38 / 43
第37話 《利里》
しおりを挟む
解こうとした手を離さずに、繋ぎ止めてベッドに居る俺と磁石のようにくっつくいてくる蒼柳へ、俺は安堵もしたが疑念も抱いていた。
……こんな落ちこぼれで、普通すぎるほどの顔をしていて、努力をしても報われなくて、そんな欠陥品な自分が大嫌いだから。嫌いで嫌いで、だから崖に落ちる夢を見て、看護に必要必須なバイタルサインでさえもできない自分が悔しくて。
それが恨めしい。悔しくて切ない。
――すると俺は、蒼柳の肩を借りたかと思えば、呻くように泣いた。情緒不安定なん自分も嫌いだった。
「利里、さん? なんで泣いて……?」
「ご、ごめん。なんか、あの、その……」
(こんな欠陥品な奴が蒼柳みたいな頭も良くて、要領も良くて、かっこよくて……、そんな奴に嫌われたら?)
――見放されたら? 裏切られたら? 「やっぱりいりません、無理です」だなんて言われたら……俺は立ち直れない。一生、引きずる。
でもそれも言えない俺が言えなくてもどかしくて、だから俺は「ごめん、ごめん……」としか紡げない俺を、蒼柳は片方の手で頭を撫でていた……その時であった。
――――バァーン!
「せんせい~! あおやなぎくん、居ますかぁ~?」
「げぇ、永礼さんだ……」
蒼柳が頭上で疲弊を吐き出したかと思えば、永礼さんは先生の静止を待たずに入ってきて、蒼柳に抱き寄せられて泣いている俺を見てひどく驚いていた。
「え、チビデブ、なに泣いていんの? ていうか、ずる! ながれちゃんも蒼柳くんに抱き締められた~い!」
永礼さんは俺を少しだけ心配しつつも、蒼柳に抱き締められているの見て羨ましいそうに頬を膨らませた。そんな彼女は、ずかずかと俺と蒼柳の間に割って入ろうとしてくる。……この図々しさが今の俺には欲しかった。
――そして、自分のキズを浅くするために不意に思ってしまうのだ。
(今なら蒼柳から逃れられるかもしれない)
手さえも引き剥がそうとする永礼に、さすがの蒼柳はやんわりとした言い方で利里の手を繋ぎ止めて離さなかった。
「なんで蒼柳くんは~、こんな奴と仲良くするの~? こいつ留年しているしさ~?」
――ズキリと音がする。悲鳴が上がる。
「利里さんは、好きで留年したわけじゃないよ?」
「こんな奴放っておいて授業に出ようよ~。ながれが呼びに来たんだよ! 蒼柳くんはみんなの憧れだし、好かれているし~」
それに比べて……と言いたげな視線を感じた利里は、さらに自分を呪った。
(やっぱり、俺は無理だったんだ。だったら――)
だから俺は涙を拭いて、息を整えてから笑って蒼柳へ顔を向けた。
――自分でもわかるぐらい不器用な笑顔だったかもしれない。
「蒼柳、永礼さんがそう言ってくれているんだから行きなよ。俺は先生に診てもらって、話を聞いてもらうからさ」
「……嫌っす」
「そんなこと言うなよ。俺なんかよりお前は期待されているし、好かれてもいる。……お前を必要としてくれる人はたくさんいる」
(もう、お願いだから……俺をもう、傷つけないで)
――お前のことを本当に好きになったら、俺は本当に死ぬと思うから。
――だから俺を、浅いキズのうちに俺を解放してよ。
しかし蒼柳は鋭い視線を向けてなぜか笑うのだ。どうして笑うのか意味がわからなかった。
「……利里さんはいつのまにそんな薄っぺらく笑うんですか?」
「え?」
「だから……お仕置き」
すると蒼柳の顔が急激に近づいたかと思えば、唇に温かさを感じた。流した涙のおかげで、俺は塩味とともに顔がジクジク赤く熟れていく感覚を得たのだ。
……こんな落ちこぼれで、普通すぎるほどの顔をしていて、努力をしても報われなくて、そんな欠陥品な自分が大嫌いだから。嫌いで嫌いで、だから崖に落ちる夢を見て、看護に必要必須なバイタルサインでさえもできない自分が悔しくて。
それが恨めしい。悔しくて切ない。
――すると俺は、蒼柳の肩を借りたかと思えば、呻くように泣いた。情緒不安定なん自分も嫌いだった。
「利里、さん? なんで泣いて……?」
「ご、ごめん。なんか、あの、その……」
(こんな欠陥品な奴が蒼柳みたいな頭も良くて、要領も良くて、かっこよくて……、そんな奴に嫌われたら?)
