37 / 124
溺愛編
我が家のガチムチコック
しおりを挟む迷子のアデルバイト辺境伯家前当主、ガダケルト様を探して全力で行った迷子探知魔法は見事成功した
どう見ても家の実家の厨房で…どう見てもふわふわオムライスとケーキ作りが得意な家のコック長が画面の向こうで可愛く盛り付けたケーキを微笑ましい顔で見ている
そう言えば…ハミルトン公爵家の料理人…みんな普通なのにコック長だけすごくムキムキなおじさんだったな…父様と仲良しだし野営にも着いてきてくれるいい人だったけど…
よく考えると違和感ありありなムキムキガチムチコック長だったな…
おれが遠い目をしている中、ガダケルト様が生きて楽しそうにケーキ作りしている光景に嬉しそうに涙を零すラヴ様と、涙を堪えてそうなフリード様を見て…え?あれでいいの?探してた最強を求める前当主が乙女心ありそうなコック長になってるけどいいの!?!
とは言えなかった
「リデン、この場所は一体どこなんだ?父上は…前当主は一体何処で料理人をしているんだ!?」
「ガダケルト様は何処にいるの?こんな可愛い顔でケーキ作ってるガダケルト様は何処なの?え、美味しそう!切り口まで美味しそうなケーキ作れちゃうのガダケルト様!?」
ガチムチコック長でいいらしい二人がおれに詰め寄る…いいんだ…最強?なのか?最強?あれでいいのか?って思うのおれだけなのね!?!
そんな気持ちを隠しつつ、おれは素直に教えてあげる…どう見ても見覚えがあってどう考えてもおれが知ってる場所だから
「えーっと、ここは…実家の厨房ですね…?
前当主様は……なんか……あの、うちの……ハミルトン公爵家のコック長になってます!!!!」
精一杯伝えた言葉にフリード様もラヴ様も…事の顛末を見守ってたメアリー達もポカンとしてた
だっておれも知らんよ…実家のコックに隣国の前辺境伯当主がなってるなんて…
…………………
……………
………
衝撃の事実に皆、取り敢えず一旦落ち着こうとなった
もう夜中近くにもなり、おれは若干…いやいつももう寝てる時間なものでおねむでもある…
前当主は元気に生きている、なんかもう目と鼻の先じゃないけど嫁の実家にいるようなものだ
ガチムチコック長は数年前から家で働いてて一回も転職とかそんな感じもなく骨を埋める勢いでハミルトン公爵家に仕えてたと説明するとラヴ様もフリード様も安心されたようで明日、また話をしようとなりましたとさ
そんなこんなで皆驚いた表情のまま、本宅に戻るラヴ様とメアリーさん家令さん、天井裏に戻るチュウ太くん、何故かおれのベッドに入ってくるフリード様…フリード様????
いやいやなんで入ってくるかな!?夜は本宅でお休みじゃないの!?!
てか狼さんフリード様いるから今日は帰ってこないの!?と脳内会議をしてたら抱き締められた…
「リデン…せっかくの誕生会なのに別の話を持ち出してしまってすまなかった…でも、ありがとう…
急に譲嫁を預けられて旅に行かれた父上を恨んでもいた…でも探しても探しても見つからなかったから諦めてたんだ…
リデンが居てくれて良かった、見つかってよかった…父上が無事に生きてくれた事は素直に嬉しかった…リデン、リデン…ありがとう…本当にありがとう…」
お昼寝とは違い薄暗い室内で…ベッドの中でフリードはおれの肩に顔を埋めるようにしながらしっかりと抱きしめてくる…
友達の距離感とはいったい何なのか…それを考えるよりも、少しだけ涙声なフリード様がちょっと可愛く見えて知らぬ間に頭を撫でていた
「誕生会に知りたかった事も知れて良かったです、真の奥様がお姑様だとはそれもびっくりサプライズですね?フリード様が祝ってくれて本当に嬉しかったです…ありがとうございます
おれが少しでもアデルバイト辺境伯家の役に立てたなら形だけでも嫁いできて良かったと思います
大丈夫、大丈夫ですよ?フリード様…おれの里帰り気分でガダケルト様を迎えに行きましょう
コック長になる何か理由があるのかもしれません、もしも逃げようとしたらハミルトン公爵家総出で捕まえて話をさせますから…
大丈夫…今日はもう寝ましょう…?ね?フリード様………」
狼族?獣人の皆さんはリアル獣な方たちと同じくらいふさふさで、フワフワないい毛ざわりをされているのかと思うほど、フリード様の髪質はいつもモフモフさせてくれる狼さんそっくりで…撫で心地抜群だ
ゆっくりとフリード様の頭を撫でながらおれは知らぬ間に寝落ちしていた事は言うまでもない
本当になんで最強目指して旅立った前辺境伯当主様はうちでコック長なんてしてるんだよ…何か深い事情があってアデルバイト辺境伯家に連絡もよこさないなんて事があったら嫌だなと思う…
おれも給仕の時とかコック長と話したことあるけど普通にいい人なんだよな…そんな人が連絡よこさない理由って何なんだろう?
気配で逃げるかもしれないと獣人の思考回路を考えて置こう、フリード様とラヴ様がちゃんと会えるように…万が一逃げ出したら追跡魔法をかけて追いかけられるように…しないと…
この国のガチムチは、人様に迷惑をかけないとすまないのだろうか?と皇帝達の件を思い出してしまった
狼さん無しで眠るのは久々だったけど、フリード様に抱き締められて寝るのも温かくて…なんでか狼さん以上に落ち着くような…心が癒やされるような…そんな気持ちになったのだ
やばい、これはいい睡眠…すごく好き…………
3,569
お気に入りに追加
5,551
あなたにおすすめの小説
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
お兄様の指輪が壊れたら、溺愛が始まりまして
みこと。
恋愛
お兄様は女王陛下からいただいた指輪を、ずっと大切にしている。
きっと苦しい片恋をなさっているお兄様。
私はただ、お兄様の家に引き取られただけの存在。血の繋がってない妹。
だから、早々に屋敷を出なくては。私がお兄様の恋路を邪魔するわけにはいかないの。私の想いは、ずっと秘めて生きていく──。
なのに、ある日、お兄様の指輪が壊れて?
全7話、ご都合主義のハピエンです! 楽しんでいただけると嬉しいです!
※「小説家になろう」様にも掲載しています。

歳上公爵さまは、子供っぽい僕には興味がないようです
チョロケロ
BL
《公爵×男爵令息》
歳上の公爵様に求婚されたセルビット。最初はおじさんだから嫌だと思っていたのだが、公爵の優しさに段々心を開いてゆく。無事結婚をして、初夜を迎えることになった。だが、そこで公爵は驚くべき行動にでたのだった。
ほのぼのです。よろしくお願いします。
※ムーンライトノベルズ様でも投稿しています。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

弟のために悪役になる!~ヒロインに会うまで可愛がった結果~
荷居人(にいと)
BL
BL大賞20位。読者様ありがとうございました。
弟が生まれた日、足を滑らせ、階段から落ち、頭を打った俺は、前世の記憶を思い出す。
そして知る。今の自分は乙女ゲーム『王座の証』で平凡な顔、平凡な頭、平凡な運動能力、全てに置いて普通、全てに置いて完璧で優秀な弟はどんなに後に生まれようと次期王の継承権がいく、王にふさわしい赤の瞳と黒髪を持ち、親の愛さえ奪った弟に恨みを覚える悪役の兄であると。
でも今の俺はそんな弟の苦労を知っているし、生まれたばかりの弟は可愛い。
そんな可愛い弟が幸せになるためにはヒロインと結婚して王になることだろう。悪役になれば死ぬ。わかってはいるが、前世の後悔を繰り返さないため、将来処刑されるとわかっていたとしても、弟の幸せを願います!
・・・でもヒロインに会うまでは可愛がってもいいよね?
本編は完結。番外編が本編越えたのでタイトルも変えた。ある意味間違ってはいない。可愛がらなければ番外編もないのだから。
そしてまさかのモブの恋愛まで始まったようだ。
お気に入り1000突破は私の作品の中で初作品でございます!ありがとうございます!
2018/10/10より章の整理を致しました。ご迷惑おかけします。
2018/10/7.23時25分確認。BLランキング1位だと・・・?
2018/10/24.話がワンパターン化してきた気がするのでまた意欲が湧き、書きたいネタができるまでとりあえず完結といたします。
2018/11/3.久々の更新。BL小説大賞応募したので思い付きを更新してみました。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる