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第2部
2-23
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「先週、歩夢先輩が帰った翌朝。店長さんに『次同じようなことをしたらクビだからね』と言われました」
ソファーに凭れながらウツラウツラしているオレの隣でイチゴくんがボソリと呟いたから、一気に目が覚めた。
いつの間にかシフシさんは居なくなっていた。
「なんでっ⁉︎」
「僕がしたことはチームワークを乱す行為だと……。この仕事は1人でできるものではないから……」
イチゴくんを見ると真っ直ぐ前を向いて真っ暗なテレビの画面に写るオレを見ている。
だから、オレもそれに合わせてテレビの画面に写るイチゴくんを見る。
「それと……言葉ひとつで人を悪者にすることもできるから気をつけて、って……」
「……悪者?」
テレビの画面に写るイチゴくんが頷くと俯いた。
「それを言われてハッとしました。歩夢先輩が店長さんと出ていった後、立川さんが怒ったんです」
『一后さんがこんなに心配してあげてるのに文句を言うなんて酷い。先輩だからって"ありがとう"のひと言も言えないなんて最悪』
「うわっ、辛辣っ……」
可愛い顔して言うことはキツいなぁ。
って、オレは直接言われてはないけど。
先日話した時は彼女にそんな風に見られているようには見えなかったけど、もしかして隠してたのかな?
「すぐ否定しましたが、彼女の目に歩夢先輩はそう見えたようでした。でも正直、彼女がそこまで怒る理由が全然わかりませんでした。店長さんに言われるまでは……」
『僕は一后くんと可愛くんをずっと見てきたから君の発言は可愛くんを心配してのことだと僕は分かってるよ。でも、初対面の立川さんには可愛くんが悪者に見えたんじゃないかな?』
『そんなっ』
『言葉はね、受け取る人によってその意味が180度変わることもあるんだよ。君の意図も可愛くんの気持ちも無視して。……それに、可愛くんはこの仕事を責任持って頑張ってくれてる。その信念を否定するような言い方はダメだよ』
『……はい』
「反省しました。だから、歩夢先輩にすぐにでも会って謝りたかったんです……」
そこまで言ったイチゴくんが小さくため息を吐いた。
「なら、会いにくれば良かったじゃん」
店長も「すぐに会いに行け」って言いそうなのに。
テレビ画面に写るイチゴくんは一瞬視線を上げてオレを見た。
「店長さんに"歩夢先輩接触禁止令"を出されました……」
……はい?
ソファーに凭れながらウツラウツラしているオレの隣でイチゴくんがボソリと呟いたから、一気に目が覚めた。
いつの間にかシフシさんは居なくなっていた。
「なんでっ⁉︎」
「僕がしたことはチームワークを乱す行為だと……。この仕事は1人でできるものではないから……」
イチゴくんを見ると真っ直ぐ前を向いて真っ暗なテレビの画面に写るオレを見ている。
だから、オレもそれに合わせてテレビの画面に写るイチゴくんを見る。
「それと……言葉ひとつで人を悪者にすることもできるから気をつけて、って……」
「……悪者?」
テレビの画面に写るイチゴくんが頷くと俯いた。
「それを言われてハッとしました。歩夢先輩が店長さんと出ていった後、立川さんが怒ったんです」
『一后さんがこんなに心配してあげてるのに文句を言うなんて酷い。先輩だからって"ありがとう"のひと言も言えないなんて最悪』
「うわっ、辛辣っ……」
可愛い顔して言うことはキツいなぁ。
って、オレは直接言われてはないけど。
先日話した時は彼女にそんな風に見られているようには見えなかったけど、もしかして隠してたのかな?
「すぐ否定しましたが、彼女の目に歩夢先輩はそう見えたようでした。でも正直、彼女がそこまで怒る理由が全然わかりませんでした。店長さんに言われるまでは……」
『僕は一后くんと可愛くんをずっと見てきたから君の発言は可愛くんを心配してのことだと僕は分かってるよ。でも、初対面の立川さんには可愛くんが悪者に見えたんじゃないかな?』
『そんなっ』
『言葉はね、受け取る人によってその意味が180度変わることもあるんだよ。君の意図も可愛くんの気持ちも無視して。……それに、可愛くんはこの仕事を責任持って頑張ってくれてる。その信念を否定するような言い方はダメだよ』
『……はい』
「反省しました。だから、歩夢先輩にすぐにでも会って謝りたかったんです……」
そこまで言ったイチゴくんが小さくため息を吐いた。
「なら、会いにくれば良かったじゃん」
店長も「すぐに会いに行け」って言いそうなのに。
テレビ画面に写るイチゴくんは一瞬視線を上げてオレを見た。
「店長さんに"歩夢先輩接触禁止令"を出されました……」
……はい?
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