――見放されたら? 裏切られたら? 「やっぱりいりません、無理です」だなんて言われたら……俺は立ち直れない。一生、引きずる。
でもそれも言えない俺が言えなくてもどかしくて、だから俺は「ごめん、ごめん……」としか紡げない俺を、蒼柳は片方の手で頭を撫でていた……その時であった。
――――バァーン!
「せんせい~! あおやなぎくん、居ますかぁ~?」
「げぇ、永礼さんだ……」
蒼柳が頭上で疲弊を吐き出したかと思えば、永礼さんは先生の静止を待たずに入ってきて、蒼柳に抱き寄せられて泣いている俺を見てひどく驚いていた。
「え、チビデブ、なに泣いていんの? ていうか、ずる! ながれちゃんも蒼柳くんに抱き締められた~い!」
永礼さんは俺を少しだけ心配しつつも、蒼柳に抱き締められているの見て羨ましいそうに頬を膨らませた。そんな彼女は、ずかずかと俺と蒼柳の間に割って入ろうとしてくる。……この図々しさが今の俺には欲しかった。
――そして、自分のキズを浅くするために不意に思ってしまうのだ。
(今なら蒼柳から逃れられるかもしれない)
手さえも引き剥がそうとする永礼に、さすがの蒼柳はやんわりとした言い方で利里の手を繋ぎ止めて離さなかった。
「なんで蒼柳くんは~、こんな奴と仲良くするの~? こいつ留年しているしさ~?」
――ズキリと音がする。悲鳴が上がる。
「利里さんは、好きで留年したわけじゃないよ?」
「こんな奴放っておいて授業に出ようよ~。ながれが呼びに来たんだよ! 蒼柳くんはみんなの憧れだし、好かれているし~」
それに比べて……と言いたげな視線を感じた利里は、さらに自分を呪った。
(やっぱり、俺は無理だったんだ。だったら――)
だから俺は涙を拭いて、息を整えてから笑って蒼柳へ顔を向けた。
――自分でもわかるぐらい不器用な笑顔だったかもしれない。
「蒼柳、永礼さんがそう言ってくれているんだから行きなよ。俺は先生に診てもらって、話を聞いてもらうからさ」
「……嫌っす」
「そんなこと言うなよ。俺なんかよりお前は期待されているし、好かれてもいる。……お前を必要としてくれる人はたくさんいる」
(もう、お願いだから……俺をもう、傷つけないで)
――お前のことを本当に好きになったら、俺は本当に死ぬと思うから。
――だから俺を、浅いキズのうちに俺を解放してよ。
しかし蒼柳は鋭い視線を向けてなぜか笑うのだ。どうして笑うのか意味がわからなかった。
「……利里さんはいつのまにそんな薄っぺらく笑うんですか?」
「え?」
「だから……お仕置き」
すると蒼柳の顔が急激に近づいたかと思えば、唇に温かさを感じた。流した涙のおかげで、俺は塩味とともに顔がジクジク赤く熟れていく感覚を得たのだ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
完結【強引な略奪婚】冷徹な次期帝は、婚姻間近の姫を夜ごと甘く溶かす
小木楓
恋愛
完結しました✨
タグ&あらすじ変更しました。
略奪された大納言家の香子を待っていたのは、冷徹な次期帝による「狂愛」という名の支配でした。
「泣け、香子。お前をこれほど乱せるのは、世界で私だけだ」
「お前はまだ誰のものでもないな? ならば、私のものだ」
大納言家の姫・香子には、心通わせる穏やかな婚約者がいた。
しかし、そのささやかな幸福は、冷徹と噂される次期帝・彰仁(あきひと)に見初められたことで一変する。
強引な勅命により略奪され、後宮という名の檻に閉じ込められた香子。
夜ごとの契りで身体を繋がれ、元婚約者への想いすら「不義」として塗り潰されていく。
恐怖に震える香子だったが、閉ざされた寝所で待っていたのは、想像を絶するほど重く、激しい寵愛で……?
「痛くはしない。……お前が私のことしか考えられなくなるまで、何度でも教え込もう」
逃げ場のない愛に心が絡め取られていく中、彰仁は香子を守るため、「ある残酷な嘘」を用いて彼女を試す。
それは、愛するがゆえに彼女を嫉妬と絶望で壊し、「帝なしでは息もできない」状態へ作り変えるための、狂気じみた遊戯だった。
「一生、私の腕の中で溺れていろ」
守るために壊し、愛するために縛る。
冷酷な仮面の下に隠された、
一途で異常な執着を知った時、香子の心もまた甘い猛毒に溶かされていく――。
★最後は極上のハッピーエンドです。
※AI画像を使用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる