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ルフェール修道騎士団支部6
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男の剣が振り下ろされる。アルトゥース流初伝剣技、『斜斬り落とし』。アレクシアは手元に引き寄せた剣でそれを難なく捌く。しかし男の攻撃は止まらない。
続けて、返す刀で中伝剣技『逆払い』。アレクシアは一方後ろへ下がり、攻撃をかわした。さらに男の追撃は続く。飛び込みながらの両手突き、中伝剣技『穿突』。
アレクシアは中伝剣技『鍔際弾き』でその突きを弾きながら思考する。
(強いな)
初伝や中伝の技であっても、使い手の技量次第でその鋭さは変わる。アレクシアの見た所、相手の実力は最低でも皆伝以上。
(迅速に勝負を決めた方がいいだろう)
何故自分が襲われたのか、その理由は分からない。だがそれを問いただそうと勝負を長引かせればこちらが遅れを取る可能性もある。その結果、負けるような事になれば取り返しがつかない。真剣勝負の場において、敗北とはすなわち死。そして死ねば後悔すらできないのだ。
アレクシアは剣に練気を込める。
(この一太刀で…勝負を終わらせる!)
そう覚悟を決め、前へと踏み出そうとしたその瞬間――。
「姫様!申し訳ございませぬぅ!」
と、目の前の男がアレクシアに対して剣を捧げるようなポーズで膝をついた。
膝をつき、俯いて対戦相手に剣を捧げる――剣士同士の戦いにおいて、完全降伏を示す仕草だ。
「なに…?」
アレクシアは訝しみながら男を見下ろす。降伏に見せかけ、騙し打ちをしかける…というような雰囲気は感じられない。しかし、突然襲ってきて完全降伏。意味が分からない。
「その太刀筋、立ち昇る練気…まさしくアルトゥース流ツヴァイク派、それもレオンハルト殿直伝のもの!」
「御祖父様を知っているのか…!」
レオンハルト・ツヴァイク。すなわちシュタインベルグ王国の近衛総長にしてアレクシアの祖父である。
「はっ…!拙者、若き頃にレオンハルト殿と同じ師匠につき剣を学ばせていただいた者です。レオンハルト殿のお孫様、アレクシア様のお名前は聞き及んでおります!」
そう言って、男は俯いていた顔を上げた。
「申し遅れました。拙者、第一級修道騎士パトリック・ラフォンと申します。本物のアレクシア様かどうか確かめるために剣を交えさせていただきました!ご無礼申し訳ございませぬぅ!」
と、再び頭を下げた。その様子に、アレクシアは剣を鞘に納めつつ答える。
「なるほど、了解した。修道騎士のお役目、ご苦労。――どうか、顔を上げてください」
おそらく男の言葉は本当だろう。もし本気でこちらを害するつもりであれば、入室の許可など求めずアレクシアの寝込みでも襲えばよかったのだ。わざわざ正面から戦いを挑んできたのは、男の言葉の裏付けと言えた。
「ただ、いきなり剣を向けられたのはまいったけれどね」
「ははっ!申し訳ございませぬぅ!」
男は一度上げかけた顔を下げ、地に頭を擦り付ける。
「いや、だからお気になさらず…どうか顔を上げてください」
パトリックの仕草に、アレクシアは思わず苦笑した。
続けて、返す刀で中伝剣技『逆払い』。アレクシアは一方後ろへ下がり、攻撃をかわした。さらに男の追撃は続く。飛び込みながらの両手突き、中伝剣技『穿突』。
アレクシアは中伝剣技『鍔際弾き』でその突きを弾きながら思考する。
(強いな)
初伝や中伝の技であっても、使い手の技量次第でその鋭さは変わる。アレクシアの見た所、相手の実力は最低でも皆伝以上。
(迅速に勝負を決めた方がいいだろう)
何故自分が襲われたのか、その理由は分からない。だがそれを問いただそうと勝負を長引かせればこちらが遅れを取る可能性もある。その結果、負けるような事になれば取り返しがつかない。真剣勝負の場において、敗北とはすなわち死。そして死ねば後悔すらできないのだ。
アレクシアは剣に練気を込める。
(この一太刀で…勝負を終わらせる!)
そう覚悟を決め、前へと踏み出そうとしたその瞬間――。
「姫様!申し訳ございませぬぅ!」
と、目の前の男がアレクシアに対して剣を捧げるようなポーズで膝をついた。
膝をつき、俯いて対戦相手に剣を捧げる――剣士同士の戦いにおいて、完全降伏を示す仕草だ。
「なに…?」
アレクシアは訝しみながら男を見下ろす。降伏に見せかけ、騙し打ちをしかける…というような雰囲気は感じられない。しかし、突然襲ってきて完全降伏。意味が分からない。
「その太刀筋、立ち昇る練気…まさしくアルトゥース流ツヴァイク派、それもレオンハルト殿直伝のもの!」
「御祖父様を知っているのか…!」
レオンハルト・ツヴァイク。すなわちシュタインベルグ王国の近衛総長にしてアレクシアの祖父である。
「はっ…!拙者、若き頃にレオンハルト殿と同じ師匠につき剣を学ばせていただいた者です。レオンハルト殿のお孫様、アレクシア様のお名前は聞き及んでおります!」
そう言って、男は俯いていた顔を上げた。
「申し遅れました。拙者、第一級修道騎士パトリック・ラフォンと申します。本物のアレクシア様かどうか確かめるために剣を交えさせていただきました!ご無礼申し訳ございませぬぅ!」
と、再び頭を下げた。その様子に、アレクシアは剣を鞘に納めつつ答える。
「なるほど、了解した。修道騎士のお役目、ご苦労。――どうか、顔を上げてください」
おそらく男の言葉は本当だろう。もし本気でこちらを害するつもりであれば、入室の許可など求めずアレクシアの寝込みでも襲えばよかったのだ。わざわざ正面から戦いを挑んできたのは、男の言葉の裏付けと言えた。
「ただ、いきなり剣を向けられたのはまいったけれどね」
「ははっ!申し訳ございませぬぅ!」
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