃リジャール.ロードヴィリア
はじめまして未来を担う子供達、保護者の皆さん、本日は非公式な茶会です、あまり緊張せずに…息子のレオンハルトと仲良くしてもらえると嬉しい」


美しい花々が咲き誇る王宮の゙中庭…ガーデンパーティを行えるような広いスペースに、この日のためにソファや机が準備されている…
一番上座に座る王妃様の挨拶の後、各々ソファに腰掛けお茶会が始まった

子供達のために立食スペースも完備されたなんかもう西洋ファンタジーを感じる素晴らしい茶会会場………しかし、しかしだ…………

王妃様…………なぜ、男性なんだ?
乙女ゲーム……??大丈夫か???
そう、レオンハルト殿下を紹介したこの国の国王陛下の妃は男性だった…
リジャール.ロードヴィリア妃…………中性的な顔立ちはしているがどう考えても男である…とても美人だが男である…………
しかし、そんな疑問を感じているのはおれだけの様で周囲はなんとも思っていない…これが異世界の常識なのか?王妃様、レオンハルト殿下のこと、息子のって言ったよ???男が子供産めるの?この世界…??

乙女ゲームってなんだよと疑いたくなるがそれどころでは無い、遂に始まったお茶会…これを無難に終わらせて帰らなければいけない


伯爵家までの子達が今回呼ばれたのか、ざっと会場には30名程度の子息、令嬢とその保護者がいる
暫く茶を楽しんだ後は、各々爵位の順で王妃様とレオンハルト殿下に挨拶、その後子供だけで交流を深めてもらう…そんな流れなのだと母様は言った

我が家は公爵家、そして父様はこの国の宰相だ…この会場では真っ先に順番が来るというわけだ
母様に連れられ、王妃様が座る席へ向う
礼儀作法はこれでもかと実践も踏まえ完璧にした、とりあえずこの挨拶さえ乗り切れば…あとはしれっと隠れても問題ないはず…!

気合を振り絞り、王妃様とレオンハルト殿下をしっかりと見据え…当たり障りない素晴らしい挨拶を行った…………





「お勉強の成果が出ていてとても綺麗な所作でした、二人共頑張りましたね」

母様がおれもシャルティを褒めてくれる
………………しかし、緊張しすぎてなんて発言したか覚えていないです…すいません
シャルティのカーテシーがいつもよりきれいだったねかわいい!とか、王妃様やっぱ男じゃん!!美人だけど!とか…レオンハルト殿下は生意気なクソガキの表情してるとかそんな記憶しか残ってない

王妃様が笑顔でいてくれたから不敬な事にはなっていないだろう…!そう信じおれたちは子供のために設営されたフードスペースにたどり着く…


「おにいさまとてもかっこよかったです!シャルティ、上手にご挨拶できていましたか?」

「ぼくより素敵にご挨拶できてたよ、お兄様は緊張で胸がもういっぱいだ…シャルティは緊張しないで凄いね」


他の貴族の家々が挨拶を終えるまで、順番を終えた侯爵家や辺境伯家の方と交流する事もでき、心的にはもう満足なので帰りたい、とても帰りたい
しかし、現実は思うようには行かない…全参加者が挨拶を終え、王妃様は連れの両親達とお茶会を初めてしまう…子供はどうするか?
各自交流タイムだ…おれ、中身が三十路なんです子どもの話題わかんねぇよ!!!


とは言いつつ、シャルティの明るい未来の為にも交流を頑張る…もちろん人集りができているレオンハルト殿下には近付かない
挨拶は済ませたのだからいいだろう
シャルティの可愛らしさはおれ以外にも分かってもらえるようで、妹がいるという侯爵子息のペリッド様と辺境伯子息ロビン様とは仲良くなれそうだ
シスコンだっていいじゃないか!

王宮に勤める料理人が作ったとんでもなく美味い高級フレンチみたいな料理を楽しみつつ、なんだかんだ楽しい交流の輪を広げている時、事件は起きた

おれが事前に言っていた囁きをしっかりと守り、レオンハルト殿下へは近づかず侯爵家のご令嬢と楽しそうにデザートを食べていたシャルティ
そこに近づく存在におれは妹トークで気づいていなかった…





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